#012 北方領土問題、進展に“暗雲”も…

2019.01.21

1月22日に行われる日本とロシアの首脳会談ですが
焦点の「北方領土問題」に進展は見られるのでしょうか。

「色丹島で進む“ロシア化”、モスクワでは“異例”の抗議」

これは2018年12月に撮影された北方領土、
色丹島の映像です。
島のいたる所に建物が並びホテルなども建っています。

色丹島は北方四島の人が暮らしている島としては一番小さく
人口は2800人程です。

1981年の色丹島の映像を見てみてると
古びた建物や船があるだけの質素な町の様子がうかがえます。

しかしその後2007年から
北方領土の開発をロシア政府が本格的に始めているのです。

その象徴の一つとされているのがこの水産加工場。

工場長
「色丹島の水産資源はとても豊かです!」

加工場ではおよそ350人が働いていて
その中にはロシア本土からの
出稼ぎ労働者も少なくないといいます。

実はロシア政府は北方領土への移住などを促すため
最低賃金を高く設定しているんです。

色丹島と国後島の平均月給は
ロシア全土の月給の倍以上にもなるといいます。

さらに今後、学校やスポーツ施設なども建設する予定だといい
ロシアによる島の開発が着実に進められているんです。

一方で、色丹島など北方領土に住むロシア人からは反発も。

2018年11月「日ソ共同宣言を基礎に
平和条約交渉を加速させる」との合意が発表。
日ソ共同宣言には色丹島と歯舞群島が
日本に引き渡されると明記してあるからです。

島民
「島が引き渡されるなんて想像できない。
ここではあらゆることが
(ロシアによって)発展している」

反発は遠く離れたロシアの首都モスクワでも。

デモ参加者
「(北方領土を含む)クリル諸島は我々の領土だ!」

20日に行われたデモでは氷点下にも関わらず
500人以上が参加。

首都モスクワでのデモは極めて異例なことだといいます。

そんな中「クリルの代わりにプーチンを引き渡そう」と
驚きの内容が書かれたプラカードもありました。

ロシア政府の北方領土への対応の不満などから
プーチン政権を批判する声が表面化。

かつて80%以上あった支持率は
2018年末には66%まで落ちています。

こうした世論を意識してか
ロシア側は2018年11月の日露首脳会談以降
北方領土は「第二次世界大戦の結果によって
合法的にロシア領になった」という
歴史認識を繰り返し強調しています。

ここで改めて整理します。

北海道の北東部に位置する北方領土は
国後島、択捉島、歯舞群島、色丹島の4つの島から成ります。
かつて日本人が住んでいましたが
第二次世界大戦で日本が降伏したあとに
ロシアが不法に占領したと日本側は主張しています。



いま行われている返還交渉のキーワードとなるのが
1956年の「日ソ共同宣言」です。
そこには「平和条約を締結したあと
歯舞と色丹の2島を引き渡す」と定められているんです。

安倍総理とプーチン大統領は2018年11月に
この「日ソ共同宣言」を基礎として平和条約交渉を
加速させることで合意しました。

しかし両者が考えているシナリオには違いがあります。

日本はこれまで4島すべての返還を求めてきました。

しかし日本の複数の政府関係者は今回の最終的な着地点を
「2島プラスアルファ」と見ていてます。
どういうことかと言いますと
歯舞・色丹の2島の返還にプラスして
国後、択捉でも日本とロシアが一緒に
経済開発を進めることなどで合意したい考えです。

一方、ロシア側の主張は…。

プーチン大統領
「(日ソ共同宣言には)何に基づいて引き渡すのか
“島々の主権はどこにあるのかは書かれていない”」

ラブロフ外相
「(北方領土を含む)クリル諸島は“ロシアの領土”であり
“島の主権は交渉対象ではない”」

支持率低下などを意識してか
ロシア側は「主権はロシアにある」と強調。
日本には簡単に妥協しない姿勢を
国内に示す狙いがあるとみられます。

仮に2島を引き渡すとなった場合も
あくまでも「善意」によるもの。
2島はロシア領として
ロシアの法律が適用されるといったことが考えられます。

25回目の首脳会談で進展は見られるのでしょうか。