◆ 設楽啓太さん
埼玉県出身。男衾中、武蔵越生高から東洋大へ。箱根駅伝では1年生から3年連続2区(1年7位、2年2位、3年3位)。4年生で5区区間賞。チームは2年時と4年時に総合優勝。10000m東洋大学記録保持者(27分51秒54)。卒業後はコニカミノルタ、日立物流(現ロジスティード)を経て、2023年から西鉄。
大学入学当初、箱根駅伝は目標にはしていましたが、東洋大は強いチームでもあり、4年連続走るとは思っていませんでした。1回走れればいいのかなという程度でした。その中で、4回も走れたことはものすごく今に生きています。陸上競技に対する意識も高まり、あの4年間が僕の中ではターニングポイントになっています。
酒井俊幸監督は、選手一人一人に熱い監督。本当にまじめに話してくれますし、練習や大会に関しても、課題点や反省点をお互い一緒に考えて克服していこうと、熱心な監督でした。
1年生からエース区間の2区。4年間でいちばん緊張しました。僕が走っていいのかっていうのがありました。1区から早稲田が独走し、僕は2位の大集団の中でレースに集中していました。順位は覚えていないですが、タイム(1時間8分9秒)は設定通り。総合3連覇がかかっていましたが、(史上最少差の)21秒差で2位に終わります。大学駅伝三冠を果たした早稲田も選手がそろっていたし、その中で2位という結果。悔しさもありましたが、「来年は自分たちがやってやる」という気持ちになりました。
「その一秒を削り出せ」というスローガンは、その大会後に生まれました。箱根で負けてから、1秒の重みが大事だと。選手一人ひとりが1秒の大切さがわかったことで、2年時の優勝につながったと感じています。2年目の2区は、コースも分かっていたので、ペース配分や仕掛け所も決めていました。権太坂を上って、ある程度周りの選手もきつくなってきて、その後の下りが一番開くポイントかなと。チームは総合優勝を奪還。2つ上の先輩たちは、すごく話をしてくれる方々だったので、優勝はうれしかったです。
3年時には、3年連続2区。1位でタスキをもらいましたが、日大の留学生に最後追いつかれ、1秒差で弟の悠太にタスキリレー。この年は風が強かったというイメージしかないですね。レースも日体大に敗れ2位に終わります。
優勝を逃したその大会の翌朝、酒井監督から直接キャプテンに指名されます。リーダーシップをそれまで取るタイプではなかったですし、正直不安しかなかったです。監督からは、走りでチームを勢いづけてほしいと言われていました。やはり記録を出すことで同級生や後輩もしっかりついてくると思っていたので、まずはキャプテンからしっかり結果を残そうと考えました。主将という役割がついたことで、積極的にチームメートに声をかけるようにしたり、自分も意識して言動からも変えていきました。
最後の箱根は5区。僕から監督に「4年の箱根は2区以外で」とお願いしました。他の区間は走れる選手がそろっていましたが、5区だけがちょっと不安要素だったこともあり、山を上ることになります。
この年は、駒大が出雲と全日本を制していて、東洋としては「箱根だけは絶対勝つ」という意識でした。先頭でタスキをもらい、2位の駒大と20秒差くらい。僕のところで最低トップは維持し、縮められないくらいでゴールできればいいのかなと思っていました。ゴールしてみれば1分くらい開いていました。そこでホッとしたというのが一番。復路も強いメンバーが組めたので、しっかり僕が走れば復路の選手も走ってくれるという思いがありました。
4年生での総合優勝は、もう最高でしたね。大学4年間苦しい時もあって、そこで最後の箱根で優勝という形で終われました。
弟の悠太は、小さい時から一緒にやってきて、強みも弱みも知っている仲です。箱根に関しては外さなかったですし、魅力は勝負強さですね。どのレースも初めから積極的にレースをしていく姿は、今でも見ていて強いなと感じています。
社会人10年目にして再び同じチームになったのは、弟から「一緒にやりたい」という連絡をもらったことがきっかけです。最初は冗談かなと思っていたのですが、本気で一緒にやりたいんだなと伝わって来ました。僕も悩みましたが、一緒にやると決断しました。陸上人生あと5、6年だと思いますし、悔いなく終わりたいという思いもありました。最後は一緒にやって、また駅伝でタスキをつなぎたい。それまで想像もしなかったことですが。
合流してみて、やはり他の選手とは違い、安心感がありますよね。一緒にいることでお互い気づく部分もありますし。順調に練習もできるようになってきて、「あぁやっぱり同じチームになれてよかったな」と思っています。
第90回箱根駅伝 優勝杯を手に笑顔の設楽啓太(右)と悠太(写真:日刊スポーツ/アフロ)
東洋大の後輩たちへ。負けてからが強いというイメージが東洋大にはあります。そこで選手たちがどういう意識や目的で練習を行うかが一番大事。「1人でやってやる」ではなく、チーム一丸となって戦ってほしいです。
僕たちも、強い選手になっていけるよう切磋琢磨していって、一つ一つの試合で結果を残していくことが目標です。応援してくれるファンの期待にも応えられるよう全力を尽くしていきたいです。