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迫る「海洋放出」・・・20歳 漁師「福島の海」担う思い

2023.03.13



今回取材したのは
櫻井日比希さん、20歳。
2年前から福島県相馬市の海で漁師をしています。

この日とっていたのは、今がまさに旬の「白魚(しらうお)」。


日比希さんが働くのは相馬市の松川浦漁港。

○櫻井
「震災当時の漁港もかなり大きな影響がでたと聞いていますけど」

○福島県の漁師 櫻井日比希さん(20)
「もういろいろな船が打ち上げられて
 なんもなくなって漁港の形がないみたいになっていたんで」

    
2011年3月11日。
巨大な津波に襲われた、松川浦漁港。


当時8歳だった日比希さんは
学校にいたため無事でしたが・・・

○櫻井
「ご家族は?」
○福島県の漁師 櫻井日比希さん(20)
「おじいちゃんが…流されちゃって
 言い方悪いですけど、
 見つかった時は誰だか分からなかったというか。
 本当におじいちゃんなのかなって」


漁師だった祖父・芳男(よしお)さんが
津波にのまれ亡くなりました。

そして、福島第一原発の事故で、漁業は一変。
漁に出られない日々が続いたのです。

あれから12年。

○櫻井
「漁港としての盛り上がりはどうですか」

○福島県の漁師 櫻井日比希さん(20)
「戻ってますね、徐々に。みんな頑張ってるんで」


福島県では
その日とれた魚、全種類の放射性物質を検査。

国よりはるかに厳しい
基準をもうけ、安全性を確認しています。

2023年現在、
水揚げ量は震災前の2割ほどですが
活気は少しずつ、戻っているといいます。

しかし、今、新たに直面しているのが、
福島第一原発の処理水の「海洋放出」です。



○櫻井
「こちらずらーっと並んでいるタンク
これすべて処理水ということなんです。
このタンクがまもなく一杯となってしまいます。」

原発から発生する「汚染水」を浄化した「処理水」。
現在、保管するタンクの96%が
すでに埋まっている状態で
2023年秋ごろには満杯になる見込みだといいます。

そこで
国は夏頃にも海に放出を開始すると
みられているのです。

では「処理水」とは
どのようなものなのでしょうか。

○櫻井
「見た目には本当に真水とうか
 まったくの濁りもなく水という印象ですね」


アルプスと呼ばれる特殊な装置によって
ほとんどの放射性物質が取り除かれている処理水。

ただ、この中で
「トリチウム」という放射性物質だけは
とり除くことができません。


そのため、トリチウム濃度を
WHO=世界保健機関が定めている
飲料水の国際基準から
さらに、7分1程度まで海水で薄め
放出する予定だといいます。


そもそも、トリチウムは原発を稼働すると必ず発生するもの。
国内や海外の原発からは
これまでも、そして今も、放出されていますが
人体や生物への影響は報告されていないといいます。

しかし、つきまとう風評被害への懸念。

そこで始めたのが・・・



○東京電力ALPS処理水プログラム部 山中和夫氏
「こちらが処理水を添加して飼育している
ヒラメとアワビです」

東京電力はヒラメやアワビを実際の処理水で飼育。
影響がでないか、試験しているのです。

餌をあげてみると。

○櫻井
「うわっうわっうわ!すごく元気ですね」

東京電力によると、飼育試験の結果
トリチウムが魚の体内に濃縮されることは
無かったといいます。

○東京電力ALPS処理水プログラム部 山中和夫氏
「今一番地元の方が心配しているのが風評被害
このヒラメの元気な姿と一緒にデータを
お見せして少しずつご理解いただこうと」

迫る海洋放出。

岸田総理は2023年3月11日
「関係者の理解なしに(放出など)いかなる処分も行わない」と強調。

ただ、福島県漁連は
「国や東電の国民への説明が不十分」として
 風評被害への懸念から反対の立場を示しています。



そんな福島の海を担っていく若い世代の思いは。

○櫻井
「海洋放出の話、いろんな意見がでてますけども、
 福島の漁業に影響が出ているということに関しては
 どう受け止めていますか?」

○福島県の漁師 櫻井日比希さん(20)
「自分が賛成反対って言っても
どうにもならない部分があるんで
それにちゃんと自分たちが目をそらさないで
その問題にしっかりみんなで話し合って
つらいことはあると思うんですけど、
頑張っていきたいと思ってますね」

○櫻井
「福島の海の安全性を将来にむけて
 自分たちが背負っていく、担ってくんだ
 という意識もあったりしますか?」

○福島県の漁師 櫻井日比希さん(20)
「ありますね」
○櫻井
「あぁそう!」
○福島県の漁師 櫻井日比希さん(20)
「その今の大人たち、自分の先輩方がやってきたことを
自分ら若い世代がもっといい方向にできるように
頑張っていきたいって思っていますね」


こう、明るく向き合える
最大の理由、それが・・・。


○櫻井
「あ…!すごいね
これひびきさんがとった白魚?」

○福島県の漁師 櫻井日比希さん(20)
「そうです!」

○櫻井
「こんなでかいの?こんな太いの?いただきます!」
・・・うん!すごいふっくらしてるんですね
味も塩味も含めてすっごく絶妙、おいしいですね」

○福島県の漁師 櫻井日比希さん(20)
「おいしいんですよ~」

○福島県の漁師 櫻井日比希さん(20)
「震災もあって周りから見たら
『(福島の)魚嫌だ』みたいな人も
いるかもしれないですけど、
実際食べてみて、安全なところもあって
むしろそれはめちゃくちゃおいしいんで
もうなんていうんですかね・・・
海、最高、なんすよ」

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