水の中で酸素を消費しながらバクテリアが分解できるのは海底のヘドロ表面だけ。
そこで有機物に働くのがアナジャコの巣穴。
海底の泥の中でU字になっており、この穴を酸素を含んだ海水が絶えず通り続けることで、バクテリアも盛んに取り込み、ヘドロの分解は深い所まで進むこととなる。

また、アナジャコが引っ越した後の穴も、自然界では再利用されるもの。
筆に反応が悪かった穴に、昔の漁具のびんどうの形を応用したセルビンを置いてみる。仕掛けの奥には餌となるカマボコも入れて、準備万端。
セルビンとは、入口から入った生物が出られなくなるようになっている仕掛けの一つ。

日もすっかり落ち、夜行性の生き物たちが活発に動き始める頃、巣穴のそばに沈めたセルビンを引き上げる。
すると、セルビンの中にいたのは、今までに見たことなかった大きさの体長8pのチチブ。それもその1匹だけではなかった。
稚魚の頃からこの辺りにいたものが、成長し、巣穴を見つけ棲みついたのか?
観察カメラを見ると、巣穴からセルビンの中へ、餌に誘われるチチブの姿をとらえていた。
確認を終えたら、お帰り頂く貴重な海岸の住民。