戦後80年…台湾 頼清徳総統“単独取材”「対中関係」と「日本への期待」
戦後80年となる2025年
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「いまを、戦前にさせない」を
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5月18日。
櫻井キャスターは、身分証の確認など
セキュリティーチェックをうけて、
総統府の中へ…。

○櫻井
「緊張感ありますね。
中は、床の雰囲気も歴史を感じる」
この場所で、
海外のテレビメディアの取材に
初めて応じたのが…。
○櫻井
「はじめまして櫻井翔です」
○台湾
頼清徳 総統(65)
「前々から存じています。
あなたは台湾でとても人気です」
19日で就任1年となる頼清徳総統です。
中国や日本との関係などについて
1時間半にわたって聞きました。
○櫻井
「就任1年を迎えますが
心境はいかがでしょうか?」
○台湾
頼清徳 総統(65)
「2024年5月20日、
総統への就任を宣言した際には、
台湾をより強くすることを志しました。
私としては全力を尽くし、
市民を団結させ、引き続き、
より強い台湾を構築していきたい、
それが今の私の心境です」

元々は医師だった頼清徳氏。
政治家に転身後、
台南市長や副総統などを経て
2024年、
第16代総統に就任しました。
就任後、中国との関係について、
「現状維持」を強調してきた頼氏。

一方、中国は。
○中国
習近平 国家主席
「台湾は中国の神聖なる領土だ」
中国と台湾は一つの中国だとして
統一を目指しています。

頼総統は、ことし3月、
スパイ活動が激しさを
増しているなどと主張して
初めて中国を「敵対勢力」だと非難しました。

すると、その翌月、
中国は台湾周辺で
2日連続で大規模な軍事演習を実施。
○中国軍
「台湾独立などの分裂勢力を
断固殲滅する」
台湾と中国の緊張は高まっています。

中台関係について
日本政府としては
1つの中国の考え方は
理解し尊重するが、
平和的に解決されるべきという立場です。
○櫻井
「第二次世界大戦が終了してから
80年がたとうとしています。
そのなか、台湾と中国で
衝突があるのではないか
という声も聞かれますけれども
起こりうると考えられますか?」
○台湾
頼清徳 総統(65)
「国際社会は、中国がアメリカに
取って代わることを企て、
ルールに基づく、世界の秩序を
変更しようとしていることを
よく認識しています。
台湾の併合は、その第一歩に過ぎません」
一方、中国は
アメリカに取って代わる気はない、
と強調してきましたが…。

○台湾
頼 清徳 総統(65)
「万が一、台湾が侵略された場合、
世界のサプライチェーンは
遮断されることになります。
そのため、何としてでも
台湾海峡における衝突を
避けなければなりません」

アメリカとの関係については。

○櫻井
「バイデン前大統領は
『台湾を防衛する』と
はっきりと明言されていました。
現時点でトランプ大統領は
はっきりとは明言されていませんが
台湾にもしものこと有事が起こった場合
防衛してくれると考えていますか?」
○台湾
頼清徳 総統(65)
「バイデン前大統領とトランプ大統領が
記者に答えた内容はそれぞれ違いますが、
バイデン政権もトランプ政権も
台湾とは、
持続的に関係強化をしています。
変わっていません。
つまり台米の協力関係は絶えず、
持続的に強化されています」

○櫻井
「衝突・戦争を避けるために、
どのようなことが考えられますか?
どのような備え・準備を
されていますか?」
○台湾
頼清徳 総統(65)
「我々は第二次世界大戦から
様々な教訓を得ることが
出来ると思います。
すなわち、台湾は
防衛力強化による抑止効果で
平和を実現させたいということです。
戦争に備えることで、戦争を回避させます。
戦争を起こさせない、平和を追い求めます」

戦争を防ぐために
台湾の防衛力を高める
決意を強調しました。
その防衛力を高めるためとして
いま台湾が推進している
“ある兵器”の開発について尋ねると…。

○櫻井
「最近、台湾でも無人兵器の導入を
急いでいるように見えますが
もしそうであるなら
なぜ導入を急いでいるのでしょうか?」
○台湾
頼清徳 総統(65)
「目的は2つあります。
第一に安全保障のための必要性
第二に産業の発展のための必要性です」

無人兵器とは、
遠隔操作や自動操縦で運用する
兵器のことで、
ウクライナでは
無人航空機=ドローンが多用され
大きな戦果をあげたことで
注目されました。
一方で台湾が力を入れるのは、
空だけではありません。

私たちが
台湾南部・高雄市にある港を訪れると…。
○坂井英人 NNN台湾・高雄市
「見えました。
あれが台湾初の
軍用の無人船です」
まるで
SF映画に出てくるような外見。
”海のドローン”こと無人船です。
時速およそ65キロ以上で航行でき、
魚雷や爆薬も搭載できるといいます。

開発したのは
台湾軍の軍艦や潜水艦なども
てがける造船会社。
中国が台湾海峡を渡って
侵攻してくることも想定し、
海のドローンの開発を進めているのです。

無人船の製造方法にも
中国との関係が影響していました。
○台湾国際造船 会長
「無人船の衛星システムと
船外機以外すべて台湾製です。
中国製品は使っていません。
もし中国製品を使ったら、
万が一台湾と中国で
紛争などが起きたとき、
部品が手に入らなくなるからです」
中国と台湾が
戦争状態に陥った場合に備え
中国製の部品を使うことなく製造した、
と強調します。

○櫻井
「ドローンは
ロシア、ウクライナの場合は
空中の無人機、
空中のドローンかと思いますが
台湾の場合は海中、
海の中のドローンの重要性も
高まってきますか?」
○台湾
頼清徳 総統(65)
「台湾は大陸反攻の考えはありません。
いかなる国を侵略する意図もありません。
台湾のドローンは自らを守るためです。
この場を通じて、ドローン産業について、
台湾は日本との間での
協力を進めていきたいと
希望を表明したいと思います。
もし台湾と日本が共に
協力していくことができれば、
台湾海峡の平和と安定、
インド太平洋地域の安全及び
日本と台湾の産業の発展に
寄与することになるでしょう」

1972年、
日本は日中国交正常化に伴い
台湾との外交関係を断絶しましたが、
その後も民間を中心に
活発な交流を続けてきました。
その日本との関係について、
頼清徳総統は
「家族のような存在だ」と
絆をアピールしました。

○櫻井
「これからの日本と台湾の交流、
どのように発展していきたいと
考えていらっしゃいますか?」
○台湾
頼清徳 総統(65)
「台湾は日本と縁が深いですが、
長年にわたって、台湾と日本は
地震が起きるたびに、
互いを助け合ったことで、
家族のような絆になりました。
ただの近隣ではありません。
これはかけがえのないものです。
今後、台湾と日本は
兄弟のような関係であってほしいです。
台湾の人民と日本の国民が
家族のような関係であってほしいです。
台湾有事は日本有事です。
日本有事は台湾有事です。
お互いのことを寄り添い、助け合って、
様々な試練や困難に立ち向かうのです。
そうすることで、より良い未来を
追い求めることができます」
そして災害対応だけではなく、
戦争を避けるためにも
日本などとの協力が必要だと訴えました。

○台湾
頼清徳 総統(65)
「先ほど言ったとおり、
中国による台湾併合は
第一歩に過ぎません。
最終的な目的はルールに基づく
国際秩序を変えることです。
そのため中国の脅威は
国際的な問題なのです。
アメリカ、日本、および
民主主義陣営とともに、
共同で中国による
戦争の発動を阻止することを
強く望んでいます。
予防は治療よりも重要です」