水が嫌い!?甘い
トマト
第836回 2006年6月18日
今では1年中食べられる野菜
トマト
。実は、
夏が一番美味しい季節
なのです。そのトマトですが、ここ数年大きな変化が見られます。
小ぶりで甘いフルーツトマト
が登場し、
値段が高い、味の濃いトマト
も見受けられるようになりました。そこで今回は、そのトマトの変化に科学の目で迫りました。
まずは矢野さんが、収穫期を迎えたトマト畑を訪ねました。すると驚いたことに、
こんなに暑い季節なのにもかかわらず、トマトはハウスの中で育てられていた
のです。いったいなぜなのでしょう?
実は、
トマトは雨に降られると病害虫やカビなどがついてしまう
ので、それを防ぐ為にわざわざハウスで作られていたのです。そして更に驚いたことには、
体長2センチもあるハチがハウスの中をたくさん飛んでいました
。実は、このハチは、偶然ハウスにいるのではなくて、
農家の方がわざわざ飼っている
というのです。一体、何のためでしょう?
そこで、そのハチをよく観察してみると、
トマトの花に停まったあと花を激しく揺らして、花粉を取り出していた
のです。実は、トマトの花は下向きに咲いていて、花を揺らすとおしべについている花粉が落ちてきます。その時に、花の真ん中にあるめしべの柱頭に花粉がついて、受粉するようになっているのです。
実は、
トマトの原産地は南米アンデスの標高2000〜3000mあたり
。このあたりは虫が殆どいず、しかも風の強い地域なので、トマトの花は下向きに咲き、風が吹いて揺れるだけで受粉する仕組みになっている
風媒花
なのです。
しかし、日本では雨を避けるためにハウスで栽培しているため、風が吹きません。そこで、わざわざ
クロマルハナバチ
という、花粉を集めるハチを使って、花を揺らし受粉させていたのです。
トマトは、風が吹くと花が揺れて受粉する風媒花。
しかし日本では、ハウスで栽培しているため、ハチを使って受粉させているのだ!
女性や子供に人気の、甘い
フルーツトマト
。矢野さんが日本一甘いフルーツトマトを求めて、高知県を訪れました。
すると驚いたことに、
フルーツトマトは、我々が日頃食べているトマトと同じ種子から育てられる
というのです。なぜ同じ種子なのに、味や大きさが違うのでしょうか?
その秘密は、トマトの根元を見ると分かりました。フルーツトマトの根元をみると、なんと
土がカラカラに乾燥している
のです。さらに、
葉も枯れています
。実は、
フルーツトマトは極力水を与えずに育てられていた
のです。
トマトの原産地のアンデスは、雨の少ない乾燥地帯の為、葉がカラカラに枯れています。その状態で育ったトマトの原種は、小さくて甘いのです。つまりフルーツトマトは、
トマトの原産地と同じような状況で育てることで甘くしていた
のです。
トマトが嫌いな人は、あの
ヌルヌルしたゼリーと種の部分
が苦手なのだそうです。しかし、
なぜトマトにはあの独特のゼリーがあるのでしょうか?
実は、その理由は動物たちが知っているというのです。
そこで、目がテン!恒例動物実験。200個のトマトを、ゼリーとそれ以外の皮に分けて、動物達に与えてみました。すると、ニホンザルや雑食のブタ、ゾウガメまでも、ゼリーの方に真っ先にやってきたのです。一体、なぜゼリーの方を選んだのでしょう?
そこで、ゼリーの成分を分析してみると、なんと
うま味成分であるグルタミン酸が多く検出された
のです。一方、皮の部分も他の野菜に比べるとグルタミン酸は多く含まれているのですが、特にゼリーの方には2倍以上も含まれていました。
さらに、ゼリーに包まれている種子とゼリーを取り除いた種子とで発芽実験を行うと、なんと
ゼリーに包まれていた種子は発芽しなかった
のです。つまり、ゼリーには発芽抑制効果もあったのです。
実はトマトの種子は、うま味成分を含んだゼリーに包まれることで動物達に食べてもらい、さらに動物の体内でゼリーは消化されフンとともに種子だけが排泄されることで、生き残ろうとしていたと考えられているのです。
トマトのゼリーには、うま味成分のグルタミン酸が多く含まれており、さらに途中で種子が発芽しないよう止める役目もあるのだ!