放送内容

第1395回
2017.10.08
バイオロギング の科学
[Part2・後編]
水中の動物

 動物たちにカメラや行動記録計を取り付けその生態を探る研究・バイオロギング!今回のターゲットは…その生態がほとんど分かっていない魚類最大のジンベエザメ。
 どうしてこんなに大きいのか?かごしま水族館と長崎大学の合同プロジェクト水族館のジンベエザメを放流するにあたり、小型カメラや行動記録計を取り付け、生態の謎に迫ります!

決死の回収作業

 ユウユウを放流して4日後。装置の回収にあたる、かごしま水族館のリーダを務める土田さん。そして急遽、長崎大学の河邊玲先生も長崎から鹿児島まで大学の練習船で迎えに来てくれました!
 装置が浮上するのは明朝4時。それまでは、放流地点の近くで待機することに。しかし位置情報が示した装置の浮上場所は、放流地点から直線距離で107キロも離れた所。実は、ユウユウは黒潮の流れに乗って種子島の北まで移動していたんです。

 さらに、位置情報が出たのは1号機のみ。2号機が行方不明だと言うんです。とりあえず、1号機の浮上ポイントを目指し出航することに!2つの装置の切り離しは同時刻…1号機の浮上ポイントの近くに、2号機も浮いている可能性が。ところが、この日、太平洋上に大型の台風15号が発生。早くしなければ海が時化て回収困難に!4時間後、ようやく1号機の浮上ポイント近くへ。より正確な位置を把握するために、装置が発する電波をアンテナで受信して探します。すると遂に海に浮かぶ2号機を発見し回収に成功!

 残る1号機の捜索を開始すると…1号機が示す方位に混乱の兆しが!方向転換して2号機の回収ポイントまで戻ってみましたが、1号機の発する電波は断続的で、受信するのも困難な状況に。そこで、目視で1号機を探すことに。とはいえそこは、何の目印もない大海原…本当に見つかるのかと思っていたら何やらゴミ溜めのようなものを発見!しかしそこには、装置らしきものは見当たりません。
 実はこの一帯は、2つの潮の流れがぶつかる「潮目」。そのため、海を漂う紛らわしいゴミが集まり捜索を一層困難にしていたんです。1号機を探し始めて2時間半…諦めかけた時、なんと1号機の電波を受信!そして…漸くかすかに浮かんだ1号機を発見!9時間かけてようやく2つの装置の回収に成功しました!

ポイント1

バイオロギングの真骨頂は装置の回収にアリ?!見つからないと何も始まらないのだ!

バイオロギング結果

 装置の回収に成功した、その日の夜。早速、ユウユウに取り付けたカメラの映像をチェック。そこには、ユウユウの左の胸ビレに付けたカメラの映像。海は澄んでいて、バイオロギングには最適な環境です。すると突然、河邊先生が大興奮!映っていたのは、熱帯性の魚「コガネシマアジ」…特徴は金色のウロコと縞模様。大型の魚類に取り付いて、天敵から身を守る習性があるんだとか。さらに、目の前に大型肉食魚の「シイラ」が続けて2匹。
 先生によると、海の漂流物に寄り付く習性のシイラがユウユウを漂流物と勘違いして集まっているのではないか、とのこと。
 続いては、背中につけた2号機の映像には、サバと見られる魚の大群が!自然界で何を食べているか分かっていないジンベエザメ。目の前にマグロが泳いでいても、追うことはしません。
 そして今回の撮影した映像にはユウユウの捕食シーンが! 前方からプランクトンのようなものが見えると、上顎を上げて何度も口を開閉させています。海水ごとエサを飲み込んでいます。そして、海水だけをエラから吐き出しているのです。その秘密は口の中にありました。鰓耙と呼ばれる細かいスポンジ状のフィルターがあるのです。ジンベエザメは、鰓耙でエサを濾し取り、海水はエラから出すという食べ方をしています。

 そして今回、自然での貴重な捕食シーンの撮影に成功!
 ユウユウは潜行を開始…すると、徐々に増えていく白い物体が!水深300メートルを超すと、吹雪のような状況に!実はコレ、ジンベエザメのエサとなるプランクトンを含む細かい粒子の層。胸ビレのカメラには、エラを開いて口の中に海水を吸い込んでいることが確認出来ます。深く潜ってプランクトンを食べている証。

 これまで誰も見たことのない大発見だったんです!
 さらに、今回もう1つ重要な発見がありました。実は今回ずっとユウユウの「体温」を測っていたんです。海水温は表層付近で27.4度だったのが、水深が深くなるにつれて、徐々に低くなり今回の最深部329メートルでは10.4度を記録。その差は17度もあったんです。一方、ユウユウの体温はと言うと、28.5度からほぼ横ばいでほとんど変化はなかったのです。

 ジンベエザメは魚類なので、一般的に言えば周りの環境によって体温が変化する変温動物。ですから、体温調節できないハズ。しかしジンベエザメは体を大きくすることで、体温を下がりにくくしている。そしてプランクトンなどのエサが豊富な冷たくて深い海に潜っていたんです。つまり、ジンベエザメが巨大なのはエサが豊富で冷たい深海に潜っても、体温を維持するためだったのです。

ポイント2

ジンベエザメが巨大なのはエサが豊富な冷たい深海に潜るためだったのだ!