放送内容

第1428回
2018.06.03
人物ファイル・フクロウ博士 の科学 地上の動物 水中の動物

 世の中には、常人にはちょっと理解できないほど研究に情熱を注ぐ探求者がいます。目がテンでは、そんな探求者を番組独自のファイルにすべく、研究者からマニアまで、候補者たちに密着します!
 第一弾となる「目がテン!人物ファイル」は、「フクロウ」を追い続ける研究者に迫ります!

フクロウの巣箱で親子の生態を観察!

 先生と待ち合わせをしたのは、夜7時の栃木県宇都宮市の森の中。真っ暗闇から現れたのは、宇都宮大学の守山拓弥先生。早速、先生の研究の場所について行くことに。先生の案内なしでは遭難しそうなほどの暗闇を進むこと15分、道なき道を進んで、ついに目的の場所に到着!そこにあったのは、木の上にかけられていた鳥の巣箱らしきもの。巣箱の中には、白いモフモフの毛をした2羽のフクロウのヒナがいました。
 守山先生がこんな時間に研究をしているのは…フクロウの生態研究だったんです。守山先生は、森の中に数箇所、巣箱を設置して、そこに入ったフクロウを観察しているのだそう。

 フクロウのヒナを見ていると、タイミング悪く親鳥が近くに来て、警戒の声を出しています。犬の鳴き声のような警戒音はメスが出す音。私たちがよく知る「ホー」という声はオスなんだそうです。
 少し離れて観察すると、守山先生が木の上にいた親フクロウを発見!野生のフクロウが木にとまっている姿を見ることができました。フクロウを知り尽くす守山先生。警戒音を頼りに、真っ暗な森でも親フクロウを瞬時に発見できちゃうんです。

 さらに先生は、夜の山でテントを組み立て始めました。観察は長丁場になります。昼の内に取り付けたカメラで巣箱の中をテントでモニタリング。観察を続行していきます。どうやら、先生が観察しているのは、巣箱に入った親フクロウがする、ある行動のようです。
 しかし、時間は刻々と経過するばかり。野生生物の調査は、根気が最大の武器。守山先生は、奥様お手製のおにぎりを食べながら、長期戦に備えます。おにぎりを頬張りながらも、先生はモニターを見続けます。こうして、ひたすらモニターを見つめる2時間が過ぎたその時、突然、フクロウのヒナが激しく鳴き出しました!守山先生が言うには、ヒナはお腹が空いてくると、親を呼ぶのだとか。
 その時、親フクロウが巣箱の中に入っていきました!「あ!入った!入った!入った!入った!」守山先生もテンションを急上昇させる瞬間です。巣箱に入った親フクロウは、ヒナにエサを渡していたようです。本当に一瞬の出来事でしたが、守山先生によると、かなり貴重な瞬間だとか。スロー映像で見てみると…巣箱に現れた親フクロウの口には、捕えたネズミが。なんと丸のままネズミをヒナに与え、ヒナはネズミを丸呑み!守山先生が先生が狙っていたのは、親フクロウが ヒナにエサを与えるこの瞬間を観察することだったんです。

 続いて守山先生は、フクロウの捕獲調査に。どのようにして捕まえるのでしょうか?さらに険しい道を進むと、ここから先の捕獲シーンは撮影NG!研究用の捕獲法を真似して、野生のフクロウを捕らえようとする不届き者がいるそうで、撮影NGも必要な措置なのです。
 待つこと30分。守山先生から「大丈夫ですよー!」との声が。先生と学生さんたちが見事フクロウの捕獲に成功したようです。ではフクロウを捕獲して、何をしようというんでしょうか?
 守山先生はフクロウの行動範囲を特定するため、尾の付け根にGPSを付ける調査を行っているんです。今年、先生がGPSをとりつけたフクロウはこれで3羽目。データを積み重ねることで、謎だったフクロウの生態が明らかになりつつあるといいます。

 フクロウを山に離したのは、すでに深夜1時。長かった調査もこれにて終了。守山先生は日々この研究に熱中しているのです!
 先生がフクロウにここまで魅了された理由は、フクロウが森の生態系で食物連鎖の頂点にいる生き物だから。守山先生は、このフクロウを救うことが出来れば、この森の生き物も救うことが出来る、という風に考えています。生態系の頂点にいる生物は「アンブレラ種」と言い、フクロウが減ってしまうと、エサであるネズミなどが増え、それらが食べている植物の種子などが減ってしまう危険性があります。

 そうなると、森全体の生態系のバランスが崩れる可能性があるのだとか。守山先生はフクロウを保護し、ひいては森全体の生態系を守るという、未来にとって大事な研究を行っているのです。

ヒナが巣箱から落ちた!大丈夫なの?

 密着の翌日、守山先生が設置した別の巣箱から前日までいたヒナが突然、いなくなりました。すぐに、守山先生が巣箱の周辺を捜索したところ…ヒナが森の中に落ちてしまっていたんです。大丈夫なのでしょうか?

 守山先生が言うには、ヒナに事件が起きたわけではないのだそう。実はこれ、フクロウの正常な巣立ちの様子なんだそうです。 巣立ちしたばかりのヒナは、まだ飛べないため、地面で寝ちゃっています。危険な気もしますが…ヒナはおもむろに立ち上がって、飛べないなら歩く!とばかりに、歩いて安全な木の上に登るそうです。実はその間、親フクロウが近くにいて、ヒナを見守っているのだとか。
 普通の鳥は飛べるようになってから巣立ちますが、フクロウのヒナは飛べないうちに巣箱を出て、木の上で親から餌をもらいながら育っていくそうです。
 守山先生によると、巣立ちをしたヒナはすぐ木に登ることもあり、巣箱から落ちて歩いている映像を撮影できたのは、かなり貴重で珍しいといいます。

川底に住む絶滅危惧種を救え!

 守山先生は、フクロウ以外にも生き物の研究をしています。今回、その調査に密着するのは…目がテン!の新リポーター、日本テレビアナウンサーの森富美アナ!普段は報道番組をメーンに活躍する入社22年のベテランが、どのような姿を見せてくれるのか!?

 不安げな森アナが呼び出されたのは、森ではなく、のどかな田園。守山先生と森アナは、調査のため、胴長を着て川に入っていきます。
 すると、先生は研究用に開発されたという謎の機械を背負って川へ。ドジョウを見つけた先生が機械を作動させると、ドジョウが気絶したかのように硬直。網で簡単に捕獲することができました。この機械は、電気ショッカーと呼ばれているもので、川に電気を流すことで、一瞬魚を気絶させ、捕獲することができる研究用の機械だそう。

 電流と言ってもかなり弱めで、電流を実際に体験した森アナは「小指を魚がトントンってつついている様な感じ」という感想でした。
 しかし今回の調査の目的は、ドジョウではなくレッドリストの絶滅危惧種に入っている魚なのだとか。その魚は、水質の変化とか様々な問題で数が減ってきている種類で、守山先生はその生態研究に取り組んでいるのです。 魚が隠れそうな川底を狙って調査は続行。「カワムツ」「ギンブナ」「ドジョウ」「ウグイ」を捕獲しますが、どれも今回のターゲットではありません。川に入って、1時間が経過。普段は報道スタジオ勤務、44歳、10年ぶりだというハードなロケに森アナも疲労困憊です。
 そして捜索開始から3時間。ついにその時が!
 捕獲に成功したのは、「ギバチ」という魚。ギバチは、川底に住んでいる小型のナマズの一種で、刺さるとビリビリと痺れるごく弱い毒を胸ビレと背ビレに持っていて、刺さるとビリビリとシビれる蜂に似ているから、ギバチという名前がつけられました。

 捕えた絶滅危惧種ギバチをどうするのかというと…守山先生は、捕まえたギバチを水に混ぜた魚専用の麻酔薬が入ったバケツの中に入れ、眠らせました。そして注射器を使ってお腹の中に謎の物体を挿入していきます。ギバチはというと、水に戻すと何事もなかったかのように泳ぎ出しました。
 実はこの物体、ピットタグという研究のための道具で、これを入れることによって、外部から番号を読み取ることができ、個体を識別することができるのです。
 先生の研究は、ピットタグをギバチに埋め込み、ギバチ1尾ずつ識別番号を振って川での居場所を特定することでした。ギバチが季節によって川のどの場所を好むのかを明らかにする、3年がかりの研究だったのです。

 ピットタグを付けたギバチは捕獲した場所で放流して作業完了。今後、守山先生は2kmにも及ぶ川から数少ないギバチをすべて捕獲し、ピットタグを付けるという地道な研究を続けるそうです。
この研究の目的は…河川の改修や水路の工事の際に、ギバチがどういう動きをするのかを知ることで、魚道を付けたり、ギバチを守る方法を考え出す事につながるのです。
守山先生は、生態系の生き物と人間が共存できるよう、地道な研究を毎日続けているのです!