放送内容

第1655回
2022.12.18
林業ボーイズのはじめての林業
放置竹林編
自然・電波・鉱物・エネルギー

 林業ボーイズが今回学んだのは竹林!近年、整備しきれなくなった竹林が拡大する「放置竹林」が全国的に問題となっているんです。なんと、ここ31年で日本の竹林面積は、13.6%も増加。その結果、竹が人の生活を脅かすまでに。それだけにとどまらず、竹林は拡大すると、林業のために整備してきた森にまで範囲を広げ、木の生長を阻害したり、作業のために人が立ち入る空間をなくしたりと、林業にも悪影響があるんです。
 そんな竹林問題を解決しようとする人達が全国にいました。「林業ボーイズのはじめての林業」。今回は、林業家も無視できない「放置竹林」編です!

放置竹林に課題になっている場所を調査!

 近年叫ばれるようになってきた、放置竹林問題。ところが、日本の森林面積は国土の3分の2にあたる2505万ha。一方で竹林の面積は16万7000haと、森林面積のうち0.6%しかありません。なぜ、わずかな割合の竹林がここまで問題視されるようになったのか?
 林業ボーイズが訪ねたのは、千葉県の放置竹林が課題になっている地域。ここに住む橋本さんに案内していただきます。さっそく竹林を見せてもらうと、家のすぐ後ろまで、足の踏み場がないほどに竹と笹が迫ってきていました。

 ちなみに竹と笹。細かい違いはあるものの、非常に似た特徴をもつタケ亜科の植物です。
 この家は、橋本さんが住み始めるまで10年間空き家でした。20年以上前のこの家の写真と現在の写真と比べてみると、竹が迫っている様子が分かります。

 放置竹林の問題に取り組む、神戸学院大学菊川先生は、1999年と2017年の17年間でどれだけ竹林が増えたかを調査。調査を行った丹波篠山市では、面積が17年間で約1.3倍に増えたというデータが出たそう。面積にすると、1つの市で東京ドーム10個分が竹に埋もれたということ。
 様々なものに使われ、貴重な食料ともなっていた竹は、人の生活圏に多く植えられました。しかし、より便利で安価なものにその立場を奪われ、経済的な価値を失い、竹林は放置されるようになってしまったのです。
 そして竹は家だけでなく、林業にも影響を及ぼしていました。熊本県のある場所では、林業地まで竹が広がり、作業の邪魔をするだけでなく、木の生長を妨げているのです。

 また、早いスピードで生育範囲を広げていくのには、竹ならではの特徴が。それは、根っこが地下茎で他の竹とも繋がっていること。成長が終わった竹は光合成で得た栄養を根っこにため込みます。そのため、もし成長した竹が伐られたとしてもどんどん若い竹が繁殖し、生長することができるのです。
 放置竹林が問題になっているのは、人の手が入らなくなった里山。需要が減ったうえに、高齢化で管理ができなくなってしまった。こういった要因が、放置竹林の課題を生んでいるんです。

竹の新しい使い方とは!

 放置竹林の問題を解決するため、新しい使い方に関する取り組みがすすんでいます。その1つが、国産メンマ。福岡県の糸島市から、竹林の竹をメンマとして利用する活動が広まっています。従来のメンマの材料となるのは麻竹(マーチク)。ほぼ100%輸入しています。それを日本に生える孟宗竹や真竹でも、メンマにできる技術を開発したのです。タケノコとして食べるには育ちすぎの2mくらいまで生長した若竹が国産メンマの材料になります。

 歯切れのよい食感で人気を呼び、日本各地で作られ始めました。
 そして、林業ボーイズが調べたのは、育ちきった竹の利用法。やってきたのは、千葉県にある放置竹林を整備しながら、新しい竹の利用を進める「竹もりの里」。
 さっそく、竹を伐採するところからお手伝い。竹も杉やヒノキと同様に受け口と追い口を入れて切り倒します。竹は1本50~60kg。コツをつかめば1人で動かすことができます。作業をすること1時間、およそ350kgの竹が取れました。

 この竹を粉砕して、竹チップや竹パウダーにするんです。伐ってきた竹を専用の機械に入れると、細かく砕かれ出てきます。
 菊川先生は、従来の肥料をまいた田んぼと、竹チップのみをまいた田んぼで、取れたお米にどの様な差が出るかの実験を行いました。すると、1年だけの試験ですが、収量はあまり変わらずに、食味は竹チップを入れた田んぼの方が5%ぐらい高くなったそう。さらに、発酵させた竹パウダーを鶏のエサに5%混ぜたところ、産卵率が上がることも確認できました。家畜の飼料に数パーセント入れることで、経営改善につながる可能性があることが示されたんです。
 さらに、竹を炭にする方法も!炭にすると、農業用などいろんなところに使うことができます。地面に材料をおいてそのまま燃やして炭にする、伏せ焼という方法を使います。火を点け、炭になりきったところで水をかけます。
 そうして出来上がった竹炭。

 その断面は細かな穴が沢山開いているために保水性に優れており、空気もとりこみます。その為、植物の周りに撒くと、土の乾燥や雑草の繁殖を抑えることができるとされ、需要が出てきています。
 さらに、現代的な材料と併せて作られるのが、樹脂と竹パウダー、半々の割合で混ぜて作られる、竹プラスチック。

 先ほどのパウダーが工場に買い取られポリプロピレンと混ぜ合わせられます。そうすることで、石油由来の樹脂の使用量を半分にすることができました。従来のプラスチック成型機を使い、自由に形を作ることができます。また、竹プラスチックには抗菌作用があり、その効果は3年程度持続するそうです。このように利用方法を広げていった結果、昨年から地域の竹を100kg1000円で買い取れるようになりました。

人不足を解決する地域としての取り組み

 竹に関わる人不足に取り組んでいる方がいるということで、やってきたのは熊本県の株式会社「竹組」。早速、社長の園田さんと問い合わせがあった場所に。向かったのは、熊本の北部の山鹿市・下中地区。お会いしたのは、竹組に問い合わせした野中さん。
 ちなみに、竹組は場合によっては無料で竹林を管理してくれるといいます。現在、国の政策で放置竹林の整備・利活用を行うと、1haあたりおよそ28万5000円の補助金がでます。そこで、園田さんは整備する竹林の見積もりをとり、まとまった整備ができる場合に限り無料で引き受けているんです。
 野中さんに案内されてきた場所は、民家のすぐそばまで竹が迫っています。

 生命力が強い竹は管理しつづける必要が…。そこで、園田さんが考えた継続的に管理できる方法というのが、空き家をリノベーションし、そこに来た移住者が竹林を管理するシステム。竹林の整備を行わない時期には、耕作放棄地を借りて、農業で収入を得ることもできます。
 そして、竹組もまた竹林整備で出た竹を活用する方法を模索しています。竹チップはもちろん、カキの養殖に使われるいかだの材料として販売したり、さらにリノベーション中のカフェでは、竹炭を漆喰に塗り込み、独特の色合いを出しています。若者の地道な活動から、竹を使った新しいアイデアなど、竹にはまだまだいろんな可能性がありそうです。