2025.6.15その22石川県輪島市 町野町第一仮設団地 集会所
住岡佑樹(編成局アナウンス部)
富山県高岡市出身の私にとって能登半島は、幼い頃から慣れ親しんだ地域で、方言もほとんど同じです。のとじま水族館にジンベエザメを見にいったり、野球部の遠征で能登地域の高校にお世話になったりと、沢山の思い出をくれた土地が、地震・豪雨で甚大な被害に遭いました。
私は発災当時、まさに報道フロアのマイクの前で避難を呼びかけていました。その後も担当番組で4度、地震と豪雨の取材にお邪魔しました。仕事をなくし、家をなくし、大切な人を亡くした方が、絶望するような自然の脅威の前に、なんとか立ちあがろうとする姿に胸を打たれてきました。ただ同時に、自分自身の無力感を自覚させられる取材でもありました。
能登のために何かできないかという思いがずっと心にあったので、今回よみひと知らずの活動に初めて参加させていただきました。
町野町には初めて伺いました。仮設住宅にお住まいのみなさんが「一緒に食事をしながら話を聞いてもらいたいから」と美味しいお料理を準備してくださっていて、大変な生活の中なのにもかかわらず、本当にありがたい気持ちでいっぱいでした。ご飯の後は、みんなで大きな声を出すレクリエーションに始まり、テレビ金沢チームが用意してくださったクイズや読み聞かせを行い、最後は“幸せなら手をたたこう”を一緒に歌いました。町野町のみなさんが笑顔で声を出し、耳を傾けてくださる様子が非常にありがたく、嬉しかったです。能登のみなさんの温かさ、強さを感じる時間でした。
ただ仮設住宅から少し移動すれば、倒壊したままの、あるいは土砂が流れ込んだままの家屋が残っていました。依然として復旧が追い付いていないこと、そして同じ能登でも、ほとんどが山間部であるという地形もあり、地域によってその度合いに差が生じている現状がありました。さらに、米作りなどの農業も、耕作地の再整備など課題が山積しているということを、住民の方が話してくださいました。暑い夏に耐え雪の深い冬を越える、我慢強い能登の方々が未だ厳しい状況に置かれていることに、やるせなさや悔しさを覚えました。
日々放送に携わっている身として、ニュースの移り変わりの速さも感じています。能登に関する報道も、時間が経つにつれ少なくなってきているように思います。ただその瞬間にも、能登の方々は戦っています。希望を紡ごうとしています。たとえ自分にできることは限られていたとしても、放送局員として私は能登の現状を見続け、伝え続けていきたいと思います。それが、発災当時の避難の呼びかけを担当した者としての責任であり、地元も近い私が果たすべき使命だと感じます。
鈴木綾華(報道局news every.)
「直接、笑顔を届けることができれば」
まもなく能登半島地震から1年半を迎える2025年6月15日、私たちはテレビ金沢の皆さんと一緒に、輪島市町野町の第一仮設住宅にお邪魔しました。放送や取材が目的ではなく、レクリエーションやお茶会を通した、仮設住宅の住民の皆さんとの心の交流のためです。
田植えや家の用事もある中、告知を聞いて集まってくださった約40名の方々。私たちが集会場に入ると「こんにちは!」とあたたかな笑顔で迎え入れてくださいました。
楽しんだのは、アナウンサーによる発声練習や、柚餅子・波の花・えがらまんじゅうなど・・・能登の魅力を題材にしたクイズ、そして絵本「はるさんと1000本のさくら」の読み聞かせ。ふと参加している皆さんの表情をみると、笑顔の方もいれば、涙を流されている方もいらっしゃいました。
町野町は能登半島地震だけでなく、震災から約9か月後に発生した、奥能登豪雨の被害も大きく受けた地域です。私たちが訪れた際、豪雨災害から約9か月が経とうとしていましたが、まだ土砂が入ったままの民家や、大きく崩れた家屋がいくつも残っていました。
「しばらく笑顔になれなかった」「今でも眠れないときがある」
「寂しい、どうしてもマイナスなことを考えてしまう」
お話をする中で、笑顔だった住民の皆さんから、そんな言葉がこぼれるときもありました。
能登に滞在できたのは1日だけでしたが、その「寂しさ」をやわらげることはできないか。「また来てね」と言ってくれたその気持ちに、行く以外でも応えることができたら。そんな気持ちが、東京へ帰ってきても、ずっと心にあります。
「テレビ」という仕事を通じて、心のつながりを、たとえ遠くからでも繋げ続けたい。寂しくなったとき、その寂しさに寄り添える・不安な気持ちを取り除ける存在でいたい。それがもし私たちの努力でかなうのであれば、自分にできる努力をいくらでもしようと思いました。
どんなに強い人でも、一人で頑張れることにはきっと限界があるはずです。震災から1年半、復興の半ばを、優しさを持って進んでいる人たちがいます。誰かがつらくなったとき、画面の向こうで心の支えになれるよう、日々の放送を丁寧に重ねていきたいと思います。
- 参加者
- 鈴江奈々・石川みなみ・住岡佑樹・瀧口麻衣(日本テレビ)
大河内陽太・村松朋哉(テレビ金沢) ほか



































