吉川 英治  『梅に生命を感じた家』

(2003/3/26放送)


   
梅の香りがほのかに漂う、青梅・吉野の里。
ここに、「宮本武蔵」の小説で知られる作家、吉川英治の家があります。


   
   
昭和19年3月。
日ごとに激しくなる戦火を逃れるため、家族を連れ、この家に疎開してきた英治。
門を潜ると、枝いっぱいにふくらんだ、紅く、可憐な花が出迎えてくれました。


   
   
彼は思います。着るものも、食べるものさえ満足にはないけれど、どんなに辛く苦しくとも、春はかならず訪れる。
「これからという生命(いのち)を持って、おれは在るのだ」(『宮本武蔵』より)


     
そして、机に向かうのです。
妻が用意してくれた、火鉢の温かさや、縁側を走る子供たちの、元気な足音を感じながら。
明日へのちからを、ペンの先に込めて、今日、生きることに疲れた人々を勇気づけるために。


     
 
 
 
武蔵や秀吉や、清盛。
英治の描いた主人公たちは、今も、私たちの心を励まし続けています。
春を告げる、この家から。


吉川 英治  『梅に生命を感じた家』

(2003/3/26放送)

今回の放送のBGM♪
 「Good Morning Beautiful」Steve Holy

次回(2003年4月16日)の『心に残る家』は
ジョン・F・ケネディ 『命を見つめた家』をお送りします。
お楽しみに。