#262 病院の約7割が“赤字経営” 医療の将来は?
「67.2%」
何の数字かといいますと
2024年度、赤字だった病院の割合です。

国立・私立などを含む
すべての病院で半数以上が
赤字になっているんです。
赤字の割合が最も高かったのは
入院や手術ができ、
地域医療を支える「一般病院」でした。
病院の赤字で
「私たちの医療」は将来どうなるのか。

私が取材したのは
“赤字経営”が続く
都内の板橋中央総合病院。

○板橋中央総合病院
加藤良太朗院長
「当院で一番大きい手術室になります」
加藤院長が案内してくれたのは、手術室。
○板橋中央総合病院
加藤良太朗院長
「奥にあるのが『ダビンチ』という
ロボット手術の機械」
○櫻井
「あれが『ダビンチ』ですか」

遠隔操作で手術ができる
手術支援ロボット「ダビンチ」。
需要が高まる一方で、
このロボットを使うには
コストがかかるといいます。

○板橋中央総合病院
加藤良太朗院長
「鉗子(かんし)といって
長いマジックハンド
みたいなものを付けるが
鉗子のコストが
2026年に8%にあがると決まってる
診療報酬で数%あがるのはうれしいが
8%まではあがらないと思うので
診療報酬の改定だけでは
コストの元をとるのは難しい」
○櫻井
「手術支援ロボットを使いません
というのも考えにくい?」
○板橋中央総合病院
加藤良太朗院長
「安全に手術ができるのは分かっているし
やらなくなると
患者が来ないかもしれないし
手術支援ロボットがない病院は
経営が悪化して
最終的にはなくなるデータもあるので
やめることはできない」

続いて案内してくれたのは、
手術道具を滅菌する部屋。

○板橋中央総合病院
加藤良太朗院長
「滅菌された状態で買えるものもあるが
コストがかかる
物価が下がると
滅菌された状態で買えるので
病院に滅菌室が必要なくなるので
スタッフも必要なくなるが
どうしても人件費と
その滅菌されたものを買う
コストのバランスが難しい」
さらに。

○板橋中央総合病院
齋藤宏小児科主任部長
「看護師さんの休憩スペースが
これしかなくて
なかなか経営が難しいと
こういうところに回せる
お金もない」
○櫻井
「本来一番休んでもらいたい
みなさんが
なかなかスペースがとれない」
板橋中央総合病院で
特に力をいれているのが、
24時間体制の救急外来。
○板橋中央総合病院
救急総合診療科
安本有佑診療部長
「日中と夜間の患者数が
あまり変わらないが
夜間の方がスタッフの数が
限られてしまうので
夜間の方がかなり忙しくなる」
救急外来ではコストをおさえるため、
我慢していることが。

○板橋中央総合病院
救急総合診療科
安本有佑診療部長
「ホワイトボード管理して
患者情報を把握しているが
手書きでやって消してを
繰り返している
電子パネルで患者情報を一括で
把握している病院もある」

患者に直接影響がない
機器の更新は
どうしても後回しに
なってしまうといいます。
○櫻井
「赤字の要因はどんなことが
考えられる?」

○板橋中央総合病院
加藤良太朗院長
「光熱費もあがっているし
患者の食事も自前で
ご飯を炊いて提供しているが
コメの値段があがってる
人件費も給与だけではなく
人材を確保するために紹介業者に
お金を払わなければいけない
人件費を払っている割には
実際のスタッフの数は
思うように増えない」

○板橋中央総合病院
加藤良太朗院長
「子どもでも妊婦さんでも安心して
とれるCTがあるがやっぱり高い
そういう技術があるのに
日本の医療が成長しないのは
黒字にならないから
そういう機械が買えないのは
もったいないと思う」
かつてと比べて増大するコスト。

小児科など
コストがかかる診療科を
やめてしまう病院も
少なくないといいます。

○櫻井
「なぜコストのかかる診療科を
今なお続けている?」
○板橋中央総合病院
加藤良太朗院長
「2023年、日本中で小児の
病床が足りなくなった時期があった
そういったことが
いつ起こるか分からないので
赤字覚悟で地域のために
採算があわないんじゃないかという
日々問題には接するが
いざという時のために
少し余分に病床を確保している」

○櫻井
「高齢化が進む中で私たちが
受けられる医療について
不安を感じる人も
少なくないという点は?」
○板橋中央総合病院
加藤良太朗院長
「医療従事者は責任感持って
努力している人が多い
ただそれがどうやったら
頑張り続けられるのかという
話になると
おそらくコストだけではない
今の赤字を補填するだけでなく
本当は黒字を生んで
新しい医療に投資できる
余裕がないといけない」