戦後80年「今はもう戦前」久石譲…音楽で伝える戦争
都内のコンサートホール。

○櫻井
「戦後80年のタイミングで
平和・祈りというところで
どういうメッセージを込めたのか
すごく楽しみにしていました」

満員となった会場に、
大きな拍手のなか登壇した久石譲さん。

日本を代表する作曲家の久石さん。
これまでスタジオジブリ作品など、
数々の映画音楽などを作曲。
海外のオーケストラとの共演も多い
世界で活躍する音楽家です。

この日、行われたのは、
『戦後80年』をテーマにしたスペシャルコンサート。
なぜ今回、久石さんは
このテーマでコンサートを開いたのか。

○櫻井
「一体感のあるコンサートに
非常に心が震えました」
○久石 譲さん(74)
「今回は『反戦』がテーマじゃないんですよ」

久石さんが訴えたかったのは、『今をどう生きるか』。
○久石 譲さん(74)
「こんないろんなことが起こってるよ、世界はって」
○櫻井
「観客の皆さんに問いかけるコンサートを
目指していたんですか?」
○久石 譲さん(74)
「もうそのぐらい大変な時代なんじゃない?と。
だから自分自身をしっかり持っていないと。
『我々はどう生きるか』
『前を向いてきちんと生きよう』と、
そういうメッセージです」

プログラムの1つが
アメリカのスティーブ・ライヒが
作曲した『砂漠の音楽』。
○久石 譲さん(74)
「砂漠は、アラビアとかの砂漠ではなくて
アメリカの原爆の実験場の砂漠の意味なんですね。
原爆に対するアンチが
基本モチーフに入っています」

そして私が強く引き込まれたのが、
久石さんが作曲した
『The End of the World』です。
この曲が作られるきっかけとなったのが…。
○久石 譲さん(74)
「ワールド・トレード・センターに飛行機が突入した。
そのあとニューヨークに行って
跡地を見て衝撃を受けて
9.11から触発されて作った曲です」

2001年に起きたアメリカ同時多発テロでした。
このテロ事件で、
世界の秩序や価値観が崩れると感じた久石さん。
○久石 譲さん(74)
「飛行機が突入したときから、直感的に感じたのは
21世紀って、それぞれの違いというか
『仲良くやっていこうよ』みたいなものから
『違い違い』、みんなセパレート(分断)していく」
○櫻井
「あの頃に、すでに感じられていたんですね」
○久石 譲さん(74)
「絶対なっていくんだなって。
グローバルという言葉もなくなるだろうなって」
○櫻井
「自分たちの…」
『The End of the World』は
そこから生まれる
『不安と混沌』をイメージした作品だといいます。
この曲のなかで、
特に気になったところがありました。
○櫻井
「2度爆音のような音が鳴る」
曲の最終盤…。

♪「(打楽器の音)」
○櫻井
「ある人は、広島長崎を連想するでしょうし
ある人は、(9.11の標的)ツインタワーを連想すると思いますが、
久石さんご自身としては
あの2度の音はどういったことを表現したのですか?」
○久石 譲さん(74)
「自分も、こうだからこうした、はないんです。
平和なきれいな曲で、
終わってはいけないというのがあって。
不安と危機と隣り合わせの何かが必要だったんです。
音楽的にどうしてもやりたかった。
でも結果的に
いろんなイメージをみなさんが感じられたら
どれも正解じゃないかなと思います」

『違い』を認められず、いま世界で進む『分断』。

この状況に、久石さんは
“ある危機感”を抱いていました。

○久石 譲さん(74)
「戦後じゃないんですよね。
僕からすると、今はもう戦前に見えます」


○櫻井
「ガザでやせ細った小さな子供を
思い浮かべるときもあれば
ウクライナで爆撃された建物を
思い浮かべる時もあるんですか?」
○久石 譲さん(74)
「もちろん。
日本だっていつそういうふうになるか
分からないくらい、世界は緊迫している」

そのなかで期待を寄せるのが、『音楽』がもつ力。

○久石 譲さん(74)
「各国のコンサートをやりながら
宗教も言語も全部違う人に
自分の音楽を受け入れてもらえるだろうかという
不安でずっとやっています。
それで聴いて、喜んでもらったことの方が多い。
音楽をいいと言ってもらっている限りは
どこかに共通点を見いだせるんじゃないかなと
希望的観測はあります」