アンカー対決を制し、初優勝のフィニッシュテープを切る上原琉翔選手
第56回全日本大学駅伝対校選手権大会が11月3日に開催。
愛知・熱田神宮をスタートし、三重・伊勢神宮にフィニッシュする全8区間106.8kmで熱戦が繰り広げられました。
レースは、10月の出雲駅伝に続き、最終区まで優勝争いがもつれる展開になりました。
序盤は、青山学院大学が2区で先頭に立つと、4区の黒田朝日選手が区間新記録で快走し後続に1分超の大きなリードを奪い、独走態勢を築きました。
しかし、後半区間に入ると、國學院大學が青山学院大学の独走を許しません。
「繋ぎ区間には自信がある。5区、6区で攻められる」
レース前日に國學院大の前田康弘監督がこう話していた通り、5区から怒涛の追い上げを見せました。
反撃の狼煙を上げたのは、2年生の野中恒亨選手でした。
「監督からは自分が“攻め駒”と言われていたので、前半から突っ込みました」
3位でタスキをもらった野中選手は、序盤から積極的にレースを進めます。
2位に浮上した野中選手は、1分27秒あった青山学院大との差を41秒まで詰めて、6区の山本歩夢選手につなぎました。
「しっかり前との差を縮めて、(7区の)平林(清澄)と(8区の)上原に楽をさせてあげようと思って走りました」
こう話すのは6区を走った山本選手。3km過ぎに右脇腹の痛みに見舞われましたが、後半に猛烈な追い上げを見せました。
そして、区間新記録の激走で青山学院大に一気に4秒差にまで迫り、主将でエースの平林選手にタスキをつなぎました。
平林選手は、青山学院大のエース格・太田蒼生選手に対して、一気に差を詰めようとはせずに、冷静にレースを進めました。
一時は差を広げられながらも、後半に入ってギアを上げると15kmを前についに太田選手をとらえます。
中継所には、意地を見せた太田選手に先着を許しましたが、平林選手は4秒差をキープし、2位でアンカーの上原琉翔選手に託しました。
上原選手は青山学院大の塩出翔太選手にすぐに追いつくと、ぴたりと後ろに付きました。
塩出選手の様子を伺いつつ、勝負を仕掛けるタイミングを測りました。
両者の並走は9kmにわたって続きましたが、「ペースが遅いと感じていたので、後ろ(駒澤大学)との差がかなり気になっていた」という上原選手が、10km手前でついに先頭を奪い、じわじわと塩出選手を引き離しにかかりました。
上原選手の仕掛けに塩出選手は対応できず。最後の10kmは國學院大のヴィクトリーロードになり、10大会連続12回目の出場にして伊勢路で初優勝を飾りました。
「全員駅伝の勝利。1人が良かったわけではなくて、8人がしっかり役割を果たしました」
前田監督が走った選手たちをこう労った通り、大きなミスなくタスキをつなぎ、栄冠を勝ち取りました。
2位は駒澤大学が入りました。2区を終えた時点では16位と苦戦していましたが、そこから徐々に順位を上げると、アンカー山川拓馬選手は、青山学院大との2分37秒差をひっくり返して2位でフィニッシュしました。
レースの大半で先頭を走っていた青山学院大は、3位でレースを終えました。上位3校は、出雲駅伝と同じ顔ぶれとなりました。
國學院大は出雲に続く優勝となり2冠目を獲得。
史上6校目の大学駅伝3冠に王手をかけ、来年1月の箱根駅伝に臨みます。
駒澤大と青山学院大は、國學院大の3冠に待ったをかけるのか――。
箱根路でも激戦が繰り広げられそうです。