10月13日(水)深夜2:59〜3:59

指 揮 下野 竜也
ホルン ラデク・バボラーク
管弦楽 読売日本交響楽団
司 会 古市幸子(日本テレビアナウンサー)

R.シュトラウス作曲:
ホルン協奏曲第2番 変ホ長調
メタモルフォーゼン(変容、23の独奏弦楽器のための習作)から

ヒンデミット作曲:
ウェーバーの主題による交響的変容から

※2010年9月18日 サントリーホールにて収録



読響正指揮者・下野竜也プロデュース!
ヒンデミット&R.シュトラウス

今回は、読響定期演奏会≪下野プロデュース・ヒンデミット・プログラムV≫より
ヒンデミットとR.シュトラウスの作品をお送りしました。

現代最高のホルン奏者
ラデク・バボラーク登場!

チェコのホルン奏者ラデク・バボラークさんの演奏で、
R.シュトラウスのホルン協奏曲第2番をお送りいたしました。

バボラークさんは、1976年チェコ生まれ。
チェコ・フィル、ミュンヘン・フィル、ベルリン・フィルなど世界一流の
オーケストラのソロ・ホルンを歴任した、現代最高のホルン奏者です。

<ラデク・バボラーク インタビュー>

♪曲想について指揮者・下野さんとお話しされたことは?
私はソロではありますが、オーケストラはパートナーだと考えています。木管楽器やチェロなどの楽器と会話をするように演奏することを心がけています。この曲は室内楽の要素を持っている曲だと思います。曲作りがあたかもパズルのようだと、マエストロとよく話しています。オーケストラと「一緒に演奏する」というよりも、「一緒に感じる」というイメージで練習しています。


♪バボラークさんが考えるホルンの魅力とは?
一番最初の先生の影響を受けているのですが、ホルンの魅力は素敵で豊かな音色だと思います。そしてホルンの音色は懐かしさも合わせ持っています。聴いている人に古い昔のことを思い起こさせるという魅力があると思います。


♪ホルン協奏曲第2番の聴きどころは?
この作品はR.シュトラウスが晩年に作曲しました。 彼の父親が著名なホルン奏者だったので、その思い出が表現された曲だと思います。この曲にはとてもたくさんのテーマが現れます。彼が作曲した「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」や、オペラなどからもテーマを借りてきています。この曲は彼の人生を再現していると言っても良いと思います。


バボラークさんの素晴らしい演奏に、会場からは万雷の拍手が起こりました!

キーワードは『変容』
続いては、R.シュトラウスの「メタモルフォーゼン」と、ヒンデミットの「ウェーバーの主題による交響的変容」
実はこの2曲、どちらも1つの主題を様々な曲調の中で変化させていくという意味の
『メタモルフォーゼ』『変容』という、同じテーマに基づいて書かれた曲なんです!

この2曲について、読響正指揮者の下野竜也さんにお話を伺いました。

<下野竜也 インタビュー>
♪ヒンデミットとR.シュトラウスの2曲の共通点は?

第二次世界大戦末期というのが一つの共通テーマだと思います。ヒンデミットは、ナチスに睨まれて、ドイツから出て行かなければいけない目にあう訳です。スイスに逃れて、最終的にはアメリカに。方やR.シュトラウスは、不本意だったか本意だったか非常に歴史的判断が難しいらしいんですけれども、ナチスに祭り上げられた立場で作曲活動を続けました。ある意味プロパガンダにも利用されたのでしょう。二人ともかなり立場が違うんですけれども、時代に翻弄されたということが共通点で、ほぼ同じ時期に着想されて書かれています。

♪R.シュトラウス作曲「メタモルフォーゼン」の聴きどころは?
R.シュトラウスは、自分の母国ドイツのドレスデン、ミュンヘンなどの色々な街が、戦争・戦火にあって壊滅的な状態になり、その怒りと悲しみを投影させて書いている作品なんです。ただ悲しい音楽が流れるだけでなく、美しい瞬間も出てきます。それが逆に儚いというか、そういう幸せな時代もあったのにとか、色々なことをイメージできる作品です。

この曲は、各パートが独立した23の弦楽器のために作曲され、ベートーヴェン交響曲第3番の第2楽章「葬送行進曲」の冒頭のモチーフに基づいて、次々と変容していきます。


最後の最後に完全な形でモチーフが出てきます。
そのときの怖さというか、不気味さというのを感じていただければと思います。

♪ヒンデミット作曲「ウェーバーの主題による交響的変容」の聴きどころは?

オーケストラのための協奏曲とも言えると思います。色々なパートが大活躍するのですが、その絢爛豪華なオーケストレーション、楽器の使い方、そういうところを楽しんでいただきたいと思うのと、元の曲はどんな曲だったんだろうと想像しながら聴いていただくのも面白いかもしれないですね。これは僕の穿った見方かもしれないですけど、アメリカに対して、ヒンデミットは少し媚びているような気がします。曲中にいきなりジャズっぽい音楽が出てきたり…。自分はドイツ人だというアイデンティティを持っていながらも、アメリカナイズしているという感じがします。自分はアメリカで生きていくんだとか、色んな思いが彼の中にあったんだろうなというのが、この作品の中には含まれていると思います。


今回の放送では、「ウェーバーの主題による交響的変容」から 第2楽章と第4楽章をお送りしました。
第2楽章は劇音楽<トゥーランドット>の序曲と行進曲を題材に、第4楽章は<4手ピアノのための8つの小品>の第7曲を題材にしています。


下野竜也(読売日本交響楽団正指揮者)  Tatsuya Shimono(conductor)
06年読売日本交響楽団正指揮者に就任。
鹿児島大学教育学部音楽科、桐朋学園大学音楽学部附属指揮教室、キジアーナ音楽院、ウィーン国立音楽大学で指揮を学ぶ。97年から99年まで大阪フィル指揮研究員として、故朝比奈隆氏の薫陶を受ける。以後国内外で数多くのオーケストラと共演。読売日響とは《下野竜也・ドヴォルザーク交響曲シリーズ》や《下野プロデュース・ヒンデミット・プログラム》など意欲的な活動を展開、後者の公演は文化庁芸術祭優秀賞を受賞している。
東京国際音楽コンクール<指揮>優勝、ブザンソン国際指揮者コンクール優勝、出光音楽賞、渡邉曉雄音楽基金音楽賞、新日鉄音楽賞・フレッシュアーティスト賞、齋藤秀雄メモリアル基金賞受賞。上野学園大学音楽文化学部教授。
ラデク・バボラーク(ホルン) Radek Baborák(Horn)
1976年チェコ生まれ。8歳よりホルンを学び、89年からプラハ音楽院でティルシャル氏に師事、みるみるうちに頭角を現していった。94年、難関として知られるミュンヘン国際コンクールで優勝、「美しく柔らかな音色」「完璧な演奏」「ホルンの神童」と評されるなど、世界の注目を集めた。
以来、ヨーロッパ、アメリカなど各地で活発な演奏活動を展開。小澤征爾、バレンボイム、レヴァインなどトップクラスの指揮者の信頼も厚く、これまでベルリン・フィルはもちろん、バイエルン放送響、ロンドン・フィル、ベルリン・ドイツ響、バンベルク響、ケルンWDR響、チェコ・フィル、ミュンヘン・フィル、ザルツブルク・モーツァルテウム管等と共演。その抜きん出たテクニックと若手ながら成熟した音楽が大きな話題になっている。テレマン、ハイドンからモーツァルト、R.シュトラウス、サン=サーンス、現代音楽まで幅広いレパートリーを持ち、現在もさらにレパートリーを広げつつある。
これまでチェコ・フィル、ミュンヘン・フィル、バンベルク響、ベルリン・フィルのソロ・ホルン奏者を歴任。そのほかにもサイトウ・キネン・オーケストラ、水戸室内管をはじめとする世界のオーケストラにも参加。ソリストとしても、オーケストラとの共演、チェコ・フィル時代の仲間を中心に結成した木管五重奏団「アフラートゥス・クインテット」としての活動のほか、エマニュエル・パユ、フランソワ・ルルー等の素晴らしいソリストたちとともに室内楽活動も続けている。
現在の使用楽器は、「アレキサンダー103」。