有島 武郎  『家族と暮らした札幌の家』

(2003/2/26放送)


   
美しい雪景色が広がる、札幌芸術の森公園
その片隅に、大正期の文学を代表する作家、有島武郎の家があります。


   
札幌農学校を卒業し、アメリカに留学。
帰国後、母校の教授をしながら、雑誌「白樺」に小説を書いていた、有島武郎。

彼が家族のためにこの家を建てたのは、大正二年、三十五歳のときのことです。


   
   
サンルームに憩う、冬の午後。
ふわりとした日差しを浴びながら、庭で遊ぶ子供たちの声に、幸せを感じるひととき。
台所からは、夕食を用意する妻の、あたたかいスープの匂いが漂ってきます。


   
けれど、そんな穏やかな日々は、長くは続きませんでした。
翌年、妻が結核に倒れ、一家で東京へ移ることになったのです。


 
 
「前途は遠い。そして暗い。 然し恐れてはならぬ。恐れない者の前に道は開ける」


 
 
幼い子の手を引き、この家をあとにする武郎。
しんと静まり返った屋根に、初雪が舞い降りた、夜でした。


有島 武郎  『家族と暮らした札幌の家』

(2003/2/26放送)

今回の放送のBGM♪
 曲  「Lonely Girls」
 唄  Suede

次回(2003年3月5日)の『心に残る家』は
ジョン ロックフェラー 『妻と最後の日々を暮らした家』をお送りします。
お楽しみに。