第572回日本テレビ放送番組審議会は、2023年度上期の番組種別時間の報告を行った後、10月7日に放送された『THE MYSTERY DAY』の合評を行いました。
豪華で本格的なミステリードラマを視聴者と一緒にリアルタイムで見つつ、その中で起きる事件の黒幕を考察して、HP上で投票してもらうという構成。当たった人の中から抽選で賞金10万円を100名にプレゼントする視聴者参加型番組で、開局70年特別番組として放送した。
(3名リポート)

  • 情報量と登場人物が多すぎるうえ、ストーリーも共感しづらいところが若干あった。ただ、視聴者参加型の仕組みは、テレビ局にとって新しい取り組みで素晴らしいなと思った。
  • 瞬時に81万票が応募されたことから、マスメディアの広告的な価値が見えて、ここに注目する広告主も多いのではないかと思った。
  • 社会的な問題提起が入っていて、誹謗中傷が実際の被害をもたらすことを、エンターテインメントを通じて作った意図を感じた。
  • ネットの使い方については世の中で対応しなければならないので、丁度いいタイミングのドラマだったのかと思う。今後、一回で終わるのではなく、新しい取り組みにどんどん挑戦していってもらいたいと思っている。
  • 視聴者参加型という形が新鮮で、謎解きのほかにも色々な側面があって楽しく見られたが、要素が詰まり過ぎていたので、エピソードをもう少し減らすとゆったり見られた気がする。
  • ドラマだからこそ、あえてリアルな部分と離れたストーリー展開だが、リアリティーとドラマ性のバランスの取り方が難しいと思った。7人は殺し過ぎという気がし、それが『忠臣蔵』みたいに正当な理由のある復讐のように描かれていたことに違和感を抱いた。
  • 現代的なものが盛り込まれているが、中身はバディもので復讐劇という、受ける要素を集めた定番のドラマだと思った。ネット社会の悪意が悲劇を生んでいるとしたら、その先を掘り下げるなり突っ込むなりして欲しい。それでこそ、新しい社会的な事象に対するアプローチだと思う。
  • 既視感が強かったが、視聴者参加型というチャレンジは良いので、そういう芽は失わないで欲しい。
  • 賞金総額1000万円は、なかなか魅力的な企画で、81万票というのは凄いと思って見ていた。ミステリードラマは全くの素人だが、3時間見てしまった。
  • 家族で楽しく拝見したが、お金で視聴者をどんどん参加させるのは良かったのか疑問が残った。このタイミングにしか出来ないことや、社会に対してプレゼンスが上がることにしても良かったように思う。
  • 最後の教訓には違和感を覚えた。ドラマの中で娘と婚約者を失った2人が、デマをオンラインで広げた人を殺害することや、殺害に協力してくれた人を美化してはならないと思う。
  • 脚本がしっかりしていて、突っ込まれることも想定済みで、色々なところにきちんと目を配っているところが良かったが、ネット社会の誹謗中傷が招く悲劇という闇のシリアスさと、役者も交じって「黒幕は誰でしょう?」というショーにしているところに戸惑いを感じた。

この御意見を受けて、日本テレビ側は次のように答えました。

「SNS上での誹謗中傷について問題提起をしたいという思いのもとスタートしたドラマだったが、リアリティーとフィクションのバランスに悩み、伝えたいメッセージが届きづらくなってしまった所があった。今後はいただいたご意見を参考にして、よりよい番組作りに活かしていきたいと思う。」

また、10月4日の『news every.』で、「ジャニー喜多川氏の性加害問題に関する社内検証」について放送したことを報告し、ご意見を伺いました。
 

  • ただ単に「検証しました」という内容ではなく、問題を分かりやすく視聴者に伝えようとする意思を感じる番組構成になっていたと思う。
  • 「忖度があった」というコメントを社内から引き出したことを評価したい。YouTubeで見られるようにしたことも良かった。
  • 忖度によって放送がゆがめられていないか?人権をきちんと守るにはどうしたらいいか?これから時間をかけて示していく必要があると思う。
  • 今後は、青少年、男女を問わず、番組内容や番組制作の過程において、性的被害がないようにチェックできる体制の構築が必要だ。
  • 「見て見ぬふり」が今回の大きなキーワード。今後、人権問題には「そういう自分はどうなんだ」ということを出発点、念頭に置いて、取り組むべきだ。
  • 「人権方針を策定する」というが、人権方針そのものも今後変わっていくと思うので、その変化もきちんと視聴者に提示して欲しい。