■ 一念寺(いちねんじ)   6月29日放送

桂川と鴨川が合流するところは、かつて草津の湊と呼ばれ、この近くには今も法灯を守り続けている小寺院が数多くある。
そのひとつ一念寺は、法然上人が土佐配流の途中この寺に入り、弟子たちとの最後の別れを惜しんだ寺として知られる。

■ 恋塚寺(こいづかでら)

恋塚寺は、数々の物語や舞台に企画された恋物語の悲劇的結末を今に伝えるお寺として訪れる人が多い。




歴史の街・伏見には、小寺院が数多くあります。
鴨川沿いに建つ一念寺は、京都においても古い歴史を今に伝えるお寺です。


本尊・丈六阿弥陀如来は、古くから“鳥羽の大仏(おおぼとけ)”と呼ばれ親しまれてきました。

東大寺の念仏堂より移されたものと伝えられ、今も昔も、人々の心のよりどころです。


一念寺の近く、萱葺きの門を構える恋塚寺。
その名のごとく、悲しい男女の物語が残ります。


平安末期の武士・遠藤盛遠が、同僚・渡辺渡の妻、袈裟御前に心を奪われたことから悲劇は始まります。
恋に狂い、みさかいをなくす盛遠。強引な求愛に、夫への貞節を貫くため死を選ぶ袈裟御前・・・愛する人の死によって、初めて罪の深さを知った盛遠が、彼女の菩提を弔うために建てたのが、このお寺です。

いつの世も変わらぬ、救いようのないさが性・・・
人の道を説く伏見の小寺です。


今回ご紹介したふたつのお寺は、ともに小さなお寺で観光寺とは異なります。
日中なら随時拝観は可能ですが、事前に連絡をしてからお出でくださいとのことでした。

一念寺の本尊・丈六阿弥陀如来像は、宇治の平等院阿弥陀如来像によく似た造りで、優雅な藤原美術の品の良さにあふれています。光背のまわりには小さな仏像が・・・上部には更に小さな仏像がたくさんあります。また、本尊の前に置かれた木魚は、浄土宗最初の木魚と伝えられる由緒あるものです。

恋塚寺の縁起物語は古来より広く伝えられ、数多くの物語や小説に引用されてきました。
よく知られたところでは、カンヌ映画祭でグランプリを受賞した「地獄門」があります。
同僚の奥方に横恋慕し、強引に自分の想いをとげようとした遠藤盛遠は、袈裟御前亡き後出家し、文覚と改めました。源頼朝に挙兵をうながしたり、後に神護寺を再興するなどしてその名を残しています。お寺には、美人と評判で、盛遠が一目ぼれした袈裟御前の肖像画も残されていますが、現代の感覚でいうと?と思うかもしれません・・・


「 Tousanno youni naritai 」
演奏/作曲:木村勝英