1.イントロダクション

pict  1998年、「海のオーロラ」の企画は「発明品プロジェクト」として日本テレビ内でスタートした。デジタル化によるメディアの大変革を前にして、コンピューター映像を使った新しいジャンルの可能性を探ることが目的だった。

 新しいジャンルということは、当然、参考にするものが無いということでもある。実写ならば、スタジオにはカメラもあれば照明もある。役者はメイクをし、衣裳を着て、カメラの前で自ら声をあげ、身体を使って芝居することもできる。セルアニメなら、紙と鉛筆で描かれた原画や動画がスキャニングされ、彩色されて、背景と合成するという制作工程が確立している。

 ところがCGだけで構成される長編映画というのは、これまで日本で作られた経験が存在しない。画面に登場する物体をどのように造形し、色や質感を決めたらいいのか。キャラクターを動かし、喋らせるにはどうしたらいいか。そして、作業をどのように分担し、最後にフィルムにするには?

 こうした難題をひとつひとつ乗り越えるため、スタッフは、ストーリーを作成したり、カットを決めたりといった通常の映画制作作業に加えて、人間や背景をCGで作るための技術の確立と、長編を制作するための制作システムの試行錯誤を粘り強く続けなければならなかった。

 そしてついにこの夏、日本初のフルCG映画「海のオーロラ」がデビューすることになった。

   
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