展覧会について

印象派の画家、ピエール=オーギュスト・ルノワール。彼の次男で映画史に名を残す、映画監督ジャン・ルノワール。「ルノワール+ルノワール展」は、二人の巨匠に焦点をあて、父の絵画と息子の映画を同時にご覧いただく展覧会です。本展は、2005年にパリで開催され、大きな反響を呼んだ展覧会を、オルセー美術館の総合監修のもとお届けするものです。

二人の巨匠 絵画と映画の融合

本展では、父の絵画と息子の映画の抜粋を「家族の肖像」「モデル」「自然」「娯楽と社会生活」と、4つの章にわけて紹介します。同じテーマで絵画と映画を対比することによって、親子間の確かな関係、巨匠と呼ばれる表現者二人の根底に流れる共通性を、明らかにしていきます。他にも、父と子、家族を物語る貴重な写真や映像、手紙なども展示します。

ルノワール絵画の決定版

本展では、ルノワールの絵画約50点が展示されます。そのうち、オルセー美術館からは日本初公開作品を含む約15点の油彩が出品されます。36年ぶりの日本公開で、ルノワールの転換期の連作のひとつ、後に妻となるアリーヌ・シャリゴを描いた《田舎のダンス》(1883年)、木漏れ日が降り注ぐなか、語らう男女の一瞬を永遠に留めた名作《ぶらんこ》(1876年)。また、約半世紀ぶりの日本公開となる《コロナ・ロマノ、バラの若い女》(1913年)。《座る娘》(1909年頃)、《バラを飾るガブリエル》(1911年)など、日本初公開作品も注目を集めることでしょう。オルセー美術館が誇る所蔵作品と、本展に集結するルノワールの絵画は、まさに「ルノワール展」の決定版といえます。

*日本での公開年に関する情報は、オルセー美術館発表によるものです。

ジャン・ルノワール再発見

『大いなる幻影』(1937年)、『河』(1950年)、『フレンチ・カンカン』(1954年)などの作品で知られる、映画史上最も偉大な監督の一人、ジャン・ルノワール。人間の持つ多様性への深い眼差しに支えられ、映画表現の改革者とも呼ばれるジャンは、ジャン=リュック・ゴダールやフランソワ・トリュフォーなど、才能ある映画作家たちに多大な影響を与えました。本展では、『ピクニック』(1936年)、『ゲームの規則』(1939年)、『黄金の馬車』(1952年)、『草の上の昼食』(1959年)など約15点の抜粋を父ルノワールの絵画と共に展示します。日本では、なかなか触れることのできない彼の作品を改めて取り上げることで、ジャン・ルノワールを再認識する機会となるでしょう。

父と子、そして家族

画家ルノワールは身近な家族をよくモデルとして描きました。長男ピエールや三男クロードと同様、ジャンもその愛らしい姿が多くの作品に残されています。今回出品される《狩姿のジャン》(1910年)は、彼が最後まで手元においた父の作品です。画家ルノワールにとって、家族は創造の源でした。そして、息子は偉大な父の影響を生涯受け続け、自身もまた巨匠と呼ばれる映画監督となりました。

本展は、言葉に出来ない父と子の深いつながりや、家族のあり方について改めて考えるきっかけとなるに違いありません。