トトロが暮らす森にあるクスの大木。
その根本に水天宮の社がある。
木々の間から降りそそぐ光の中に、キャラクターが動く空間が感じられるのはアニメーションの背景画ならでは。
男鹿が宮崎駿監督と仕事をしたのは「となりのトトロ」が最初だったが、宮崎監督からは“田園風景とか木とか草花とか、そういうものに良く目を向けて描いて欲しい”という要求があったという。映画では視点が上から下へと移動するカメラワークで撮影するため、絵の縦の長さが通常の背景画の3枚分の大きさで描かれた。
「となりのトトロ」背景画(1988年) (C)1988 二馬力・G
トトロが眠る洞窟の中を描いた美術ボード
「美術ボード」とは、監督やスタッフ間で美術の方向性を確認し、色彩や様式など映画全体の背景の統一感を持たせるために美術監督が描く絵のこと。
この洞窟は、宮崎監督の最初の構想では、民芸品のように木をくり抜いて作った部屋のようなものが考えられたが、木目をきっちりと描くとどうしても新建材のようになってうまくいかず、このように変更されたという。
「となりのトトロ」美術ボード(1988年) (C)1988 二馬力・G
サツキとメイが父親と暮らす家の美術ボード。昔はよくあったという日本家屋と洋間をつなげた家の外観が描かれている。宮崎駿監督の描いたイメージボードや 絵コンテを元に、男鹿がいくつものアングルで美術ボードを描いた。「となりのトトロ」は昭和30年代の東京近郊が舞台となっており、季節感はもちろん、 植生、光、湿度、土や空の色など地域による違いも細かく考慮されている。
「となりのトトロ」美術ボード(1988年) (C)1988 二馬力・G
男鹿和雄はアニメーション美術以外の分野でも活躍している。
こちらは、女優 吉永小百合による原爆詩朗読会「第二楽章」への協力において描かれたもの。
男鹿和雄は、吉永小百合本人からの依頼に応え、これまで広島編、長崎編と協力を続けてきているが、この絵はそれに続く第3弾沖縄編での1枚。
『沖縄の海岸』「第二楽章」より(2006年)
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