静岡県 静岡市
静岡県の茶産地の中で最も古い歴史を持つ本山茶は、静岡県中部を流れる安倍川・藁科川の上流域で生産されたお茶で、静岡県の三大地域ブランド茶のひとつです。川沿いの山間地の茶園は川霧につつまれ、平野部のお茶と比べて葉肉がやわらかく、鮮やかな緑が特徴。口当たりは上品で優しく、爽やかで独特の香りを持ちます。この香りは「山の香り」とも呼ばれており、本山茶の大きな特徴のひとつです。家康の時代の静岡は、江戸と並ぶ政治・経済の中心地として繁栄しており、世界各国と交流を行いました。家康は本山茶を愛飲しており、天和元年(1681年)からは、御用茶として徳川幕府に納めていました。この時代の茶会は政治的にも大きな役割があり、お茶は大切に扱われました。
■ DIRECTOR'S COMMENT
徳川家康が愛飲したことで知られる静岡県のブランド茶「本山茶」は、主に安倍川上流域の山間で、ミネラル豊富な土壌と綺麗な水、さらに川霧が発生しやすいというお茶に適した環境で生産されています。今回は江戸時代から続く森内茶農園さんにお邪魔して、収穫した茶葉を乾燥させる伝統技術「手揉み」の撮影をさせて頂きました。現在、茶葉の乾燥作業はほぼ機械化され、「手揉み」はほとんど行われていないのですが、その理由はすぐにわかりました。作業を始めたのが朝8時。蒸した茶葉をこねたり、散らしたりしながらゆっくりと乾燥させて、完成したのが午後1時。5時間も作業が続く重労働なのに、僅かな量しか生産出来ないのです。「手揉み茶」は今ではなかなか手に入らない貴重なお茶になってしまったのですが、茶葉を切ることなく丸ごと乾燥させているため、お湯に入れるとゆっくりと成分が染み出しまろやかな味になると、お茶の愛好家の方々からは高く評価されています。お茶農園ではこの伝統技術を絶やさないよう、若手への伝承にも力を入れているそうです。(鈴木和宣)
■ ACCESS
JR「静岡駅」から「森内茶農園」まで車で約25分
