1月21日、広島・平和記念公園前をスタート・フィニッシュとする、全国都道府県対抗男子駅伝競走大会(以下、全国男子駅伝)が開催されました。
7区間48kmをタスキでつなぐのがこの駅伝。3区(8.5km)と7区(13.0km)は社会人・大学生競技者の区間となっており、正月の箱根駅伝で活躍した学生ランナーが数多く出場しました。
■駒澤・鈴木芽吹選手は、箱根路での雪辱を安芸路で果たす
真っ先に平和記念公園前に帰ってきたのは、長野県の紫のユニフォーム。アンカーを務めた駒澤大学4年の鈴木芽吹選手が優勝のフィニッシュテープを切りました。
「長野県チームに、1月4日の合宿から合流させていただいて、その日のミーティングで監督から、僕を胴上げするっていうテーマでやっていこうと言っていただきました。自分が最後をしっかり締めなきゃいけないって思いで走りました。僕の力云々というよりも、みんなの思いがあって、ああいう記録が出せたんじゃないかなと思います」
“鈴木選手を胴上げする”――チームが掲げたその目標通り、鈴木選手の体は舞い上がりました。
鈴木選手がタスキを受けた時点で2位には48秒もの大差が付いていました。優勝が決定的な状況でも、強風が吹くなか鈴木選手は快調にペースを刻みます。
「とにかく1位でゴールできればいいと思っていたので、(区間記録更新は)そんなに狙っていたわけではなかった」
鈴木選手はこう話しますが、20年もの間破られずにいた7区の区間記録を17秒も更新し、区間新記録を樹立。区間2位の選手には43秒もの大差をつけて区間賞を獲得する圧倒的な走りを見せました。
「箱根では味わうことができなかった優勝を、今回味わせていただいて最高でした」
箱根駅伝で駒澤大学は総合2位と悔しい結果になりましたが、今度はきっちりと勝ちきりました。
また、長野県チームの3区は早稲田大学3年の伊藤大志選手が務めました。伊藤選手は、今年の箱根駅伝は直前にインフルエンザに罹患した影響で不出場だったため、その分、この大会に照準を合わせてきました。結果は区間9位と好走。
「“高校生頼み”の流れにはなってしまったんですけど、優勝もできましたし、それに少しでも貢献できたので良かったと思います」
6位から4位に押し上げ、優勝への追撃態勢を整えました。
4区を走った永原颯磨選手(佐久長聖高校3年)は3000m障害の日本高校記録保持者で、その実力を見せつけ区間記録に迫る力走でトップを奪います。さらに、5区の山口竣平選手(佐久長聖高校3年)も区間賞で続き、独走態勢を築きました。
高見澤勝監督(佐久長聖高校教諭/山梨学院大学OB)が想定した通りの展開となり、長野県チームは前回大会に樹立した記録をちょうど10秒更新し、2時間17分00秒の大会新記録を打ち立てて連覇(中止となった21年・22年を数えなければ3連覇)を成し遂げました。これで最多優勝回数を10回まで伸ばしました。
■大東大のエース・久保田徹選手が3区で学生トップ
力走する埼玉の3区・久保田徹選手(大東大)
2位の埼玉県チームの健闘も光りました。大きな見せ場を作ったのは3区でした。
「楽しんで走ることを意識しているなかで、4km過ぎの坂のところで前に出て、1位でタスキを渡したことはとても良い経験になりました」
こう話す大東文化大学4年の久保田徹選手が、この区間で学生トップの区間2位と好走し、2人を抜いてトップに躍り出ました。
箱根駅伝では花の2区を担い、1時間7分台の好走を見せ大東大9年ぶりのシード獲得に貢献した一方で、区間順位は12位と悔しさを味わっていました。
「(箱根では)自分としては全力を出したつもりだったんですけど、まだまだ上にはたくさん強い選手がいた。悔しい思いを今日しっかりとぶつけられたと思います。持ちタイムが自分より速い選手や箱根駅伝とニューイヤー駅伝で活躍した選手がたくさんいたので、緊張もあったんですけど、今日は自分の走りができました」
と、久保田選手は自身でも納得のいく走りで、埼玉の2年連続2位に貢献しました。