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2022

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【高校サッカー戦記・静岡】多彩な技で観客を魅了した静岡学園 届かなかった国立までの“あと一歩”

第100回全国高校サッカー選手権。静岡県代表・静岡学園は準々決勝で東京B代表・関東第一と対戦。1-1からのPK戦の末に3-4で敗れました。これまでの激闘を振り返り、未来を展望します。

    ◇

夏のインターハイで4強、Jリーグ内定4人と、優勝候補の一角にも挙げられた今大会の静岡学園。井田勝通総監督と、教え子の川口修監督が半世紀をかけて磨き上げてきたテクニックは、初戦から相手に脅威を与えました。

1回戦・徳島商業に5-0で大勝し、2回戦は近大和歌山の強固な守備を1-0で破ります。続く宮崎日大との3回戦では、記録が生まれます。あれよあれよのゴールラッシュで、静岡学園の全国選手権史上、最多となる大量8ゴール(これまでは6ゴール)。井田総監督は「サッカーは芸術だ。芸術は爆発だ。静学サッカーが爆発したんだ」と力を込めました。

その8ゴールの中には、ジュビロ磐田内定のエースが決めた驚愕のゴールもありました。ハーフウェイライン付近でボールを持つと、そこから得意のドリブルを開始。4人を抜いて、最後は鮮やかな左足のゴールでした。10番を背負うジュビロ磐田内定の古川陽介選手。重圧もあった中での大会でしたが、本人が「プレッシャーから解放された」と語る鮮烈なゴールでした。SNSで拡散され海外でも話題となり、優勝への期待感も高まりました。

大量得点。さらに大会無失点。その勢いで臨んだ準々決勝・関東第一戦は拮抗した展開になります。静岡学園は攻め続けるも決定機をものにできず、0-0で前半終了。ハーフタイムに「クロスボールへの入り方」を課題に挙げた川口監督。後半16分に、FW・持山匡佑選手を投入します。クロスへの対応が絶妙な持山選手。投入4分後でした。左からのクロスに飛び込んだ持山選手が折り返し、小泉龍之介選手がゴール。直後、川口監督が「やっぱりFWの動きだな」とつぶやき、作戦が的中します。

試合の流れを引き込み、このまま国立に届くかと思えました。しかし、待っていたのは悪夢でした。後半40分。関東第一の鋭いカウンターが静岡学園ディフェンスを破り、同点に。続くPKでは古川選手のキックを相手GKが止めるビッグセーブもあり、静岡学園は準々決勝で涙をのむ結果となりました。ほぼ手中にしたかに思えた国立への切符。選手たちは呆然と立ち尽くし、川口監督もピッチを10秒以上見つめていました。

そして、最後のロッカールーム。目を真っ赤にしてすすり泣く選手たちに川口監督は伝えました。「国立まであと一歩だった。でもそのあと一歩が大きい。これからの人生、最後にもうひと踏ん張りできるように」そして「後輩はこの思いを背負って戦うんだ」と、次世代の奮起を促しました。

大会を通じ、静岡学園の多彩な技に観衆は酔い、子どもたちは輝いた目で見つめ、スタジアムは“静学劇場”と化しました。エースの古川選手は「現実と向き合い、ジュビロで1年目から試合に絡みます」と、悔しさを力に変えると誓いました。そして、試合終了1時間後の静かなスタジアム。西日が差す中、後輩たちは「必ずここに戻ります」と誓い合いました。全国を魅了した静学スタイル。新たな挑戦は始まっています。国立に届かなかった“あと一歩”を求めて――

(取材・文:高校サッカー選手権民放43社/静岡第一テレビ)
 

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