放送内容

第1416回
2018.03.11
低山 の科学 場所・建物 人間科学

 とどまるところを知らない、登山ブーム!中でも、いま注目なのが…そう…山は山でも“低い山”。実はいま、低山に関する本も出版されるほど、注目を集めているんです。何度でも登りたくなるその秘密を、専門家とともに“科学の目線”で徹底調査!
 今回の目がテンは…気軽に登れる健康登山「低山」の科学です!

梅の名所で“低山ならではの魅力”を発見!

 今回、低山の魅力に迫るのは…目がテン!初登場、入社1年目の佐藤梨那アナウンサー。バレーボール歴は10年以上と、運動は大の得意。そして、一緒に低山を登るのは…これまで1000以上もの山に登り、低山の地形や自然を知り尽くす、東京学芸大学・小泉武栄教授。今回登るのは、この時期オススメ。「幕山」。神奈川県湯河原温泉街からほど近く、初心者でも登れる人気の低山です。中でも見どころは、3月中旬頃まで楽しめる、約4000本もの梅の木。それでは、山を登りながら低山の魅力を探ります!…と、いきなり登山口とは別のルートを歩きはじめました。縦長の大きな岩が見えます。幕山という名前は、この縦長の岩が歌舞伎の幕に似ていることから由来しているそう。

 さらに先生は、山の表面に入った割れ目にも注目。この割れ目は「柱状節理」と呼ばれ、溶岩が冷えて固まる過程で規則正しく入る割れ目のこと。幕山は、溶岩でできた山だったんです。柱状節理を上から見ると、規則的な亀裂が。これが溶岩が固まる時の特徴なんです。登山口付近にはゴロゴロと大きな岩が。これらも、元はドロドロな溶岩だったんです。このように、山の成り立ちについて知ることも低山の楽しみ方のひとつ。
 幕山についてわかったところで、さっそく登山開始。少し登ると、目の前には…美しい梅が!低山の魅力その①「低い山ならではの植物」。幕山では、約30種類もの梅が植えられています。

 これについて小泉先生は、「幕山は山裾で荒れた場所で、火山灰と一緒になって水はけが良い。南斜面で水はけがよくて荒れているが、そういう場所には梅がよく育つ」と解説。梅は荒れた土地でも育つため、埼玉県の「宝登山」や茨城県の「筑波山」などの低山でも見られます。登り始めて40分。中腹からは真鶴半島が見えました。
 低山の魅力その②「中腹からの景色」。小泉先生によると、山頂に登るだけが楽しみではなく、中腹にのぼれば、海が見えたり下の街が見えたりして、結構キレイ。高いところへ行ってしまうと、海が見えないことも多いし町もみえないと言います。高い山は、古い時代にできたので、長年の隆起と侵食で山がギザギザ。そのため、中腹から景色が見えにくいんです。一方、低山は比較的若い山が多く、隆起や侵食も進んでいないため、中腹でも景色が見られるというんです。

 幕山のほか、兵庫県・六甲山や、栃木県 大平山でも中腹からキレイな景色が見えるんです。山頂まで残りわずか。と、ここで…目の前にはすすきが。小泉先生によると、「むかし茅場といって、屋根をふくのにすすきでやっていた。低山は人がいっぱい使ってきたため、昔の暮らしに関わるもの、いっぱい残っている」と解説。
 低山の魅力その③「昔の暮らしを知ることができる」。茅とは、すすきなどイネ科の植物の総称。人工的に植えられたこの場所は茅場と呼ばれました。このすすきも、かつては茅葺き屋根の材料として使われていたんです。

 そして、すすきの道をぬけると…ついに山頂です。山頂までは通常、70分くらいで登ることができます。中腹とは少し違った山頂の景色を満喫します。低山の山頂は、隆起や侵食が進んでいないため、比較的広く、平らな地形が特徴。その平地を利用し、御岳山や高尾山などの低山では、神社や寺などの建物があるんです。登山ルートが比較的多いのも、低山の特徴。
 行きと帰りで別のルートをたどれば、違った景色が楽しめる。それもまた、低山の魅力の一つ。

低山ごはん!時短&モチモチ食感のパスタ

 山での食事は、どんな食べ物が良いのでしょうか?調理科学の専門家、露久保美夏先生に聞いてみると、露久保先生は「運動の際のエネルギー源になる炭水化物を取り入れることが重要。また、なるべく軽い食材、そして、気温が低い時期は体を温めるもの」と解説。
 そこで、美味しく食べられエネルギー源にもなる、簡単“低山ごはん”を教えてもらいます。まず先生が取り出したのは…パスタ。えっ!山でパスタ!?パスタは茹でるのにお湯をたくさん使うので、お湯を捨てられない山では不向きだと思うのですが…用意するのは、パスタ・ベーコン・しめじ、そしてオリーブオイルと塩コショウ、水。

 山の上での調理時間を短くするため、家を出る前に、パスタの下準備をしておきます。まずは、パスタを半分におります。そしてチャックの付いた食品保存袋に入れ、そこへお水を180ml投入。使う水はたったこれだけ。ここにもう一つ入れるものがあります。それが…オリーブオイル。大さじ1杯袋の中に入れます。この油を入れることによって、エネルギー源、麺同士がくっつくのをふせぐ効果があるそうです。この下準備により、家を出て登山をしている間の数時間でパスタの内部に水が完全に染み込みます。

 さっそく佐藤アナも挑戦。今朝、下ごしらえをしたパスタを見てみると…柔らかくなっています!ガスバーナーと鍋を用意し、まずは、しめじとベーコンをそれぞれ焼き色が付くまで炒めます。しめじとベーコンは、美味しい出汁がでるんだそうです。そこへ、水ごとパスタを投入。今回用意したパスタの通常の茹で時間は7分ですが…普通のパスタと違うところは、なんと沸騰してから1分間の加熱で完成すること!沸騰して少し経つと…麺の色が変わってきました。わずか1分加熱したら、あとは塩コショウで味付けして完成。
 ベーコンとしめじのオイルパスタです。

 まるで、生麺のようなモチモチ食感!でも…一体なぜ!?これについて露久保先生は「事前に水につけておいたことで、パスタの中に水分が均等に浸透します。それを茹でることでパスタの中に含まれる小麦のデンプンが均一に糊化をして、さらに水が少ないという中で茹でているため、溶け出たデンプンがパスタの表面にくっつき、モチモチの食感を生み出している」と解説。パスタに水分が浸透することで、短時間で麺が内部まで均一に茹で上がりモチモチの食感になったんです!

低山登山が生活習慣病を改善する!?

 低山を楽しむ人達に話を聞いてみると…健康のために低山に登る人が多いようです。では一体、低山に登ることはどれほど健康に良いのか?協力してくれるのは、信州大学の能勢博教授。能勢先生によると、「個人によって体力は違うが、個人の最大体力の7割程度の運動を1週間60分することで、生活習慣病の症状高血圧・高血糖・肥満20%くらい改善される」と言うんです。

 生活習慣病を改善するためには、最大体力の7割程度の運動が必要で…低山はその運動に適した場所だというので、さっそく実験です。まずは、佐藤アナの最大体力を計測。心拍計をつけ、エアロバイクをこぎ心拍数を限界まで上げます。心拍数は160を越え、本日最高の167!こうして限界に近い運動をしたときの心拍数と、平常時の心拍数から割り出した、佐藤アナの最大体力の7割は…心拍数140。では、140の心拍数とは佐藤アナにとってどのくらいの運動量なのか?まず、ゆっくり歩いてみると…心拍数は100程度。能勢先生によると、実は7割程度の体力を使わないと、何時間運動を行っても健康への効果は薄いと言います。心拍数を上げるため早歩きで歩いてみても…7割には届かず…。
 そこで早歩きを越え、ジョギングに!すると…心拍数はようやく140に!最大体力の7割。運動経験の豊富な佐藤アナはジョギング程度の速さでしたが、一般の方は早歩き程度の“ややきつい運動”を目指すと良いそうです。

 では、低山ではどのくらいの体力を使っているのか?佐藤アナに心拍計をつけて登ると…この時の心拍数は…最大体力の7割!7割に近い心拍数で1時間程度登れる低山は、健康に最適な場所だったんです!

 これについて能勢先生は、「人は平地で連続してややきつい運動はできない。モチベーションが高くないので、3分くらいするとほとんどん人が嫌になる。しかし、『あの山登ろう』『頂上に行ったらきれいな景色が見える』と思うだけで、辛さに耐えられる。その結果、一回登るのに1時間かかったら1週間分の運動、トレーニングとして低山は最適」と解説。