演奏レビュー

日時

2019年12月12日(木)2:44~3:44(水曜深夜)予定
BS日テレ 12月21日(土)朝7:00~8:00予定

12月放送プログラム

ハンス・ロット作曲  交響曲 ホ長調

指揮
セバスティアン・ヴァイグレ

(2019年9月10日 サントリーホールにて収録)


【12月の演奏・聴き所】
音楽プロデューサー 新井鴎子の演奏レビュー

新井鴎子プロフィール
読響シンフォニックライブの構成を担当
クラシック音楽のコンサート・テレビ・ラジオ番組の構成を多数手掛け、長年にわたりその楽しみや魅力を親しみやすく伝えてきた。
音楽祭のディレクターやオペラ・ミュージカルの脚本、執筆活動など〈クラシック音楽〉の分野で幅広く活躍している。
現在、東京藝術大学特任教授。

【ハンス・ロット作曲 交響曲 ホ長調】
最近ハンス・ロットの作品が再評価されつつあります。役者と歌手の非嫡出子としてウィーンに生まれ、幼い頃から音楽の才能を発揮し、ブルックナーに認められ作曲家を志すも、ブラームスに酷評されたショックで精神を病み、妄想性精神疾患と診断され25歳で精神病院で亡くなった作曲家。彼の人生は、19世紀末ウィーンの病そのもののようです。22歳の時に完成されたこの交響曲は、この時代の音楽界の人間模様がそのまま音になったかのような曲。ブルックナーの音響のかたまりが飛び出し、ワーグナーの無限旋律が聴こえ、マーラーの舞曲が揺れ、ブラームスの交響曲第1番終楽章が顔を出し、まるで19世紀末ヒット曲メドレーのようです。ブラームスがひどくけなした気持ちもよくわかります。トライアングル(ブラームスがあまり好きでない楽器)が鳴りまくり、いろいろな作曲家の曲に混じって自分の主題がちょっと顔を出したら、そりゃ気を悪くしますよね。
ヴァイグレの指揮は、ワーグナー風のところはワーグナー、マーラー風のところはマーラー、と他の作曲家に似ていることをあえて強調し、様々な様式が混交していることをわかりやすく伝えました。大活躍するトランペット辻本さんのソロも見事です。
ところで、ハンス・ロットが長生きしていたら音楽史にどのような存在で、名を残す作曲家となっていたのでしょうか?

演奏者の略歴

セバスティアン・ヴァイグレ(指揮)
セバスティアン・ヴァイグレ(指揮)
Sebastian Weigle
1961年ベルリン生まれ。82年からベルリン国立歌劇場管の首席ホルン奏者として活躍後、巨匠バレンボイムの勧めで指揮者に転向。2003年にフランクフルト歌劇場でR.シュトラウス〈影のない女〉を振り、雑誌『オーパンヴェルト』の「年間最優秀指揮者」に選ばれた。04年から09年までバルセロナのリセウ大劇場の音楽総監督を務め、ベルク〈ヴォツェック〉やワーグナー〈タンホイザー〉など数々の名演奏を繰り広げ、評判を呼んだ。07年にはワーグナー〈ニュルンベルクのマイスタージンガー〉でバイロイト音楽祭にデビュー。11年まで指揮し、世界的注目を浴びた。08年からフランクフルト歌劇場音楽総監督の任にある。11年に同歌劇場管が『オーパンヴェルト』誌の「年間最優秀オーケストラ」に選ばれ、15年と18年にも同歌劇場が「年間最優秀歌劇場」に輝くなど、その手腕は高く評価されている。
これまでに、メトロポリタン歌劇場、ベルリン国立歌劇場、ドレスデン国立歌劇場、バイエルン国立歌劇場などに客演を重ねるほか、ザルツブルク音楽祭、ベルリン放送響、ウィーン響、フランクフルト放送響などを指揮し、国際的に活躍している。読響には16年8月に初登場。オペラでは17年7月の東京二期会のR.シュトラウス〈ばらの騎士〉、今年6月の同〈サロメ〉で共演し、いずれも好評を博した。
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