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G7広島サミット…被爆者の祖父と語り継ぐ孫

2023.05.15

○櫻井
「広島が市内一望できますね」

5月19日から、
はじめて被爆地で行われるG7広島サミット。

○櫻井
「原爆ドームを上から望む場所に
 やってきました。
 ここから600m上空で
 原爆が爆発しました」


78年前、広島に落とされた1発の原子爆弾。


まさにこの一帯を、
G7各国首脳が訪れるとみられます。
「核なき世界」実現に向けて、
歩みを進められるのか。

被爆者の思いは…
市内に住む被爆者の山下拓治さん93歳と
孫の裕子さん14歳。

当時15歳だった拓治さんは、
学徒動員されていた工場で被爆。
幸いけがはありませんでしたが、
母と妹・弟は、全身に大やけどを負いました。

○被爆者の山下拓治さん(93)
「ここでずっと手当てしていたんです」
○櫻井
「看病していたのは、この部屋ですか?」
○被爆者の山下拓治さん(93)
「ええ、ここです」
○櫻井
「看病というのはどういった手当てを?」
○被爆者の山下拓治さん(93)
「あの頃は薬がなかったですからね。
 食用油をガーゼに塗って貼って、
 それを貼り替える。
 肉と一緒にガーゼについて
 はがれるんですよね。
 癒えたと思ったら、
 はぐときに肉と一緒にはがれる」
 『痛い痛い』と言うのが耳に残ってますよ。
 あのはぐときのむごさというか…」

妹の睦子さんは終戦の日に、
弟の宏司さんはその6日後に亡くなりました。

○櫻井
「お2人の供養は、どうされたんですか?」
○被爆者の山下拓治さん(93)
「供養ですか。火葬は自らの手で…」
○櫻井
「拓治さんが?」
○被爆者の山下拓治さん(93)
「ええ、やるしかないですね」
○櫻井
「しかない…」

妹・弟を棺に入れて、
担いで裏山にある火葬場へ運んだという拓治さん。

○妹・弟を自身の手で火葬した
被爆者の山下拓治さん(93)
「このくらいを掘って、深さが…。
 野焼きみたいな、最後は」
 
自らの手で穴を掘り、2人を火葬しました。

焼け終わるまで見続ける必要があり、
その時の光景が、
今でも目に焼き付いているといいます。

○妹・弟を自身の手で火葬した
 被爆者の山下拓治さん(93)
「縮むんですよね、身が。
 そういうのを見たらやりたくなかったし、
 焼け残りの死体を犬がくわえて逃げたりね。
 …むごいことばかりですよ」

実は、拓治さんはこの壮絶な体験を
去年まで77年間、
子供や孫の誰にも話してきませんでした。

口を開くきっかけとなったのが、
孫の裕子さんでした。

○拓治さんの孫・山下裕子さん(14)
「ジュニアライターの活動で
 おじいちゃんの話を聞きたい
 活動として聞いて新聞で書き残していきたい
 というのがあって」

地元新聞社のジュニアライターとして、
平和活動の取材をしている裕子さん。

その一環で、去年、拓治さんに
「被爆体験を取材したい」とお願いしたところ、
初めて明かされたといいます。

○拓治さんの孫・山下裕子さん(14)
「自分の手で火葬したというのを聞いて…
 衝撃的でした」

裕子さんがまとめた取材ノートには。
「大やけど。誰かわからないくらいひどかった、
 言葉にならなかった」
「肉親を自分の手で焼く」

○櫻井
「お話を伺ったおじいさんの体験と、
 普段とのギャップは感じるところはありました?」
○拓治さんの孫・山下裕子さん(14)
「普段はニコニコしていて優しくて
 実際に原爆の話を聞いたときはすごく真剣で、
 時には悲しそうな顔もするし
 そういう表情を見たことがなかったので、
 つらかったんだなって」

この証言を、裕子さんは記事にまとめました。
(中国新聞2022年8月1日掲載)

○拓治さんの孫・山下裕子さん(14)
「記事になったことで証言が残せていけるから、
 安心。ほっとした」
「自分がやらないと、
 人任せにしていたら誰もやってくれない」

拓治さんが裕子さんに体験を明かした理由、
それは平和への思いでした。

○櫻井
「同じ経験はしてほしくない?」
○妹・弟を自身の手で火葬した
 被爆者の山下拓治さん(93)
「それはありますね。あってほしくないですね。
 生きとる人間全員がそうじゃないんですか…。
 身近におる孫が幸せになってくれれば、
 全世界の人がそういう風になるでしょう」
「断片的にしか話せませんけど、
 それをつなぎ合わせて
 聞いてくださる人が意思を理解してくれれば
 100分の1でも少しでも、
 やっぱり伝えたいですね」

被爆地・広島から「核なき世界」へ。
拓治さんのG7サミットへの思いは。

○妹・弟を自身の手で火葬した
 被爆者の山下拓治さん(93)
「最近のG7サミットを見ると、
 お祭りに利用されているだけという感じ」
 イベントも大切でしょうけど、
 心底から今後生きていく人間が
 平和に暮らせるような世の中にしてほしいですね」

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