#161 台湾前総統、訪中が持つ意味は?
中国・上海の空港で
飛行機のタラップを降りる人物。
台湾の馬英九前総統です。
実は、総統経験者がこうして
中国を訪れるのは初めてのことで
その動向が注目されています。

馬前総統は
墓参りと学生同士の交流が目的だとしましたが
実は、いまの総統である蔡英文総統が
あさってからアメリカや中米を訪問することに
対抗したものだという見方があるんです。

台湾では主に、
蔡総統の「民主進歩党=民進党」と
馬前総統の「中国国民党=国民党」が
政権を争っています。
民進党はかつて台湾独立を掲げ
いまは“現状維持を強調”していて
アメリカとの関係を重視しています。
一方、国民党は“中国との融和路線”を掲げ
中国との関係改善を訴える立場です。
中国と台湾の関係に詳しい小笠原欣幸教授は
台湾統一のために総統選挙で国民党の候補に
勝ってほしい中国としては
今回の馬前総統の訪中は緊密さをアピールする
いいタイミングだと話しています。
さらに、蔡総統の訪米のタイミングに
あわせたとみられる大きな動きがもう一つ。

これまで台湾と外交関係があったホンジュラスと
中国の外相がきのう北京で会談し
外交関係を樹立する文書に署名しました。
それに先がけてホンジュラスは
「中国政府は唯一の合法的な政府」だとして
台湾との断交を発表したんです。

これで蔡総統が就任してからの7年で
22か国中9か国が台湾と断交。
残すはこちらの13か国となりました。
台湾から離れ、
中国と国交を樹立する動きが続いているんです。
小笠原教授は
台湾の教育支援などで助かっている国も多いが
中国が台湾以上の金銭的な支援を
提案してくる可能性はある。
たとえばパラグアイは
野党が「台湾との関係を見直すべき」と主張していて
政権交代が起これば
ホンジュラスに続くかもしれないといいます。

3月26日防衛大学校の卒業式に出席した岸田総理は
訓示で中国を念頭に
「こんにちのウクライナは
あすの東アジアかもしれない」と述べました。
台湾情勢は日本にとっても
けっしてひとごとではないので、
今後も注視していく必要がありそうです。