上尾シティハーフマラソンが、11月19日に埼玉県上尾市で開催。平坦な高速コースで知られるこの大会に、箱根駅伝を目指す多くの学生ランナーが出場しました。部内のメンバー争いに勝ち残るため、はたまた、箱根駅伝前の走り込みの一環として、それぞれの思惑を持って、選手たちは上尾路を駆け抜けました。

大学生男子の部で優勝したのは山梨学院大学の留学生、ブライアン・キピエゴ選手(1年)でした。序盤から先頭集団を抜け出すと、実業団のポール・クイラ選手(JR東日本)とともにハイペースで飛ばします。最後はクイラ選手には引き離されたものの、昨年、山梨学院大学の先輩のボニフェス・ムルア選手(現・NDソフト)がマークした大会記録を10秒上回る、1時間1分7秒で走りました。また、今年5月の関東インカレでマークした自己ベスト(1時間2分16秒)を1分以上塗り替えて、「自己ベストをマークできてうれしい」と喜びを口にしていました。
10月の箱根駅伝予選会は先輩のジェームス・ムトゥク選手(2年)が出場し、1時間0分46秒の好記録で3位に入っていますが、キピエゴ選手も「2区を走りたい。初めての箱根なので(どんな大会か)分からないが、ベストを尽くしたい」と、箱根駅伝出場に意欲を示しています。
 

◆ 今季好調の山口選手が、偉大な先輩の記録を超える

日本選手トップの2位には、早稲田大学の山口智規選手(2年)が入りました。
練習の一環として出場し、当初は1km3分ペースを刻む予定でしたが、スタート直前に花田勝彦駅伝監督から「先頭に付いていってもいいんじゃない」と声をかけられて、「行けるだけ(先頭集団で)行こう」と切り替えたといいます。
山口選手はキピエゴ選手には付いていきませんでしたが、第2集団の中で5kmを14分23秒、10kmを29分0秒ぐらいとハイペースを刻みました。
「5kmから8kmくらいにかけてペースが楽すぎると感じたので、(ペースアップして)自分のペースで行こうと思いました」
そのペースに余裕を感じていた山口選手は、得意のスプリント勝負に持ち込むプランも考えていましたが、15km過ぎに第2集団を飛び出す選択をしました。
そして最後はキピエゴ選手に9秒差にまで迫り、従来の来会記録を上回る1時間1分16秒の好タイムで、大学生男子の部2位でフィニッシュしました。
「1km2分55秒で押していければ早稲田記録になる。それぐらいはいけると思っていました」
13年前の上尾ハーフで、当時1年生の大迫傑選手(現・Nike)がマークした1時間1分47秒が早稲田大学記録でしたが、その記録を山口選手は30秒以上更新し大学新記録を樹立しました。
「1年生の大迫さんには負けられない。憧れの先輩なので、目指していく上で絶対に超えなきゃいけない記録だと思っていました」
 東京オリンピック男子マラソン6位入賞の偉大な先輩の記録を塗り替えても、山口選手は気を緩めません。
「山口の練習を見ていて、これぐらいのタイムは出せると思っていました。ですが、今日は練習の一環。調整をしていないので、まさか今日出すとは思っていなかった」
花田監督も、想像を超える山口選手の快走に驚いた様子。一方で、「今回はノンプレッシャーで走ったから。これからは早稲田のエースとして認識されるわけだから、これからが大事」と、さらなる期待を込めて手綱を締め直していました。

 今季の山口選手はトラックシーズンから絶好調。5000mでも13分34秒95の自己ベストをマークするなど、高いレベルで安定感が際立ちます。その活躍の裏には、今年の箱根駅伝で味わった悔しさがありました。主力として出場するはずが、直前に胃腸炎になり、走ることができなかったのです。
「1月2日に(翌日の)復路も走れないことも決まって、本当に悔しかった。あの悔しさを糧にできたので、今強くなれているのかなと思います」
 箱根駅伝デビューは1年遅くなりましたが、1カ月半後の箱根駅伝第100回大会では、エンジをまとった山口選手が前回の分も快走を見せてくれそうです。