#1107 『甲州印伝』(25/11/9 放送)

山梨県 甲府市

印伝は南蛮貿易が盛んな16~17世紀、日本に伝わったインド産の装飾革に、それらを模して和様化し鹿革に装飾したものを、印度伝来から「印伝(いんでん)」となったと言われています。江戸時代の後期には、甲州で鹿革に漆付けをする独自の技法が生まれ、それが甲州印伝として四百年以上にわたり受け継がれてきました。今回取材した印傳屋は、その技を今に伝える工房のひとつです。なめされた鹿革に漆を重ねていく「漆付け」の工程は、熟練の経験と繊細な感覚を要し、手作業ならではの静かな緊張感に満ちています。漆が革へと定着していく微かな音や手元の所作には、長い歴史と受け継がれてきた職人の技、その確かな呼吸が息づいています。1987年には甲州印伝は通商産業(現 経済産業)大臣に伝統的工芸品に指定されました。

#1107

■ DIRECTOR'S COMMENT

今回取材にご協力いただいた印傳屋さんは、創業が戦国時代の1582年。漆で模様をつける代表的な技法を考案し、代々受け継いできた由緒ある製造元です。漆は華やかさだけでなく、革を守り、美しさを長く保つ役割も果たしています。そして今も、伝統にとどまらず、新しい模様やハンドバッグなど新たな形への挑戦を続けていました。カメラでは伝えきれなかった漆の立体感と艶――その繊細な美しさは、実際に手に取ると息をのむほどでした。(鈴木和宣)

■ ACCESS

「JR甲府駅」から「印傳屋」まで徒歩で約15分

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