第530回日本テレビ放送番組審議会は、まず7月5日に出された『世界の果てまでイッテQ!』に関するBPO意見書について、報告を行いました。
続いての合評は、水曜ドラマ『偽装不倫』を取り上げました。人気漫画家・東村アキコさんの作品をドラマ化したもので、婚活を諦めたアラサーの主人公が旅先で男性に出会い、既婚者のフリをしながら“本当の幸せ”を探すというストーリー。色んな人の背中をそっと押せるようなドラマにしたいと制作しました。
(リポート1名)

  • 奇想天外な設定だが、意外にリアリティーがあるというか、面倒なことを考えず男女関係の甘い部分だけを味わいたいという女性の気持ちをすくっているような気がした。
  • 独身女性ものは、演じるのも独身の女優がやってくれた方が、見る側の感情移入の度合いが違ってくる気がした。
  • 東村作品の魅力は、コミカルに描きながらも登場人物にそれぞれ絶望と闇があるところ。コミカルさの隙間から、女性たちが抱えている絶望感のコントラストをいかに強く見せるかが肝な気がするので、その辺を楽しみに見ていきたい。
  • 主人公の好きになる相手が7歳下、お姉さんの相手は14歳下。男性の方が物凄く年下というカップルや、ゲイのカップルが最近のドラマには多く出てくるが、多様性があるという流れに沿っているのか、たまたまなのか、目についた特徴だと思った。
  • マンガの映像化が主流になってきているが、テレビの制作現場の独創性・創造性がどうなっていってしまうのかを心配している。シチュエーションやセリフも頼っていることに危惧を覚えるし、マンガより面白くしてやろうという制作側の挑戦心や気概がもっと見られても良かったのではないかと思った。
  • 海外のドラマと比べて、日本もようやく少し変化してきたと思うが、このドラマは「コンサバだな」と思った。女性の扱い方が凄く古いが、その分、枠ががっちりしていて、よく出来た女性向けのエンタメとして割り切って見た。
  • マンガが原作だと、原作を読んでいる人と読んでいない人で、感想が分かれると思うが、このドラマはほぼ原作通りで、マンガを読んでいるときと同じになっている。ところが、原作で韓国に行くのは重要な意味があったのに、九州になってしまって物凄くがっかりした。大切なところは原作と違って、どうでもいいところが一緒になっている感じが、見ていてやや辛かった。
  • 扱いにくい題材の不倫をコミカルに描いているところが面白いと思った。圧倒的に30代や40代の女性が多く見ていることを意識して、女性の視点で描いている割り切り感みたいなものが出ていたと思う。
  • 1話、2話に出てくる宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」が、ドラマ展開に関係してくるのではないかと思った。この重い内容をドラマの中に入れていくと思うと、テレビはマンガと違って独自に動いていくのかと思っている。
  • 不倫をすると損害賠償請求をされるという法律上の制度があるので、不倫描写それ自体は違法、または不当な行いの表現だが、簡単に不倫を勧める主人公の相方の新しい感覚と、既存の倫理観がどのように絡み合いながら描かれていくのか、今後の展開を楽しみにしている。
  • 原作との組み合わせが、とても上手く行っていると感じた。品があって、センスのある脚本がとてもいい。コメディーとして気持ちがいいし、ロマンがある。なかなか共感させるのが難しい話で、脚本家としては技を求められるが、いい仕事をしているなと思った。

この御意見を受けて、日本テレビ側は次のように答えました。

「オリジナルものも、原作ものも、人間をいかに立体的に描いて伝えられるかが大事だと思っている。東村さんの良さは、コメディーの中にリアリティーがあることなので、お互いにアイディアを出し合って大切に作っていきたい」