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2021

12/31

【高校サッカー戦記・滋賀】草津東 勝負のための大胆な戦略変更

第100回全国高校サッカー選手権。滋賀県代表の草津東は1回戦で群馬県代表の前橋育英と対戦しました。結果は、0対4で敗れスコアに差はつきましたが、草津東にとって、この1試合にかける思いが表れた試合でもありました。

■直前に『勝負のための』大きな決断

実は、草津東は大会直前に大きな決断を下します。フォーメーションをそれまでの3-6-1から3-5-2に、しかも3ボランチを置くというチームとしても初めての形に変更し、それに伴い、スタートの選手も入れ替わりました。対外試合でこのフォーメーションを取り入れたのは、12月19日から。初戦まであと10日という時点での驚きの戦略変更でした。

変更は、選手権96回大会優勝校であり、リーグ戦最高峰の舞台でもあるプレミアリーグ昇格も決めた前橋育英をリスペクトしてのもの。さらには、今年の1月に草津東・前橋育英の両校は対戦経験があり、草津東は、前橋育英に1対7の大敗を喫しています。「しっかりとした守備から攻撃に入るため」「前橋育英に思い通りにさせないため」全ては、草津東の勝利のために牛場哲郎監督が下した決断でした。

■決断は間違いなく成果に「それでも一枚も二枚も上手だった」

試合は、前半6分に草津東も警戒していた前橋育英の9番・守屋練太郎選手にゴールを決められ、先制を許します。しかし、そこから粘りを見せた草津東。守備でも3ボランチが効き、攻撃でも草津東の9番・松田大知選手がそのスピードを生かして前橋育英ゴールに迫るなど、牛場監督も「成果は出ていた」と話すように、試合終盤まで0対1のスコアが続きました。

ただ、最後は、牛場監督が試合後、「できるかぎりのことはやった。それでも、相手が一枚も二枚も上手のところがあった」と話したように、試合終盤に立て続けに前橋育英に追加点を許しました。100回目の選手権、草津東は、1回戦で大会を去ることとなりました。

■高校サッカーが”ここまで”自分を変えてくれた

試合後、草津東キャプテンの石徳柊弥選手が話してくれたのは、「元々、メンタルが弱くて、上手くいかない時に自分にベクトルを向けられず、他人にあたってしまう性格だった。でも自分自身を顧みて、謙虚さや他人への感謝ができるように変わったのは、高校サッカーのおかげ。高校サッカーというものがここまで自分を変えてくれた」と、高校サッカーへの感謝の言葉でした。

その言葉は、石徳選手の父・研二さんの言葉からも裏付けられます。「キャプテンになった当初は、その重圧からか家でも尖っていた。それでも、人の話をよく聞き、人のために発言できるようになった。我が息子ながら、本当に成長した1年間でした」と、うれしそうに話していたのが印象的でした。

■滋賀県勢の飛躍を期待して―

滋賀県勢は、選手権全国大会では84回大会の野洲の優勝以降、3回戦進出が最高成績です。この現状、前橋育英との間に感じた差。牛場監督は「リーグ戦でも上位リーグに参入し、年間を通して厳しい戦いができるかどうか」を課題に挙げました。

群馬県勢は、前橋育英と桐生第一の2チームが今回、リーグ戦最高峰の舞台であるプレミアリーグへの参入を決めました。一方、滋賀県勢は来シーズンから近江と綾羽の私立勢2校がそのひとつ下のカテゴリーであるプリンスリーグへの参入を決めましたが、滋賀県リーグ1部に所属する草津東も含め滋賀県全体で見ても、群馬県勢の勢いには及んでいない部分があります。滋賀県のチームが、より高い環境に身を置いて、強度の高い試合に、年間を通して臨むことができるかどうかは、今後の大きなポイントになりそうです。

今回の悔しさもばねに、草津東の、滋賀県勢の全国での再びの輝き、飛躍が期待されます。

(取材・文:高校サッカー選手権民放43社/びわ湖放送)
 

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