#008“三陸鉄道社員の記憶”
吉田さんのスマホに残っていた、あの日の写真。

○吉田さん
「これが当時の大船渡の事務所の玄関」
三陸鉄道の事務所も、踏切も浸水しいつも列車が走る光景は一変しました。
○吉田さん
「前あった建物がない。前あった道路がない。あれ?ここってどこだったんだろう」
この頃、運転士の小向さんは
○小向さん
「3月11日14時46分だったんですけど、
久慈駅から宮古駅の運転をしてまして、家に帰ったのが次の日ですね」
そんな小向さんが見せてくれたのは今、奥さんとかわす何気ないやりとり。
○妻
『到着しました』
○小向さん
『はい!ただいま』
○妻
『今日灯油の日でした』
○小向さん
『はい!出しておきました』
○妻
『少々お待ち下さる?』
○小向さん
『はい!お待ちしております』
○小向さん
「なんて日常はありがたいか、ですね」

三陸鉄道社員たちのスマホの中。
そこには受け継がれるバトンが!
東日本大震災で大きな被害を受けた三陸鉄道。
2019年3月、全線復活したのですが・・・。
○小向さん
「ああ、もうまたかっていう」
○吉田さん
「また試練が襲ってきた」
この7か月後、台風19号が直撃。
今なお、一部の区間でバスでの振替輸送を余儀なくされています。
若手の運転士のスマホには、この被害のつめあとが
○田母神さん
「今、線路がどういう風になっているかなっていうのを見ながら歩いたんですけど」
震災当時の先輩たちの気持ちが少しだけ分かった気がしたといいます
○田母神さん
「ショックというか、悲しかったですね」
22歳の前川さんが運転士になろうと心に決めたきっかけは・・・
○前川さん
「震災があって線路が流されたといっても宮古駅と田老駅の間、
無料で走らせたりという話を高校生の時に聞いて」

防潮堤のそばや山間を走る三陸鉄道。
開けた景色を楽しめるこの橋は、台風の被害でいまも通れないままです。
前川さんは、ここで、このアナウンスができる日を心待ちにしています。
○前川さん
「長さ176メートル、高さ30メートルの大沢橋梁でございます。
こちらでは景色をお楽しみいただくため少しの間停車いたします」
運転士候補生の山田さんが大事にしているのは
三陸鉄道を励まそうと、ほかの鉄道会社が、別の路線で列車を走らせた時の写真。
○山田さん
「まさか自社の車両が他社を走ると思っていなかったですし」
また、全線が復活する日まで、あと少し。

○煙山さん
「一人前の運転士になるのが今の夢ですね」
○金澤さん
「子供とか手を振ってくれる人もいるんでけっこう上がるっていう感じです」
○田母神さん
「初めて線路を列車で運転して渡った時の
感動をまたもう一回味わえているんですよ、今。
それ以下のマイナスはないですからね。一度そういうことが起こってしまえば」