◆ 酒井ヨシ子さん
1933生まれ。箱根駅伝の創設者で、マラソンで五輪に3度（1912ストックホルム・1920アントワープ・1924パリ）出場した金栗四三さんの四女

箱根駅伝100回記念大会おめでとうございます。毎年テレビで楽しんでおります。

きょうだい6人で私だけ運動がダメだったですけど、父は他のきょうだいと比較することなく、強制することもなかったです。だから運動を嫌いになることもなく、今では私が一番熱く応援しています。

映像や本で見る父と、私が知る父は別人のようです。家では普通も普通、農業をしたり、山羊や鶏や犬を飼ったり、オリンピックに出た話なんて1回も聞いたことがなかったです。お客さんがみえたときに会話を聞くくらいですね。最近になって色々聞きますけど、3回もオリンピックに出たなんて本当やろか？と思うくらいです。
優しくて、裏の山から竹を切って竹馬や竹トンボを作ったり、栄養があるからと山羊の乳を飲まされたり。叱られたこともなかったです。
山羊の病気を蚊が媒介すると聞いたら、私たちの部屋の蚊帳を取って山羊の小屋にかけたりね。そんな面白いところもある父でした。

最初のオリンピックは棄権、2度目は16位、最後は棄権と惨憺たる結果でしたから、そんな失意の時にどんな思いだったんだろうと考えます。辛かったと思います。3回も出させてもらったのに負けて「どの面下げて」という人もいたと思うんです。そんな時に優しく声をかけて、手を差しのべてくれた方がいたのでしょう。
だから、父は弱い人に優しかったです。優勝した人より「負けた人はどないしてるやろか」といつも言っていたですね。芯は優しかったけど、強かったです。

箱根駅伝はラジオでよく聴いていましたが、父が作った大会とは知りませんでした。発案者と書いてあるのを見て「あらー」って。私も父と同じで、勝った人より後ろの方を走る選手を応援してしまいます。途中で色々あったでしょうが、よく続けていただきました。父は幸せ者です。