• キキコミ

#262 病院の約7割が“赤字経営” 医療の将来は?

2025.12.01


「67.2%」

何の数字かといいますと
2024年度、赤字だった病院の割合です。

国立・私立などを含む
すべての病院で半数以上が
赤字になっているんです。

赤字の割合が最も高かったのは
入院や手術ができ、
地域医療を支える「一般病院」でした。

病院の赤字で
「私たちの医療」は将来どうなるのか。

私が取材したのは
“赤字経営”が続く
都内の板橋中央総合病院。

○板橋中央総合病院
    加藤良太朗院長
「当院で一番大きい手術室になります」

加藤院長が案内してくれたのは、手術室。

○板橋中央総合病院
    加藤良太朗院長
「奥にあるのが『ダビンチ』という
 ロボット手術の機械」
○櫻井
「あれが『ダビンチ』ですか」

遠隔操作で手術ができる
手術支援ロボット「ダビンチ」。

需要が高まる一方で、
このロボットを使うには
コストがかかるといいます。

○板橋中央総合病院
    加藤良太朗院長
「鉗子(かんし)といって
 長いマジックハンド
 みたいなものを付けるが
 鉗子のコストが
 2026年に8%にあがると決まってる
 診療報酬で数%あがるのはうれしいが
 8%まではあがらないと思うので
 診療報酬の改定だけでは
 コストの元をとるのは難しい」
○櫻井
「手術支援ロボットを使いません
 というのも考えにくい?」
○板橋中央総合病院
    加藤良太朗院長
「安全に手術ができるのは分かっているし
 やらなくなると
 患者が来ないかもしれないし
 手術支援ロボットがない病院は
 経営が悪化して
 最終的にはなくなるデータもあるので
 やめることはできない」

続いて案内してくれたのは、
手術道具を滅菌する部屋。

○板橋中央総合病院
    加藤良太朗院長
「滅菌された状態で買えるものもあるが
 コストがかかる
 物価が下がると
 滅菌された状態で買えるので
 病院に滅菌室が必要なくなるので
 スタッフも必要なくなるが
 どうしても人件費と
 その滅菌されたものを買う
 コストのバランスが難しい」

さらに。

○板橋中央総合病院
    齋藤宏小児科主任部長
「看護師さんの休憩スペースが
 これしかなくて
 なかなか経営が難しいと
 こういうところに回せる
 お金もない」
○櫻井
「本来一番休んでもらいたい
 みなさんが
 なかなかスペースがとれない」

板橋中央総合病院で
特に力をいれているのが、
24時間体制の救急外来。

○板橋中央総合病院
    救急総合診療科
    安本有佑診療部長
「日中と夜間の患者数が
 あまり変わらないが
 夜間の方がスタッフの数が
 限られてしまうので
 夜間の方がかなり忙しくなる」

救急外来ではコストをおさえるため、
我慢していることが。

○板橋中央総合病院
    救急総合診療科
    安本有佑診療部長
「ホワイトボード管理して
 患者情報を把握しているが
 手書きでやって消してを
 繰り返している
 電子パネルで患者情報を一括で
 把握している病院もある」

患者に直接影響がない
機器の更新は
どうしても後回しに
なってしまうといいます。

○櫻井
「赤字の要因はどんなことが
 考えられる?」

○板橋中央総合病院
 加藤良太朗院長
「光熱費もあがっているし
 患者の食事も自前で
 ご飯を炊いて提供しているが
 コメの値段があがってる
 人件費も給与だけではなく
 人材を確保するために紹介業者に
 お金を払わなければいけない
 人件費を払っている割には
 実際のスタッフの数は
 思うように増えない」

○板橋中央総合病院
 加藤良太朗院長
「子どもでも妊婦さんでも安心して
 とれるCTがあるがやっぱり高い
 そういう技術があるのに
 日本の医療が成長しないのは
 黒字にならないから
 そういう機械が買えないのは
 もったいないと思う」

かつてと比べて増大するコスト。

小児科など
コストがかかる診療科を
やめてしまう病院も
少なくないといいます。

○櫻井
「なぜコストのかかる診療科を
 今なお続けている?」
○板橋中央総合病院
 加藤良太朗院長
「2023年、日本中で小児の
 病床が足りなくなった時期があった
 そういったことが
 いつ起こるか分からないので
 赤字覚悟で地域のために
 採算があわないんじゃないかという
 日々問題には接するが
 いざという時のために
 少し余分に病床を確保している」

○櫻井
「高齢化が進む中で私たちが
 受けられる医療について
 不安を感じる人も
 少なくないという点は?」
○板橋中央総合病院
 加藤良太朗院長
「医療従事者は責任感持って
 努力している人が多い
 ただそれがどうやったら
 頑張り続けられるのかという
 話になると
 おそらくコストだけではない
 今の赤字を補填するだけでなく
 本当は黒字を生んで
 新しい医療に投資できる
 余裕がないといけない」


 

こちらの記事もオススメ!