
「ハリネズミのミリタリージャケット」
2026.01.31
「最近、時々考えるようになった。人間の恋愛について。君のせいだな」――。仕事も恋もどん底の編集者・柴田一葉(上白石萌歌)は、イケメンだけど変人動物学者の椎堂司(生田斗真)に見つめられて心臓バクバク!もしかして私…恋してる!?冴えない自分とイケメン准教授が釣り合うわけがないと思いつつも、司のことばかり考えてしまう一葉。先輩編集者・紺野幸子(宮澤エマ)と友人のカメラマン・橘環希(仁村紗和)の前でもニヤニヤしっぱなしで…。
一方の橘は「この世から、恋愛なんて滅亡しろ!」とご機嫌ナナメ。先輩カメラマン・山下翔(野村周平)から告白された橘は、尊敬する山下が仕事に恋愛感情を持ち込んできたことが許せないのだ。女としてじゃなく、一人のカメラマンとして見てほしいのに、上司からも女というだけで仕事を制限され、回ってくる仕事は物撮りや風景ばかり。橘のフラストレーションは爆発寸前で…。そんな恋愛不要論者の橘とは対照的に、紺野はマッチングアプリで知り合った和菓子職人と付き合うことになり、「久々に恋愛してみて、その素晴らしさがつくづく分かったわ」と恋愛にどっぷり。恋愛って必要?それとも不要?2人に挟まれた一葉は分からなくなってしまう…。
そんな中、毒舌カリスマモデル・灰沢アリア(シシド・カフカ)のゴーストライターとして恋愛相談コラムを書く一葉に、婚活中の20代女性から悩み相談が。『真面目で落ち着いた人がタイプなのになぜかチャラ男にばっかり言い寄られます。ちゃんとタイプの男性に好かれるようにするにはどうすればいいの?』。一葉はアリアに意見を求めるものの、話の流れでアリアの全盛期に触れると、アリアは突然、不機嫌になって無言になり…。気になる一葉は、アリアがモデルの仕事をしない理由をマネージャー・宮田真悟(柄本時生)に聞いてみるが、うまくはぐらかされてしまう…。
アリアに話を聞きそびれてコラムが進まない一葉に、鬼の編集長・藤崎美玲(小雪)がまたもムチャぶり!まったく興味のない山登りの企画を押し付けられた一葉は途方に暮れて――。
自分らしさって何だろう?自己表現ってどうすればいいの?その答えは……ハリネズミのダンスに学べ!
編集長・藤崎からやりたくもない山登りの企画を任された一葉は、取材のため、カメラマン・橘と一緒にハイキングへ。橘がいつものミリタリールックなのに対し、一葉はゴリゴリの登山ルックで初心者丸出し...。すれ違うカップルや親子連れも皆、軽装でカラフルなハイキングファッション。そんな人々にカメラを向ける橘。
撮った画像をデジカメのモニターで見る一葉は「めっちゃいい!!やっぱ景色の写真撮ってもらうなら、環希だよね!」と感激するが、橘は浮かない顔で...。本当は、もっと人間の情熱を肌で感じる写真が撮りたいという橘。でも女というだけで気遣われ、厳しい現場に行かせてもらえず、回ってくるのは物撮りか風景の仕事ばかり。自分より後に入った男のカメラマンはもっと大きな現場に出ているのに...。橘がいつもミリタリールックでいるのも、女だからってナメられたくないから。一人のカメラマンとして見られたい...。「服って人の印象を結構決めるでしょ?だからメッセージを重視して選ぶのもありだと思ってる」と橘は言う。
取材を終えた一葉と橘は、打ち上げと称して入ったレストランで、司と、司の助手・村上野乃花(片岡凜)が合コンに参加しているのを目撃!メンバーの中にお目当ての男性がいる村上が、人数合わせのために司を無理やり誘ったらしい。村上はいつものダサい格好とは打って変わって男ウケしそうなメイクと服装で...。普段の地味な格好は、司にまとわりつく女子学生たちにねたまれないための擬態だったのだ。一方の司は、ワイン片手に動物の求愛行動についてゴキゲンに語るものの、だんだん酔いが回って講釈を垂れはじめ、挙げ句には「合コンとはまさしく繁殖期のマンドリルの集会だ」とみんなを侮辱し始めて...。怒った一同は帰ってしまい、一葉は村上に頼まれ、泥酔した司を家まで送り届けることに...。
翌日、一葉は登山ページのレイアウトを藤崎に見せるが、「やり直しです。これではただ情報を羅列しただけです。どこにあなたらしさがあるんですか?」とダメ出しを食らってしまう。すると編集部に司が現れ...!昨夜、一葉に送り届けてもらったことを恥じ、謝罪に来たのだ。「柴田さん、昨晩は醜態をさらしてしまい、申し訳ありませんでした」。そんな司の顔をまじまじと見る藤崎は「どこかでお会いしたことありませんか?」。司は驚いた様子でとっさに顔を背け、慌てて立ち去ってしまう...。
橘に仕事を広げるチャンスが巡ってくる。上司から、男子高校生のバスケットボール大会の撮影を任されたのだ。大張り切りの橘は、必死にプレーする高校生たちに向かって真剣にシャッターを切り続ける。最後は勝利チームの笑顔をしっかりカメラに収め、満足げに会場を後にするが...。
橘の写真を見た上司は「悪くない。いい画も押さえられてる」と褒めつつ、「ただ、山下の写真見たか?」。撮影に同行した山下の写真を見せられた橘は、言葉を失う。同じ試合の写真なのに、山下の写真の方が格段に躍動感があり、負けて泣き崩れる選手たちにもカメラが向けられているのだ。「試合だけじゃなく、空気も切り取る。これがカメラマンの仕事だ。まだおまえは全然分かってない。山下のを使う」。上司にそう言われ、実力不足を棚に上げて愚痴ばかり言っていたことを猛省する橘。山下から「強がんなくていい。もっと頼れ。俺はいつでもおまえの味方だ」と優しい言葉をかけられた橘は、たまらず涙を流す...。
一方、一葉はもう一度アリアにコラムの意見を聞きに行く。『チャラ男ばかりに言い寄られ、タイプの男性に好かれない』という相談者の悩みに、アリアは「そいつがチャラ男が集まるオーラ、出してんだろ」。服やメイク、仕草で、自分がどう見られたいか、いくらでも演出できると言うアリア。モデルの時は服が主役でも、テレビの仕事の時はアリアという人間をちゃんと見せるために、服もメイクも髪形も自分で選ぶ。「何をしてても、どこにいても、自分らしさは出せる。そのために服やメイクで自分自身を武装するんだ」――。
橘は山下から正式に交際を申し込まれ、一葉に相談。山下のことは尊敬できるし、一緒にいて楽しい。でも、このまま甘えてしまっていいのか分からなくて...。一葉から「もし迷ってるなら、環希らしい方を選ぶべきだと思う」と助言を受けた橘は、ふと思い出し、尊敬するカメラマンの写真展に一葉を連れて行く。料理人やスポーツ選手たちの一瞬を切り取った、情熱が宿った写真が並ぶ中、展示の終盤に飾ってある1枚の写真に目を奪われる一葉。それは、ランウェイを歩く若き日のアリアだ。光を背に受け、まっすぐ前を見据えた表情。その場のすべてを支配するような圧倒的な一瞬...。「この中で、私が一番好きな写真。いつかこういう写真を自分の力で撮れるようになりたい」という橘に、「環希なら撮れるよ」と一葉。アリアの写真を見つめながら、決意を固める橘で――。
一葉はコラムを仕上げるために司のもとへ。「今回教えてほしいのは、自分の意思を体や仕草で表現する動物がいないかです。つまり、相手にどう見られたいかを意識して、自分を演出するような動物がいないかと思って」。動物という言葉を聞いて黙っていられない司は「ハリネズミはどうだ?」と、背中の針で意思を表現するハリネズミを挙げ、「それでは――野生の恋について、話をしようか」――。
ハリネズミは求愛中の2匹が出会うと、オスはメスの背後に回ろうとする。交尾が可能な状態なのか、尻のにおいを嗅いで確かめるためだ。メスはそれに対し、身を翻してオスに体の正面を向け、尻を守ろうとする。そして完全に拒絶する時は針を立てる。だが、オスはそう簡単には諦めない。メスの尻のにおいを嗅ぐために何度も背後に回り込もうとする。メスはそのたびに尻を守ろうとして身を翻す。そうして2匹は同じ場所をくるくる回る。まるでダンスを踊るかのように...。長い時ではその駆け引きは数時間に及び、夜明けまで踊り続けることもあるという。オスは種の存続をかけ、何度拒まれても、たとえ針で刺されようとも挑み続ける。一方のメスも自分の気持ちにウソをつかない。その気がない相手にはためらいなく針を立てる。司は言う、「ハリネズミにとってそれは、生きるか死ぬか、命を懸けた自己表現なんだ」――。
高級レストランで待つ山下のもとに、橘がミリタリールックでやってくる。ドレスアップした周囲の好奇な視線もどこ吹く風、橘は晴れやかな表情で、「私、やっぱり、ダサいやつにはなりたくないんです」。まだ経験も技術も足りない今、恋愛に逃げたら一生後悔する。そんな生き方、自分らしくない。今はただ、心の底から震えるような、自分にしか撮れない写真を撮ることにすべてを注ぎたい...。「だから今はお付き合いすることができません」と頭を下げる橘に、山下も「なんか、橘らしいな、その答え」と吹っ切れた顔。
司にアドバイスをもらった一葉はようやくコラムを完成。『ハリネズミみたいに、誰もが武装して生きている。恋愛している時も、仕事をしている時も、誰もが必死に戦っている。きっとあんたはその演出方法が間違ってるだけだ。服でも、メイクでも、言葉でも、何でも使って自分らしさを出してみな』――。
コラムを書き終えた一葉は山の企画に集中。橘が撮ったおしゃれな登山客のスナップ写真を並べ、ハイキングファッションを前面に押し出した記事に仕上げる。一葉の色が加わったラフデザインに、藤崎も「いいでしょう。このまま進めてください」とゴーサイン。一葉は初めて自分らしい記事が書けた喜びをかみ締め...。
「アリアさんのおかげで、今回もSNSでバズりまくりです!」。アリアにコラムのお礼を言う一葉は、「この間、写真展でアリアさんの写真見ました!めっちゃかっこよかったです!やっぱり、アリアさんはランウェイが似合う――」と言いかけると、アリアは突然「うるせーよ」とブチ切れ、一葉に「消えろ」と言い放ち...。
どうしてアリアは怒ったんだろう...。悩む一葉のスマホに、姉・一花(筧美和子)からLINEが届く。『この間、椎堂先生に会った時、どっかで見たことあるなーって思ってたんだけど、分かったよ』。メッセージと共に送られてきた画像には、教会の前に並ぶ美男美女、20歳の司とアリアが写っていて――。
その頃、司は夜のバーを訪れ、カウンター席に座る女性の背中に声をかける――「すみません、遅くなりました」――。