「つぶつぶを つるつるにする 技とコツ」

年末は雪が降る日が多く毎日のように積もっていったけれど、2011年に入ってからは晴れの日が続いている。積もった雪は日に日に薄くなり、地面が顔を出す面積も増えていき、野うさぎのモノだと思っていた足跡もいつの間にか消えていた。足音も新雪を踏みしめるザクッザクッという音から、パキンパキンと溶けて凍った雪を踏みしめる音に変わった。村のお正月は静かに過ぎていた。

そして、このお正月に初めての体験がまた一つ増えた。それは年越しライブでやった餅つき。近所で餅つきをしているのを見た事はあるがやった事はなく、つく人と餅を捏ねる人の絶妙なタイミングにただ感心していた。傍から見ていると単純な作業に見えるけど、実際にやってみると、最初の段階で違った。ホカホカに蒸かした餅米を臼に入れると、まず杵でそれをすり潰す。臼の周りをまるで踊っているかのようにリズムに合わせてすり潰していく。それから、ダイナミックに杵を振ってお米をつくのだ。明雄さんにコツを教わり挑戦しても、どうしても腰が入らず、手の力だけで振ってしまう。簡単に餅をついているように見えていたけれど、その簡単に餅をつく事が難しい。しかも、臼の中心を狙って杵を振り込まなきゃいけないのになかなか中心に当たらない。すぐにバテて明雄さんに交代。さらに、捏ね方にも決まりがある。捏ねる時は、餅を少しずつまんべんなく捏ねる。多過ぎても、返しが偏り過ぎてもいい餅にならない。豪快に杵を振る明雄さんに何度も注意された。




出来ないながらも初めての餅つきに少し感動しながら楽しんでいると、お米のツブツブした表面があっという間につるつるした綺麗な餅に変わっていた。今まで食べていた機械が作った餅とは違って弾力もすごく、どこまでも伸びる。こうして出来上がった餅は丸めていくのだが、この丸め方もコツがあって、明雄さんは本当に綺麗な丸いお餅をつくっていた。

昔から伝統で伝わって来た物には必ず一緒に昔から伝わるコツがあって、それを次世代の人間が受け継ぐ。僕は明雄さんから受け継いだ。昔から新年になると必ず餅つきをしていたという明雄さんもそうやって受け継いだ。僕はひよっこで終止教えてもらってばかりだったけれど、すごく大切な物を受け継いだ。新年の抱負でも書いた通り、次からはもっと上手く出来るようにがんばろっと!

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