放送内容

第1675回
2023.05.14
林業ボーイズのはじめての林業
広葉樹編
自然・電波・鉱物・エネルギー

 今回は広葉樹のポテンシャルを知るべく、日本で一番、広葉樹が熱い場所へ!
 さらに、広葉樹を利用した一大地域産業とは?
 「林業ボーイズのはじめての林業」今回は、北の大地で熱い!「広葉樹」編です!

針葉樹と広葉樹の特徴

 森に生えている木の半分が広葉樹。それなのに広葉樹が使われていないのは?その理由を知るために実験です。
 同じ大きさにカットした、針葉樹スギの木片と、広葉樹ミズナラの木片を用意しました。それにどんどん力を加えて、木材の強さを調べてみます。
 スギの木片は1.9kN。およそ190kgの力で壊れたのに対し、ミズナラの木片はスギが壊れた1.9kNを超えてなんと3.4kN。およそ340kgの力まで耐えることができました。

 2倍近くの強さを見せた理由は、針葉樹と広葉樹の細胞の違いにありました。針葉樹の細胞は全体的に隙間が多いのに対して、広葉樹の細胞はより密につまっています。この細胞の密度が強さを生んでいるのです。

 そのため、同じ体積で見た場合、広葉樹の方が針葉樹より重くなってしまいます。

 こういった理由から、家の柱や梁に使うには軽く扱いやすい針葉樹が選ばれ、これまで大量に消費されてきました。
 一方で、人々は広葉樹の中でも密度の高い樹種を選び、長時間燃え続ける燃料や、強度が必要な道具の部品として活用しました。しかし、生活の変化により、広葉樹が活躍できる場所がへってしまったということなんです。

日本一広葉樹が熱い…旭川!

 広葉樹を知るためにやってきたのは北海道の旭川。実は広葉樹の国内での生産量をみると圧倒的に北海道が多いんです。

 まずは、広葉樹が生えている森を調査。広葉樹を植林した森はほとんどなく、天然林に自然と生えた広葉樹を収穫しています。
 森で見つけたのはミズナラ。ミズナラの樽で熟成されたウィスキーは、独特の香りを持つため世界中で評価され、需要が増えてきています。他にもイタヤカエデという木。その硬さからボウリング場の床に使われたといいます。そして、北海道の代名詞とも言える白樺。これらの広葉樹は、伐る木を1本ずつ見極めて選んでいく、択伐という方法で伐られます。弱ったり成長が止まった木を優先的に選び、また、伐る量も管理して資源のバランスも守ります。広葉樹が伐られるのは冬の間。雪がクッションになり切り倒した木が傷つくのを防いでくれます。

 そして、伐られた広葉樹が運ばれるのが旭川銘木市。日本最大の広葉樹市場です。ここでセリが行われ、広葉樹の丸太に値段がつきます。その数およそ1万本。並ぶ木のほとんどが、北海道の天然林から切り出されたものです。
 そんな銘木市で、とくに注目されるという木が…ナラ。

 家具、床、壁などに使われ、きれいな木目が出るといいます。広葉樹の価値を判断するポイントとして、太さ、長さ、樹種の人気はもちろん、とくに重要なのがまっすぐかどうか。それから年輪が真ん中にあってまるいかどうか。
 人工林で管理されて育った針葉樹からは、まっすぐで形のそろった丸太がとれます。一方、天然林で自然に育った広葉樹からは、一本一本の個性が強く、曲がりやねじれのある丸太が多くとれます。そのため、この市場のセリでは広葉樹を一本一本見定めて入札されるのです。

 この後行なわれるセリに向けて、丸太を買いに来たお客さん達は、真剣に木を見定めます。どういう人が買いに来ているのか聞いてみると、ナラ材を求める人がたくさん。堅い広葉樹が活躍するのは、人が直接手に触れる、とくに傷つきやすい部分。家具もその1つです。
 さらに、丸太から木材をつくる製材会社も全国からやってきます。彼らがつくるというのが突き板。突き板とは、0.2mm程度に薄くスライスした木の板のこと。部屋の壁や家具の表面に仕上げ材として張ることで、広葉樹の堅さで壁や家具を守り、木目の美しさから目を楽しませてくれます。他にも、広葉樹はフローリング材として好まれます。

 ここで、針葉樹と広葉樹のへこみを比較した実験。針葉樹と広葉樹、ともに7kNの圧力をかけます。すると、針葉樹はへこみがはっきりと見てとれるのに対して、広葉樹はへこみがほとんどわかりません。この堅さが床材などに好まれる理由。
 いよいよセリが始まります。目利きのプロが下見で目を付けた木に、価格をつけて入札していきます。金額を書いた紙が回収され、最も高値をつけた人の名前が読み上げられます。こうして、市場に集められた、およそ1万本、ほぼすべての木の取引が完了しました。ちなみに、今回の銘木市で最も高値が付いたナラの木は、なんと、1㎥あたり34万5千円の値段がつきました。

広葉樹で製材・家具作り

 銘木市で落札された丸太は基本的に製材会社へと運ばれていきます。訪ねたのは広葉樹専門の製材会社。さっそく工場内を見せていただきました。
 実は旭川で広葉樹が多く取り扱われているのは、市場があるからだけではありませんでした。広葉樹の取引が行なわれるのは冬。そのため冬場に一年分の丸太を仕入れるのですが、実は、広葉樹は針葉樹より温度の影響を受けて傷みやすく、冷やして丸太を保管する必要があるんです。傷んだ丸太を製品にしても、見た目の美しさが落ちてしまいます。そのため、冷涼で雪が積もる北海道の気候は丸太を保管するのにピッタリ。さらに、夏の間は大雪山からの豊富な地下水を使って丸太を冷却します。

 そして、丸太を製材して木材にしていくんです。
 まず始めに、丸太の表面の皮を全て剥いてしまいます。剥かれた丸太は、大まかな形にカットされます。ここに針葉樹との違いがありました。
 針葉樹は、丸太の使いやすい部分だけを効率よく切り出していき、すぐに規格の大きさの板を製材しますが、広葉樹の場合は、無駄な部分を出さないために、厚みも大きさも違う板を切り出します。その後、さらにカットを重ね、木材として使えるギリギリの部分まで活用します。その結果、色々なサイズの板が同時に製材されます。高価な木を無駄にしない為の工夫です。

 切り出した板は、屋外で自然乾燥。広葉樹は長い時間をかけてゆっくり乾燥させないと、ねじれや曲がりが出てしまうため、大体1年、長いものだと2~3年ぐらいの乾燥期間がかかります。その一方で、自然の状態で放置すると木材にダメージを与えてしまいます。
 それを防ぐために色々な対策を打っています。例えば、直射日光が当たり、材料が割れることをできるだけ抑えるための光を遮るネット。自然乾燥を行なうことで含水率を20%くらいまで下げます。さらに2週間~4週間人工乾燥させて、含水率を8%程度にします。

 ここからでたものがものづくりの原料になります。
 こうした広葉樹の材料が手に入りやすい、旭川地域で発達した産業が家具です。
 今回、その家具づくりを見せていただきました。旭川の家具メーカーは、輸入材よりも細い国産広葉樹を、有効に使えるよう工夫を重ねてきました。
 製材会社から運ばれてきた材料は、まず、それぞれの部品の大まかなサイズに切り出されていき、機械加工で様々な部品になります。
 そんな中、家具にするにしては薄い材料を発見!それをのり付けして重ね、圧力を加えるときれいに曲がっていきました。ここからさらに機械で削ることにより、なめらかで、木のぬくもりを感じるデザインに仕上がりました。

 さらに、木材を有効活用する技術が!何枚もの細い板をのり付けして組み合わせて、熱と圧力を加えると大きな板にすることができました。これはテーブルの天板になります。

 かつては太い大径木が十分手に入った為に、広い板を選んで机の天板に使っていましたが、現在は、小径木や中径木も取り入れ、国産の広葉樹を効率よく利用するようになりました。

 細かく木を接いだ家具も、手触りに違和感がないよう、職人さんが手作業で仕上げていきます。こうした工夫を重ねた結果、8年間で8%だった国産材の利用率を、60%近くまで上げることができたそうです。