2006年。6歳になった八木橋は小屋で座り込むことが多くなり、あまり体を動かさなくなった。近隣の牧場に八木橋と同年代の山羊を見にいった時、山羊にとって牧草地がいかに大切かを知ることとなる。そこで村では敷地の広い果樹園を山羊たちの牧草地にすることとなった。


 まずは果樹の移植。根を傷つけぬように根元から2m程離れた場所から掘り始める。掘り起こした後、根の部分を天然黄麻100%の布で土ごと包む。天然黄麻は移植後すぐに風化して果樹の肥料にもなる。それをしっかり縄で固定すれば移植準備が完了。
   


 果樹の移植先はそれぞれの性質に合った場所。桃は日当たりの良い場所を好むため役場前の開けた場所へ。リンゴは風を嫌うため強風が吹き込まない土手下へ。なしは風通しの良い場所を好むためビニールハウス横の高台へ。ブドウは水はけの良い場所を好むため土の目が粗い母屋の横へ。サクランボはそのまま残し、夏場に木陰となり山羊たちの休憩場所をつくることに。
 果樹をそれぞれの場所に移植してたっぷりの水をあげ、なしとブドウの棚を再び設置すれば果樹の移植は完了。


 移植完了後の果樹園に牧草の種を撒く。イタリアンライグラス・オーチャードグラス・チモシーのいずれもイネ科の3種類の牧草。ビタミン、食物繊維、炭水化物を豊富に含み、今までのエサであった干草には無い養分も十分に補給できる。種まきから一ヶ月後、牧草は順調に発芽した。
 


  そして最後に柵をつくる。丸太をカケヤで地面に打ち込み、竹を横にして丸太に固定し、最後に大きな扉を取り付ける。こうして八木橋一家のための牧草地が完成した。

 八木橋は6歳。人間で言えば約60歳に相当するが、牧草地ではそうは思えないほど無邪気な姿で駆け回っていた。