ニーチェ  『「生」と「愛」を見つめた 夏の家』

(2003/7/23放送)


 
サンモリッツの山々を臨む、スイスの避暑地・シルスマリア。
六月でも雪の降ることがあるという、この町に、哲学者・ニーチェの家があります。


   
   
彼が毎年、ここで夏を過ごすようになったのは、38歳のとき。
生涯をともに歩もうと決めた女性に、結婚を断られ、深く傷ついていた頃のことです。


   
   
愛していたのは、自分だけ。
愛されていると思っていたのは、自分だけ…。

窓の向こうにりんと立つ、山の頂きを眺めながら、
ともすれば自暴自棄になってしまう心を、見つめなおすニーチェ。
生きること。人を愛すること。
その喜びも虚しさも、すべて受け入れるために。


   
そして、書きあげた哲学書『ツァラトゥストラ』は、彼自身への、心の言葉となりました。
「君の愛と希望を投げ捨てるな。君の魂のなかの英雄を投げ捨てるな」
                            (「ツァラトゥストラ」より)


 
 
ニーチェにとっての英雄。
それは、この自然が教えてくれた「命」、そのものだったのかもしれません。


ニーチェ  『「生」と「愛」を見つめた 夏の家』

(2003/7/23放送)

今回の放送のBGM♪
「埴生の宿」ジョーン サザーランド

次回(2003年7月30日)の『心に残る家』は
ロートレック 『絵の道を志した家 ボスク城』をお送りします。
お楽しみに。