#1091 『ナマズの群れ』(25/7/13 放送)

高知県 四万十町

ナマズは淡水魚の一種で、大きな口と長いヒゲが特徴です。日本全国の湖沼や河川に広く生息しており、夜行性のため、主に夜間に小魚や甲殻類、カエルなどを捕食します。国内には4種類のナマズが確認されており(外来種のアメリカナマズが問題視されていますが)、今回はその中でもっとも広く分布している「マナマズ」を撮影しました。ナマズは本来、群れを作らず単独で行動する魚とされていますが、今回の撮影では、モロコ(小魚の一種)の産卵を追って、複数のナマズが一ヶ所に集まるという、非常に珍しい光景を記録することができました。撮影を行った場所は、高知県四万十町の山奥深く、人里から遠く離れた静かな場所です。四万十川上流で合流する檮原川(ゆすはらがわ)、さらにその上流で流れ込む支流の河口付近で撮影しました。ダムに流れ込むこの支流では、上流域の水が澄んでいるため、生き物たちの繊細な営みを捉えることができました。ナマズは光を嫌い、ふだんは光の届かない場所で身を潜めながら獲物を狙っています。そのため、照明を当てた映像を見ると「なぜこんな明るい場所で捕食を?」と不思議に思われるかもしれません。実際には、照明を落とすと水中からバシャバシャと激しい音が聞こえ、再び照らすとゆっくりと音が止む――そんな行動が観察されました。

#1091

■ DIRECTOR'S COMMENT

今回のナマズ撮影は、写真家の和田剛一さんにご協力いただき、四万十川の支流の奥深い場所で行いました。人里離れた奥の奥に、これほど大量のナマズがいたことに、正直驚きました。琵琶湖博物館の方に聞いたところ、普通ナマズは群れを作らない魚なのだそう。なので、今回のような群れは、餌を追って偶然集まった珍しい現象のようです。さらに不思議だったのは、撮影場所が川づたいに来ると海から100キロ以上も離れていること。ナマズが自力でそんなに長い距離を遡上するのは、ほぼ考えられません。淡水の生き物ということもあり、実はダム工事などの際に魚を放流した可能性が高いとのことでした。それでも、このように珍しいナマズの大群とその音風景が広がっているのは、やはり四万十川の懐の深さ、自然の多様性があるからこそだと思います。人の手が入っても、生き物たちはたくましく適応して、新しい生態系を築いていく。そんな生命の強さを感じる、貴重な瞬間でした。(村上宗義)

■ ACCESS

非公開

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