演奏レビュー

日時

2019年4月18日(木)2:29~3:59(水曜深夜)予定(30分拡大)
BS日テレ 4月27日(土)朝6:30~8:00予定(30分拡大)

4月放送プログラム

シェーンベルク作曲「グレの歌」

指揮
シルヴァン・カンブルラン
ヴァルデマル(テノール)
ロバート・ディーン・スミス
トーヴェ(ソプラノ)
レイチェル・ニコルズ
森鳩(メゾ・ソプラノ)
クラウディア・マーンケ
農夫・語り(バリトン)
ディートリヒ・ヘンシェル
道化師クラウス(テノール)
ユルゲン・ザッヒャー
合唱
新国立劇場合唱団

(2019年3月14日 サントリーホールにて収録)


【4月の演奏・聴き所】
音楽プロデューサー 新井鴎子の演奏レビュー

新井鴎子プロフィール
読響シンフォニックライブの構成を担当
クラシック音楽のコンサート・テレビ・ラジオ番組の構成を多数手掛け、長年にわたりその楽しみや魅力を親しみやすく伝えてきた。
音楽祭のディレクターやオペラ・ミュージカルの脚本、執筆活動など〈クラシック音楽〉の分野で幅広く活躍している。
現在、東京藝術大学特任教授。

【シェーンベルク作曲「グレの歌」】
カンブルランが、読響との集大成となるコンサートに選んだ勝負曲は<グレの歌>。「色彩の魔術師」と異名をとるカンブルランのタクトが冴え渡る演奏でした。18世紀に現在の「オーケストラ」のかたちが生まれ、そこから20世紀まで、ひたすら音を盛って、盛って、盛る方向で発展してきた管弦楽法の最終到達点とも呼ぶべき「グレの歌」は、どこを切っても濃密に音と感情がぎっしり詰まっていて、音と音とがくっついたところが腐敗してしまうほど密集していますが、それらをカンブルランが引き剥がして、風を入れてくれたようです。 12音技法の作曲家として知られるシェーンベルクですが、この作品には若い頃の習作的な面と、その後の無調の作風とが混ざり、第1部と第2部はワーグナーやリヒャルト・シュトラウスの響きが聞こえ、第3部から所謂シェーンベルクのサウンドに近くなっていきます。ともすれば大味な表現になりがちなこの作品を、カンブルランの情熱的かつ論理的な指揮に読響が見事に応え、繊細なサウンドを聴かせてくれました。マエストロ、カンブルラン、すばらしい9年間をありがとうございました!

演奏者の略歴

シルヴァン・カンブルラン(指揮)
シルヴァン・カンブルラン(指揮)
Sylvain Cambreling
1948年フランス・アミアン生まれ。これまでにブリュッセルのベルギー王立モネ歌劇場とフランクフルト歌劇場の音楽監督、バーデンバーデン&フライブルクSWR(南西ドイツ放送)響の首席指揮者、シュトゥットガルト歌劇場の音楽総監督を歴任した。現在は2018年秋に就任したハンブルク響の首席指揮者の任にあるほか、クラングフォーラム・ウィーンの首席客演指揮者、ドイツ・マインツのヨハネス・グーテンベルク大学で指揮科の招聘教授も務めている。客演指揮者としてはウィーン・フィル、ベルリン・フィルをはじめとする欧米の一流楽団と共演しており、オペラ指揮者としてもザルツブルク音楽祭、メトロポリタン歌劇場、パリ・オペラ座などに数多く出演している。
17年11月には読響とメシアン〈アッシジの聖フランチェスコ〉を披露し、『音楽の友』誌の「コンサート・ベストテン2017」で第1位に選出されるなど絶賛された。19年3月末で読響常任指揮者を退任し、4月から桂冠指揮者となる。
ロバート・ディーン・スミス(ヴァルデマル)
ロバート・ディーン・スミス(ヴァルデマル)
Robert Dean Smith
アメリカ出身。ジュリアード音楽院を経てヨーロッパで研鑽を積む。1997年〈ニュルンベルクのマイスタージンガー〉ヴァルターを歌い、バイロイト音楽祭で鮮烈なデビューを飾った。ウィーン国立歌劇場、バイエルン国立歌劇場、ミラノ・スカラ座、メトロポリタン歌劇場など世界中の名門歌劇場で活躍を続け、世界的ヘルデン・テノールとして名を馳せている。メータ、パッパーノ、ティーレマン、ムーティ、バレンボイムらの指揮で、バイエルン放送響、ロイヤル・コンセルトヘボウ管、ロンドン響などと多数共演。
レイチェル・ニコルズ(トーヴェ)
レイチェル・ニコルズ(トーヴェ)
Rachel Nicholls
イギリス生まれ。英国ロイヤル・オペラにデビューした後、エジンバラ音楽祭、BBCプロムスなどで活躍。2015年には〈トリスタンとイゾルデ〉でカンブルラン/読響と共演、イゾルデ役を歌い絶賛された。近年は〈エレクトラ〉のタイトルロールでも成功を収めている。これまでにゲルギエフ、コリン・デイヴィス、ガーディナー、ノリントン、ラトル、鈴木雅明ら巨匠の指揮で、ロンドン・フィル、バーミンガム市響、エイジ・オブ・エンライトメント管、ロイヤル・フィル、BBC響などと共演。宗教曲でも活躍している。
クラウディア・マーンケ(森鳩)
クラウディア・マーンケ(森鳩)
Claudia Mahnke
ドイツ生まれ。ドレスデン音楽大学で学び、1996年から2006年までシュトゥットガルト歌劇場に所属した。05年ミュンヘン・オペラ音楽祭の開幕公演で注目を集め、06年からフランクフルト歌劇場の専属歌手を務めている。13年には〈ラインの黄金〉〈ワルキューレ〉でフリッカほかを歌ってバイロイト音楽祭にデビュー。ベルリン国立歌劇場、バイエルン国立歌劇場、ドレスデン国立歌劇場などでも活躍。読響とは15年にカンブルラン指揮〈トリスタンとイゾルデ〉ブランゲーネ役で共演し、好評を博した。
ディートリヒ・ヘンシェル(農夫・語り)
ディートリヒ・ヘンシェル(農夫・語り)
Dietrich Henchel
ドイツ・ベルリン生まれ。1990年フーゴー・ヴォルフ・コンクール入賞。リヨン歌劇場、ベルリン・ドイツ・オペラで国際的キャリアを開始。ザルツブルク音楽祭、エクサン・プロヴァンス音楽祭などに出演。これまでにアーノンクール、ガーディナー、ナガノ、メータ、ラトル、ティーレマンらと共演。モンテヴェルディやモーツァルトから現代作品まで幅広いレパートリーを誇る。昨年6月にはハンブルグ歌劇場でルジツカの新作〈ベンヤミン〉のタイトルロールを歌い、絶賛された。読響とは2003年の欧州公演(アルブレヒト指揮)で共演。
ユルゲン・ザッヒャー(道化師クラウス)
ユルゲン・ザッヒャー(道化師クラウス)
Jürgen Sacher
ドイツ・アウクスブルク生まれ。1991年からハンブルク国立歌劇場の専属歌手を務めている。ベルリン国立歌劇場、ミラノ・スカラ座、ウィーン国立歌劇場、ザルツブルク音楽祭など世界各地で活躍しており、〈ジークフリート〉ミーメ、〈サロメ〉ヘロデなどで高い評価を得ている。その他〈魔笛〉〈パルジファル〉〈ナクソス島のアリアドネ〉〈エレクトラ〉〈ルル〉などに多数出演。これまでにアバド、シュタイン、ティーレマン、バレンボイム、K.ペトレンコら一流指揮者と共演している。
新国立劇場合唱団
新国立劇場合唱団
New National Theatre Chorus
(合唱指揮 三澤洋史)
1997年にオープンした新国立劇場でオペラ公演のための合唱団として活動を開始。現在、メンバーは100名を超え、新国立劇場の多彩な演目によりレパートリーを増やしつつある。高水準の歌唱力と演技力を有し、公演ごとに共演する出演者、指揮者、演出家から高い評価を得ている。読響とは2007年以降、年末の〈第九〉公演をはじめ数多く共演している。特にラヴェル〈ダフニスとクロエ〉、ストラヴィンスキー〈詩篇交響曲〉、メシアン〈アッシジの聖フランチェスコ〉では見事な歌唱を披露し、絶賛を博した。
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