伊藤左千夫  『心を育んだ家』

(2005/6/8放送)


千葉県成東、九十九里平野のほぼ中央に位置する町。
ここに、「野菊の墓」で知られる文学者、
伊藤左千夫は生まれました。


   
漢学者の父と厳格な母に育てられた少年は、
政治家になるという志のもと、18歳でこの家を旅立ちます。


   
ところが上京した彼を、突如襲った目の病。
医者から静養を勧められ、
学校も退学した左千夫には、
故郷に戻ってくることしかできません。


   
・・・夢をなくし、さ迷う心。
通りを行き交う学生たちの姿に、
ふと振り返りたくなる衝動を抑えきれません。


   
けれどそんな苦しみの時に、いつしか彼は学ぶのです。
全てを受け入れていく強さを―。


   
自分の人生を、しっかり歩こう。
そう誓い、再び上京した彼は、牧場で汗にまみれ働きました。
そして執筆活動という、新たな夢に出会うのです。


   
「久々に家帰り見て故さとの 今見る目には岡も河もよし」


   
伊藤左千夫の作品に込められた郷愁。
それは彼の心を育んだ故郷への、感謝の想いなのかもしれません。


伊藤左千夫  『心を育んだ家』

(2005/6/8放送)

今回の放送のBGM♪
「Crying」唄 Don McLean
次回(6月15日)の『心に残る家』は
ルードヴィヒ2世『安らぎをおぼえたリンダーホフ城』
をお送りします。
お楽しみに。