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戦後80年…藤城清治“特攻で戦死の親友へ”影絵で願う平和

2025.12.15

鹿児島県にある知覧特攻平和会館。

太平洋戦争中、
特攻で亡くなった人たちの遺品などが
展示されています。

○櫻井
「藤城先生、よろしくお願いします」

この場所で、11月にお会いしたのは、
影絵作家の藤城清治さん101歳。

○櫻井
「こちらの絵ですよね。大きいですね」

ロビーに飾られた1枚の絵。
藤城さんが“集大成”と語る作品です。

桜並木の上で
太陽に向かって飛んでいく特攻機。
特攻で亡くなった親友を描いたものでした。

○影絵作家
 藤城清治さん(101)
「20歳そこそこで亡くなった人の分まで
 何か訴えていかないといけない」

日本を代表する影絵作家の藤城清治さん。

美しい色使いで描くメルヘンの世界。
作品に登場する「こびと」は、
「生きるよろこび」を表していて、
藤城さんの分身でもあるといいます。

都内のアトリエを訪ねると…。

○藤城さんの娘・亜季さん
「きのう作った」
○櫻井
「きのう!?
 そんな最新作なんですか!?」

数日で描き上げたという最新作も…。

いま大阪で個展も開催していて、
101歳になっても現役で
多くの作品を作り続けています。
(※2025年10月22日~
       2026年1月4日)

小さい頃から、
絵を描くのが好きだった藤城さん。

○櫻井
「影絵との出会いは?」
○影絵作家
 藤城清治さん(101)
「(慶応義塾)普通部から予科に入って
 真珠湾で大戦(太平洋戦争)になった」

84年前の12月8日に起きた、真珠湾攻撃。

その後、藤城さんは
慶応大学2年のときに、
海軍予備学生として入隊。
本土決戦に備えた訓練を行っていたなかで
終戦を迎えました。

○影絵作家
 藤城清治さん(101)
「戦後、絵の具がなかなか
(手に)入りにくい」
○櫻井
「画材が(いらないから?)」
○影絵作家
 藤城清治さん(101)
「光と影があれば
 絵の具なんかいらないだろうなと」

そうして影絵作家に…。
「喜びや美しさを伝えたい」と
「こびと」や動物たちが登場する
メルヘンの世界を描いてきました。

しかし80歳を過ぎたころ、
作品に変化が…。

座って笛を吹く「こびと」。
その場所は…原爆ドーム。
メルヘンとは正反対の
「戦争」を描き始めたのです。

きっかけは娘・亜季さんと一緒に
展覧会で訪れた、広島での出来事でした。

○藤城さんの娘・亜季さん
「ホテルに泊まったら
 目の前に原爆ドームが見えた。
 それが気になっていた。
『亜季ね、朝行ったら、
 雨が降っていたんだけど
 僕が描こうとすると、
 太陽が出たんだ』って。
『何か言われている気がする。
 気になってしょうがない』と」

○影絵作家
 藤城清治さん(101)
「かわいらしいものだけ描いていても
 ダメじゃないかなと。
 いろんな悲しみや苦しみや
 それを描き出さなきゃ
 本当の絵描きではないんじゃないかなと」

そして藤城さんが、92歳の時に描いたのが
自身の“集大成”と語る
『平和の世界へ』と名付けられた
この作品。

特攻で亡くなった親友へ捧げたものでした。

○影絵作家
 藤城清治さん(101)
「舟津一郎という、一番仲がいい」

慶応大学の同級生・舟津一郎さん。
「ふじしろ」と「ふなつ」で
席も隣同士だった2人でしたが、
戦争が始まると…。

○影絵作家
 藤城清治さん(101)
「(舟津さんは)
 海軍予備学生第十四期になって
 行ってしまった。
 僕は1年おくれで、次の年に行った」

戦後、舟津さんが
特攻で亡くなったことを知った藤城さん。
最後を知る手がかりを求めて
ここ知覧特攻平和会館を訪れました。

そのとき見つけたのは、
特攻隊員の情報が載っているデータベース。

○櫻井
「舟津一郎さん、ああ…」

舟津さんの名前を見つけると、
涙が止まらなかったといいます。

舟津さんは、ここ鹿児島から
500キロの爆弾をつんで出撃。
沖縄で敵艦に特攻したとみられています。

写真がない、
文字だけの舟津さんの戦死報告。
ただ今回…。

○櫻井
「スタッフが、
 舟津さんの遺影を(見つけました)」
○影絵作家
 藤城清治さん(101)
「なつかしい」
○櫻井
「なつかしいですか」
○影絵作家
 藤城清治さん(101)
「一番元気が良くて
 僕も(舟津さんに)くっついて。
 飛行機が好きだった。
 特攻隊に当然行っているだろうと。
 クラスでも先頭に立つ人だった。
 本人は喜んで行ったんだろうけど
 ああいう人が亡くなっている
 なんとも言えない…」

太陽に向かって飛び立つ特攻機。
隣には、見守るように
藤城さんの分身でもある
「こびと」の姿がありました。

作品に寄せたメッセージには…。
「いろんな想いが
 からだの中にわきでてきて、
 どうしてもなにか描きたくなり
 ぼくのすべてをかけて、
 平和の祈りを描いた」

○影絵作家
 藤城清治さん(101)
「僕も舟津くんの分まで
 頑張らなくちゃって」

100歳を超えてもなお、
描く手を止めない藤城さん。

○影絵作家
 藤城清治さん(101)
「今の時代は世界全体が
 平和とは言えない時代になっている。
 戦争が終わって80年たっているのに。
 僕の生きている間に
(平和に)ならなきゃ。
 絵描きが言っても
 しょうがないと思うけど、
 心の中で本当に思うよね。
 時代は変わっていくんだから
(平和に)そうなってほしいと
 つくづく思う」

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