網を使わずに針と糸で魚と勝負する一本釣り。
竿釣りはもちろん、手で糸を巻き上げる"手釣り"もこの中に入る。
しかし、大きな網を仕掛け一気に引き上げたほうが、魚を獲れる確率が高いのではないだろうか?
答えは簡単。
一本釣りで獲った魚は、網で取る魚より傷つく事が少なく、価値が高いから。
巨大マグロを狙う漁師たちも、少しでも高い価値で取引するため、1対1の勝負に挑むのだった。

◆フカセ漁
海面近くを回遊するシイラや中層のカツオにエサを取られずに、
確実にマグロのいる深さで仕掛けを展開するために使われる漁法。
その仕掛けは、ナイロンの布で包まれたソフトボール大の団子状のもの。

・仕掛け
団子状になった布の中身は、ムロアジやイカをブツ切りにした撒き餌、
そして針に刺した刺し餌。
さらに袋の中で仕掛けがからむのを防止するため、
飼料用のフスマで隙間を埋めている。
そしてその布の口を針金でとめれば完成である。
これを自分の狙うタナ(深さ)まで落としたら、
そこで思いっきりサオを立てる。
すると布のクチをとめていた針金がはずれ、
中身の撒き餌と刺し餌が一気に放出されるのである。
これによって、狙った魚をピンポイントで釣ることができるのである。
このとき注意が必要なのは、できる限り仕掛けが立つように船を操作すること。
仕掛けが流れていると正確な深さで放出することができないためである。



◆曳き釣り
糸を流し、船を走らせながら釣る、曳き釣りと呼ばれる漁法。
どの漁でもそうだが、魚の習性に合わせた釣り方ではないと、
いくらいい道具をそろえても釣ることは出来ない。
逆に、魚の事を考えて試行錯誤すれば・・・

・疑似餌
 本物の餌ではなく、つくりものの餌で
 魚をだまして釣るための道具。
 あくまでも、食いつく魚からは生きた
 餌のように見せなければならない。
 重要なのは光り方や色、
 形が餌のように見えること。
 そして、動きがリアルに
 泳いでいるように見えること。
 だが、動きは疑似餌だけでは
 うまくつくり出す事が出来ない・・・
 一番カツオが釣れる疑似餌は
 どんな色でどんな形なのか?
 ある漁師曰く、「一番釣れた疑似餌が
 一番釣れる疑似餌」なのだとか。
 つまり、答えはないのだ。


・仕掛け
疑似餌に魚のような動きを与えるため、疑似餌の手前にはこんな道具がついている。
形も違えば動きも違うこの道具、それも、魚の習性を考えた知恵の結晶になっていた。

 (ヒコーキ)
カツオは浅い水面から、
少し潜ったところの層に群れをつくる。
その水面近くにいるカツオを狙う道具が
このヒコーキ。
横に張り出た棒が、水面の抵抗を受け、
飛び跳ねる。
この動きが、カツオが好む餌のように
疑似餌を動かしている。
また、バシャバシャと水の音が立ち、
あたかも鳥がカツオの餌である
小魚を取っているように聞こえるため、
カツオの群れを呼び起こすことが出来る。


 (潜行板)
水面を狙うヒコーキに対して、水中の層を狙うのが潜行板。
水中に潜った潜行板は船に引っ張られると左右にゆらゆらと揺れ、疑似餌が泳いでいるような動きを加える。
海の状況によっては、必ずしも潜行板が魚のような動きをしてくれるとは限らない。
そんな時は応急処置として
潜行板の後ろにタコ糸を数本結ぶ。
これだけで、左右の揺れがうまく
調節できるという。


・針
船から伸びた糸の最先端部分。
どんなにいい船でも、どんなにいい仕掛けでも、針が悪いと、魚に逃げられてしまう。
いかりのような形の釣り針、よく見ると少し加工されている。
"返し"といわれるこの部分、何故わざわざ潰されているのだろうか?
これは、針から魚をすばやくはずすための工夫。
全部返しがついていると、なかなかはずれないのに加え、強引にとると魚を傷つけてしまう。
ただし、全部潰してしまうと、今度はかかった魚に逃げられやすくなる。
微妙なさじ加減、これも、長い経験で培った漁師たちの技。



◆生き餌漁
文字通り、生きた魚を餌にして魚をとる漁法。
カンパチなどのように、生きている魚しか食べないような種類の魚を釣り上げるのには、この漁法が適している。
餌となるのはアジやイワシといった、
群を作って移動する青モノといわれる小魚が多い。

・糸・針
糸にはゴムクッションをつけておく。
カンパチのように大物を捕らえるには、
獲物の重さで糸が伸びたときの強度を増すからだ。
その糸の先につける針はグレバリという針がよい。




◆疑似餌漁
アジやタイなどを疑似餌と針、糸だけで一気に釣り上げるのに、
「胴づき仕掛け」というのを使う。
その中でも主流なしかけは「サビキ」というもの。
胴になる糸から複数の針は、ハリスを介してつけてある。

・サビキ針
サビキ針についている疑似餌にも、様々な色がある。
白、ピンク、緑などカラフルなものもあるが、
ある漁師は「経験上ではアジやイワシだと白が狙い目だな」といっていた。
スルメイカは光っているものに反応する習性がある。
そこで、ハリスに光を反射しやすい管がついており、これにスルメイカが寄ってくる仕掛けになっている。
糸を巻きつけるドラムは電動モーター式で、手軽に引き上げられるようになっている。このドラムには、約250mまでの糸を巻きつけることができる。