#098 新型コロナワクチン実現した「mRNA」
2021年のノーベル賞
受賞者の発表がはじまりました。
初日の「生理学・医学賞」は
アメリカの研究者2人が受賞したんですが
実は今回、世界的に注目されていた
候補がいました。
それがこちらの
新型コロナワクチンを接種している女性。
ドイツのバイオ医薬品会社「ビオンテック」の
上級副社長 カタリン・カリコ氏です。
出身地のハンガリーでは
壁画になるほどの有名人なんですが
カリコ氏は1年足らずで
ワクチンができるきっかけとなった
遺伝物質「mRNA」を使った
技術開発に貢献したんです。
そもそも新型コロナウイルスは
表面に「スパイク」と呼ばれる突起があり
ここを足がかりに細胞に感染します。
ファイザーやモデルナのワクチンは
「mRNA」を使って体の中に
「毒性のない」ウイルスの
突起部分だけを作ります。
するとそれをウイルスと勘違いした
免疫細胞が「抗体」を作成。
実際に新型コロナウイルスが
入ってきても、抗体が攻撃し
重症化などを防ぐ効果が
期待できるというものです。
ただ、人工的に作られた「mRNA」を
体に入れると、異物と判断されて
炎症が起き、排除されてしまうため
理屈ではできるけど
実用化は難しいとされていました。
ところがカリコ氏らは
構成する物質の1つ
青で示した「ウリジン」を
赤で示した「シュードウリジン」に
置き換えることで
炎症反応が抑えられることを突き止め
2005年に発表。
実用化の土台をつくったのです。
その発見までは苦労の連続でした。
カリコ氏は36年前に夫と娘の3人で
ハンガリーからアメリカに渡りました。
当時はお金の持ち出しが厳しく
娘のぬいぐるみに
わずかなお金を入れて
出国したということです。
そしてアメリカの大学で
研究に没頭しましたが
最初は評価されず
助成金の申請を企業から
断られたこともあったそうです。
カリコ氏は
「実験は失敗しても何かを私たちに教えてくれる。
世界的な大流行に打ち勝つための
ワクチン開発に活用されるとは
想像していなかった」と話しています。
ワクチンに詳しい保富センター長は
「この方法はどんなウイルスか
わかれば世界で一斉に
ワクチン開発を始めることができる。
スピーディーに大量に作れるようになった」
としています。
今は、がんのワクチンの研究も進められています。
そして、脊髄損傷などの治療薬を開発している
東京医科歯科大学の位髙教授は
「カリコ先生の研究をきっかけにして
mRNAが本当に薬になるんだと
人類に気づかせてくれた」と話しています。