
「コアラのように二つの声で叫べ」
2026.3.7
「私、乳ガンだったんだ」――。柴田一葉(上白石萌歌)のコラムに心を動かされたカリスマモデル・灰沢アリア(シシド・カフカ)が、ついに秘密を告白。3年前にモデル界から姿を消したワケは、乳ガンで左胸を全摘したことで、自信をなくしたからだった。「手術が終わって、鏡で自分の裸を見た時、がくぜんとした。魂が、欠けた気がした」。5年間は再発のリスクがあるため、今は定期的にホルモン注射を打ちながら、時々、体調が悪い時に主治医に来てもらっているという。
週刊誌に写真を撮られたのは、ちょうどその時だったのだ。不倫を疑う週刊誌は、病気のことまでは把握していないらしい。「大丈夫。あたしはモデルとして生きる。それが、あんたのコラムに背中を押された、今の私の答え」。前を向いてモデル復帰を目指すアリアを、一葉は全力で応援しようと心に決める。
一方、変人動物学者・椎堂司(生田斗真)は、学生からのラブレターを珍しく受け取り、助手の村上野乃花(片岡凜)を驚かせる。今までの司なら、相手の一方的な感情に時間を割くようなことはなかったのに。
司の中で、何かが変わり始めているようで…。
『リクラ』の休刊まで残り2号。終わりにふさわしい企画を求める編集長・藤崎美玲(小雪)は、「最低でも1人、20本」と久々に鬼モード発動。
一葉も「最後ぐらい、私も企画通したいなあ」と思いつつ、コラムの方も待ったなし。
今回の相談は、仲の良かった男友達を好きなってしまった女子大生から。『できれば友達のような関係のまま恋人になりたいと思っています。どうやって告白すればいいでしょうか』。
男女の友情がテーマの超難題に、編集部は『男女の友情は成立する?しない?』で大激論となり…。
一葉はコラムのヒントを求めて司の研究室へ。
司はなぜかゴキゲンで、「君、キャンプは好きか?」と一葉をキャンプに誘ってくる。「どうしても話したいことがある」と笑顔の司。もしかして、愛の告白!?ドキドキする一葉は、キャンプ当日、司の言葉に期待するが…。
最終回直前!“なりたかった私”から“今の私”へ…!ついに自分のやりたいことを見つける一葉!
そして一葉と司がまさかの決別!?あふれる思いが止まらない……涙の第9話!!
待ちに待った司とのキャンプ。一葉は告白されるのを期待して、かわいいアウトドアファッションでばっちりキメるものの、司から迷彩柄のポンチョと双眼鏡を渡され、「君は北東の方をしっかり監視してくれ。コミミズクというフクロウ科の鳥の目撃情報が入ったんだ」。本当は仲間と一緒に調査に来たかったが、仲間に予定が入っていたため、仕方なく一葉に声をかけたという司。キャンプとは『ベースキャンプ』のことで、「話したいこと」とはコミミズクの求愛行動のことだったのだ…。失望する一葉は、「もういいです。帰ります」とポンチョを脱ぎ捨て、戸惑う司を置いて一人で帰ってしまう…。
ネットニュースにアリアの不倫を伝える記事が載り、リクラ編集部は騒然。みんなから真相を聞かれた一葉は「とにかく私はアリアさんを信じます」と不倫を否定するものの、リクラのメインターゲットは不倫を何より嫌う主婦層。残り2号で休刊とはいえ、アリアのコラムは打ち切りを検討せざるを得ない状況に。ところが、編集長・藤崎は「打ち切りはしません。この炎上、利用します」。騒動に乗じて部数を伸ばそうとする藤崎に、一葉は「数字のためにアリアを利用するんですか?これが編集者の仕事なんですか!」と反発するが、藤崎は方針を変えず…。
その夜、一葉は、先輩・紺野幸子(宮澤エマ)と彼氏の和菓子職人・田所新平(森田甘路)から結婚の報告を受け、証人になってほしいと頼まれる。「私たちが結婚しようって踏み切れたの、柴田のコラムのおかげだから」。一葉がコラムに書いた『傷つくことを恐れずに気持ちをぶつけろ』という言葉がきっかけで、2人は本音で話し合って分かり合うことができたという。「おめでとうございます!お幸せに!」と婚姻届の証人欄に喜んで名前を書く一葉は、本音を言い合える2人の関係が、なんだかうらやましくて…。
さらに、一葉の部屋に居候中の元カレ・牧野真樹(三浦獠太)が、住み込みで働けるレストランを見つけ、部屋を出て行くことに。「仕事を頑張ってる一葉を見てたら、悩んでないで、行動するべきだって思ったんだ」と真樹。アリアも、真樹も、紺野も、みんな前に進んでいるのに、一葉は自分だけが同じ場所をぐるぐる回っている気がしてしまう…。
一方、司は、キャンプで先に帰った一葉のことが心に引っかかったまま。そんな司のもとに、ドバイ帰りの母・椎堂ケイカ(草刈民代)がお土産を持って現れる。司の顔を見るなり、「何かあったでしょう。私には分かる」とケイカ。一葉を思い浮かべる司は「……やっぱり私は、人と深く関わることができない人間なのかもしれません」。珍しく落ち込む司に、ケイカは優しい母の顔で、「全部私のせいね。ごめんね、司」――。
司に会うのが気まずい一葉。でもコラムのために仕方なく司の研究所へ。「先日はすみませんでした」とキャンプで先に帰ったことを謝るが、司は「君が帰った後、コミミズクを発見した。何の問題もない」と相変わらずの態度。一葉はムカつく思いをグッとこらえ、本題に入る。今回の相談者は、好きになってしまった男友達と、友達のような関係のまま恋人になりたいという女性。一葉は、「私は男女の友情は成立すると思っています。ただこの人が言っていることは、とても曖昧に思えます。そもそも友達と恋人って、まったく違うものだと思うんです」。そう言って司を見据えると、「つまり、本気で恋愛することから逃げてます」。それは明らかに、司に向けた言葉で…。「この場合のヒントになりそうな動物の求愛行動はないですか?」。視線をぶつけ合う、一葉と司。やがて、黙っていた司が口を開き、「ならば、コアラがいいだろう」――。
コアラは縄張り意識の強い動物で、野生では群れることはなく、自分の生活する木を何本か決めて、それらの木を行ったり来たりしながら暮らす。そんなコアラのオスは、声を発する装置を2つ持っている。普段使う声と、特別なシチュエーションで使う声。メスに求愛する時は、特別な声の方を使うといわれている。つまりコアラのオスは、大切なメスの前ではスイッチを切り替え、誰にも見せない本気の自分を見せるのだ。「このコアラの求愛行動は、君が言う『本気の恋愛から逃げている者』への答えが含まれると思う。以上だ」と、話を終わらせて帰ろうとする司。一葉は意を決し、「先生はどうなんですか?本気で恋愛することから逃げてませんか?」。本音でぶつかりたい一葉は、司に「くだらん」と言われ、ついに感情が爆発!「くだらん、分からん、覚えてない。そうやって先生はいつも肝心なところで相手を拒絶しますよね。今回のキャンプもそうです。先生、私の気持ち、分かってますよね?それが分かってて、どんな気持ちで誘ったんですか?しかも帰っても何の問題もなかったって突き放して。自分がやりたいようにやって、相手がどう思うかなんて考えもしないで。どうしてそんなに冷たくなれるんですか?どうして誰のことも信じようとしないんですか?先生は恋愛から逃げてるだけじゃない!人間から逃げてるんです!」。途端に司は声を荒らげ、「黙れ!私のことを何も知らないくせに、知ったような口利くな!」。怒りに震える司から「もう二度と顔を見せるな」と拒絶されてしまった一葉。今まで築いてきた司との関係が、一瞬で、壊れてしまった…。
司と決別して落ち込む一葉に、アリアからうれしい報告が。ケイカの依頼で、来月の東京デザイナーズコレクションにモデルとして出ることになったというのだ。アリアのランウェイを見られることがうれしくて号泣する一葉に、アリアは「あんた、言ってくれただろ。あたしが自信を持ってステージに立てる日まで、ずっと待ってるって。これはあんたの言葉のおかげだ。誰かの痛みを、自分のことみたいに感じてくれる人って、そういない。あたしだけじゃなく、きっとたくさんの人の背中を押したと思う。あのコラムは、あんたが書いた、あんた自身の言葉だ。だから胸張りな、一葉」。初めてアリアに名前を呼んでもらえた一葉は、感激で涙が止まらなくなってしまう…。
その夜、リクラ最終号の企画を考える一葉は、アリアに言われた言葉や、紺野や真樹のお礼の言葉を思い出しながら、何かをひらめき――。
数日後、一葉はみんなの前で企画を発表する。「私が考えた特集企画は『なりたかった私。今の私』です。著名人のかつての夢と、現在の姿を取材して、その2つをつなぐ記事を作りたいと思います」――。
子どもの頃からファッションの世界に憧れていた一葉は、ファッション誌の編集者になりたくて『月の葉書房』に就職したものの、思い通りにいかず、やりたくもない仕事をしながらずっとウジウジ悩んできた。「でも、コラムを書くようになって、こんなふうに思っているのは私だけじゃないって気付いたんです」。恋愛相談を投稿してきた人たちも、いいねを押した人たちも、みんな、なりたいものになれなくて、悩んで傷ついて、それでも生きていかなきゃけなくて…。それは、スポットライトが当たる有名人たちも同じ。思い通りにならなかった日々を積み重ね、今の自分を生きている。その人たちの言葉を取り上げれば、恋愛だけじゃなく、仕事や育児、生きづらさに悩んでいる人たちを勇気づけることができる…。「悩みながらも、必死に前を向こうとしている人たちの味方になることはできる。それが私の資源だって気付いたんです。なりたかった自分とは違っていたけど、これが、今の私がやりたいことなんです」――。涙ながらに企画意図を話す一葉。その思いを酌んだ藤崎は「これは柴田さんにしかできない企画です。やってみなさい」と一葉の企画を採用。
さらに藤崎は「この特集のアリアのインタビューをトップにしましょう。編集者の仕事は沈黙を守ることではありません。混乱の中でも言葉を信じることです。ここまで一緒に仕事をしてきたアリアの本当の言葉を世に出す責任が、私たちにあります」――。
初めて自分の企画が採用され、喜びをかみ締める一葉。ここまでやって来られたのは、ほかでもない、司のおかげだ。決別してしまったけれど、最後にきちんと感謝の気持ちを伝えてケジメをつけたい。一葉はそう決意するが…。
アリアが出演する東京デザイナーズコレクション当日。会場へ向かおうとする一葉は、ネットニュースの見出しを見て言葉を失う――『灰沢アリア、乳ガンからの奇跡の復活』――。