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2021

12/28

【高校サッカー軌跡・徳島】過去最高成績と直近10大会 徳島商業と徳島市立が牽引

第100回全国高校サッカー選手権は12月28日に開幕します。その初戦で優勝候補の一角、98回大会優勝の静岡県代表・静岡学園に挑むのは、11大会ぶりに全国の舞台に立つ徳島県代表・徳島商業高校です。

現在、加盟校数28校と全国で2番目に少ない徳島県ですが、その代表校がかつてどのような戦いをしてきたのか、歴代の記録を振り返るとともに時代を牽引した2校をご紹介します。

■唯一の国立のピッチに立った徳島商業

過去最も多く徳島県代表校の座を掴んだのは徳島商業です。今回で40回目という出場回数は秋田県代表の秋田商業に続き、全国2番目となります。徳島県勢で最も選手権の高みに上ったのも徳島商業。1996年度開催の75回大会。1回戦、2回戦、そして準々決勝をPKで勝ち上がる(3回戦も1点差)というミラクルな戦いぶりで国立のピッチまで駆け上がりました。

当時3度のPK戦で神がかり的なビッグセーブを連発しチームを県勢初のベスト4に導いた、小柄なGK画星隆志選手(現:徳島市立高校GKコーチ)の名は、今も徳島県の高校サッカーファンの間で語り継がれる伝説となっています。

■98回大会ベスト8 徳島市立高校

その徳島商業も89回大会の出場を最後に10大会、全国の舞台から遠ざかることになります。その10年間で頭角を現したのが、徳島商業の積年のライバル、徳島市立高校でした。90回大会~99回大会までの10大会中7大会で代表校の座を掴み、平成後期から令和にかけての徳島県高校サッカー界を牽引してきました。

時代の移り変わりには、いつもこの徳島市立が徳島県の旗手となります。1985年に初出場、昭和末期から平成前期も徳島商業とのライバル関係で切磋琢磨し、1991年にユース選手権、1992年にはインターハイで全国優勝を経験するなど徳島県高校サッカーの一時代を築き上げます。しかし、選手権では3回戦の壁を越えることができませんでした。

その悲願を達成したのが98回大会。同年夏のインターハイでは3試合連続、0-0のPK勝ちでベスト8入りを果たし、堅守が注目されていた徳島市立。選手権では初戦となる福島県代表・尚志高校との2回戦をまたも0-0でスコアレスドローに持ち込み、PK戦を制して勝ち上がります。続く3回戦の福岡県代表・筑陽高校との一戦も1-0と制し、部の悲願である選手権ベスト8を達成しました。

その後、準々決勝では静岡学園を相手に0-4と大敗しますが、県勢としては、前述の75回大会の徳島商業ベスト4以来23大会ぶりの3回戦突破です。

■徳島県が全国に誇る公立の雄

近年、上位まで勝ち上がる学校が部員数200人前後を要する私立の学校なのに対し、徳島市立は公立の進学校で部員は60人弱と少ない人数ながら少数精鋭で選手を鍛え上げ、同時に勉学にも励み高い進学率を誇る文武両道。その方針と確かな大会実績に、今では県外からも多くの選手がその門戸を叩くようになりました。

「中学時代に悔しい想いをした選手たちが、本気で全国を目指し、夢を取り戻す場所にしてほしい」と思いを語る河野博幸監督は、高校時代にインターハイ全国優勝を経験した徳島市立のOBです。 

徳島県高校サッカーの黄金期を知るOB監督は同時に「夢を持つ県内の中学生が本気で全国の上位を目指す場所にもなれれば」と思いを語ります。その言葉通り毎年チームの中心として、地元徳島の中体連出身の選手たちが複数人活躍しています。チームを率いたキャプテンの川上風雅選手もその一人。3年間を振り返り「入部前は正直不安もあったが県外出身のレベルの高い仲間と成長することができた。後輩から学んで技を盗んだこともあったほど。本気で全国を目指す県内の中学生たちが徳島市立を選んでくれたらうれしい」と話す彼がキャプテンマークを巻きチームを引っ張る姿は、多くの徳島県の中学生たちに勇気を与えたことでしょう。

今大会では県大会で惜しくも準優勝となりましたが、その後に行われたU-17日本高校サッカー選抜のトレーニングキャンプにはDF河合侑馬選手(2年生)と徳島県那賀川町出身のGK藤澤芭琉選手(2年生)の二人が招集されるなど、選手たちの成長も著しく、県内でインターハイが開催される来年度、先頭に立つ活躍を期待せずにはいられません。

■100回大会に向けて 復活の徳島商業

ライバルの想いも背負い記念の100回大会を戦う徳島商業ですが、75回大会の再現を期待する声も高まっています。今年、創部100周年を迎えた徳島商業の選手たちが身にまとうのが、100周年を記念してOBたちからプレゼントされた75回大会の復刻版ユニホームです。 

当時を知るサッカーファンは「あの時も7年ぶりで久々に出た時の快進撃だった」「あの時も守り勝ちで、キーパーが小柄でバネがあった」「10回出場ごとの節目に徳商は強い」など、ついつい今年の徳島商業の選手たちに当時のベスト4の代の姿を投影してしまいます。

※57回大会ベスト8(20回目の出場)、75回大会ベスト4(30回目の出場)

しかし、その期待やプレッシャーを力に変え戦ってきたのが今年の徳島商業高校です。右胸のエンブレムには100th anniversaryの文字。伝統の力が宿った復刻版ユニホームを着た試合は、いまだ負けなし、「徳島商業は伝統のある高校。他の高校とは、違うプライドがある。自分にとっては最後の全国大会で徳島県を代表するチームとして、全国にも徳島商業の名をもう一度とどろかせたい」というキャプテン増田太陽選手の言葉に迷いはありません。

※写真は徳島市立の元キャプテン・川上風雅選手

(取材・文:高校サッカー選手権民放43社/四国放送)
 

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