震災から12年…原発内部を取材「廃炉」の今
○櫻井
「近いですね、1号機から4号機、それぞれ状況は違いますね。
見た目にもあきらかに違います」
東京電力、福島第一原子力発電所。
2011年3月。
原子炉建屋3機が水素爆発を起こした、
世界最悪レベルの原発事故。
あれから12年。
「廃炉」を目指す原発は
今、どのような状況なのでしょうか。
○東京電力廃炉コミュニケーションセンター 松尾桂介副所長
「こちらは12年前の津波の時の影響で、
こうやって傷が残っているというような状況です」
○櫻井
「相当な高さまで傷あとがありますね」
○東京電力廃炉コミュニケーションセンター 松尾桂介副所長
「5mくらいの高さまで津波によって浸水した形になります」
いまなお残る爪痕。
そして、向かったのは1号機。
○櫻井
「こちら1号機のすぐ近くまでやってきました。
本当に目の前といった距離感ですけども、
服装はいわば軽装ともいえるような格好でくることができました」
この場所の線量は毎時70マイクロシーベルトほど。
胸のX線検査1回分ほどの線量にあたります。
除染などで放射線量が大きく下がり、
今では構内の96%のエリアが
軽装で作業できるようになったといいます。
しかし。
○櫻井
「建屋の中は未だ線量は高い?」
○東京電力廃炉コミュニケーションセンター 松尾桂介副所長
「1階の壁の向こう側、1時間あたり1000マイクロシーベルトを
超えるくらいの値にはなっております」
○櫻井
「こちらと建屋では本当に大きな差があるということですね」
さらに建屋中心部では
致死量をはるかに超える線量の場所もあるといいます。
その原因が、炉心が冷却できなくなったことで、
核燃料が溶け落ち、堆積した「燃料デブリ」。
廃炉の最難関とされてきましたが
2023年度後半に
初めて2号機で取り出しが開始される予定なのです。
大きな事故は免れた5号機へ。
2号機と同型のため、
取り出し計画を立てる上で参考にされているといいます。
○東京電力廃炉コミュニケーションセンター 松尾桂介副所長
「格納容器の中へ案内します」
○櫻井「格納容器の中…」
原子炉建屋の中心部、格納容器。
さらに奥へ進むと。
○櫻井「低い・・・」
1号機から3号機で
核燃料が溶け落ちた、まさにその場所。
○櫻井
「この上に核燃料があって、
下に燃料デブリがあるってことですよね」
○東京電力廃炉コミュニケーションセンター 松尾桂介副所長
「ちょうど櫻井さんのいるところは
もう溶け落ちて脱落しているというのが確認されている状況です」
○櫻井「ここがもう?」

提供:東京電力
実際の2号機内部をとらえた映像では
私がいた場所は熱で溶け落ち穴だらけ。
いたるところにこびりついているのが
燃料デブリなどと見られています。
そしてこれらを取り出すため、
計画されているのが。
○東京電力廃炉コミュニケーションセンター 松尾桂介副所長
「レールがご覧いただけます。
こちらが格納容器の外側と内側をつなぐ貫通孔になっています。
ロボットアームと呼ばれるデブリの取り出しの装置を
貫通孔から通して炉心の下に挿入していくというかたちになります」
元々、定期点検で使用されていた貫通孔やレールに
ロボットアームを通し、
燃料デブリを取り出すのだといいます。
これは、2023年3月に提供された
燃料デブリ取り出しの訓練の様子。
提供:IRID
実は撤去作業は
2021年に始まる予定でしたが
技術的な問題などにより2度延期。
作業は難航しているのです。
提供:東京電力
国や東京電力は長くても2051年までに
廃炉作業を終えるとしていますが、
取り出さないといけない
燃料デブリの推定量は、
1号機から3号機まであわせて約880トン。
○櫻井
「燃料デブリを取り出すというのは
相当難しい作業になっていくんですかね」
○東京電力廃炉コミュニケーションセンター 松尾桂介副所長
「まずは数グラムほど耳かき一杯分くらいの量を
数回にわけて取り出していくというような計画でいます」
○櫻井「数グラムなんですね」
今回はあくまでも
成分などを分析するための試験的なもので
本格的に撤去するための
具体的な計画はまだ、決まっていないのです。
○櫻井
「どうなんですかね、その12年の中で
そこまでたどり着いたのは早いのか
それともやっとといった感じなのか」
○東京電力廃炉コミュニケーションセンター 松尾桂介副所長
「やはり、放射線量も高くてですね、
どの号機もなかなか格納容器の中がどうなってるのか
情報がちょっとずつしか得られていない。
まさに廃炉の道はこれからです。
安全確保というのが最優先になりますが
しっかり取り組んでいきたいと思います。」