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 産経新聞 2016年10月16日付掲載
〈「虐殺」写真に裏付けなし〉記事について

 2015年10月放送のNNNドキュメント「南京事件 兵士たちの遺言」について、産経新聞が報じた<「虐殺」写真に裏付けなし>という記事の内容は、番組が放送した事実と大きく異なっていました。このため日本テレビは書面において産経新聞に対して厳重に抗議するとともに、ここに主旨を掲載します。


 まず<「虐殺」写真に裏付けなし>という大見出しは事実ではありません。
番組で使用した写真は、大勢の人が積み重なるように倒れているものです。産経新聞の記事は、類似写真を1988年に掲載した別の全国紙紙面を引用、掲載しました。産経新聞の記事は、1988年の記事が「大虐殺の写真と報道した」と論じ、その記事を番組の内容と混同し、批判しました。しかし番組は写真について「防寒着姿で倒れている多くの人々」と説明したうえで、「実際の南京の揚子江岸から見える山並みと写真の背景の山の形状が似ていることを示した」と報じたものであり、虐殺写真と断定して放送はしておりません。にもかかわらず産経新聞の記事は「写真がそれを裏付けている-そんな印象を与えて終わった」と結論づけ、写真が虐殺を裏付けているという産経新聞・原川貴郎記者の「印象」から「虐殺写真」という言葉を独自に導き、大見出しに掲げました。55分の番組の終盤の一場面を抽出して無関係な他社報道を引用し、「印象」をもとに大見出しで批判し、いかにも放送全体に問題があるかのように書かれた記事は、不適切と言わざるをえません。
 そもそも、番組の主たる構成は、南京戦に参戦した兵士たち31人の日記など、戦時中の「一次史料」に記載された「捕虜の銃殺」について、裏付け取材をした上で制作したものです。
これに対し、産経新聞の記事に一次史料は一切登場せず、事件から50年以上経過して出版された記録の引用や、70年後に出版された著作物の引用に基づいています。産経新聞の記事は揚子江岸での射殺場面について「暴れる捕虜にやむなく発砲」と見出しを付けて断定しました。内容はいわゆる「自衛発砲説」というもので「捕虜を解放しようとしたところ抵抗されたので射殺した」という証言です。これは1961年になって旧日本軍の責任者が語ったものであり、産経新聞の記事は2007年出版の「再現 南京戦」という著作物から引用しています。番組でも同じ証言の存在を具体的に紹介した上で、1937年当時の一次史料にはそのような記載がないことを伝えています。しかし産経新聞の記事はその放送事実に一言も触れておりません。
 なお、8月30日付けの原川記者の事前の質問に対し、当社としては誠実に答えたつもりです。「自衛発砲説」について放送で触れたことや、南京事件については日本政府の見解を含め、さまざまな議論があると放送したことなど、骨格をなす要素について、それぞれ丁寧に答えました。ところが産経新聞の記事には、写真についての回答以外一切掲載されていません。
 以上のように産経新聞の記事は客観性を著しく欠く恣意的なものであり、当社は厳重に抗議します。

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