■ 百万遍知恩寺 (ひゃくまんべんちおんじ)  4月3日放送

百万遍知恩寺は、東山のふもとに近い場所に位置する古刹である。元祖・法然上人は800年以上前、43歳のときに比叡山を下りて都に出て、念仏の行者になった。そのときの活動の拠点が知恩寺の始まりである釈迦堂であったといわれる。念仏の布教活動はここから始まったといっても過言ではないという。その後、度重なる戦災や火災に合い、移転を重ねた後に当地に落ち着いた。広大な境内には数々の壮大な建築物が立ち並び、釈迦堂・御影堂などは名建築の誉れも高い。御影堂の内部には、全長100メートルの大念珠があり、 4月23・24・25日の3日間、200人がかりで祈りを込めてひざ送りをして法要をする。 規模の大きさと庶民的な親しみやすさで、京都の名物行事となっている。 市の中心部にありながら参拝客もまばらで、境内を落ち着いて散策したり桜を楽しんだり様々な寺宝を鑑賞したりするのに格好の名刹といえる。



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東山・百万遍知恩寺。桜の名所が人で溢れる中、
人気のない境内に鮮やかな桜が ぜいたくに咲き誇ります。
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江戸初期の名建築・釈迦堂の格子の奥にひっそりとたたずむ釈迦さま。
春の陽気とは裏腹の、透き通るような冷えた堂内。
そこで出会う金色の優しいお姿に、心打たれます。

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桜咲く春には、人々はしばし現世の苦しみを忘れます。
そして壮大な御影堂におわします法然上人に静かに手をあわせ、
心を休めるのでしょう。

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全長百メートルの「大念珠」は、二百人がかりでひざからひざへ送られる法要「御忌法要」に使われます。

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鎌倉時代に 知恩寺で念仏を百万遍唱えることで、疫病が治まり感激した後醍醐天皇が 大念珠を送ったのが由来と伝えられています。


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他にも色鮮やかな寺宝の数々が残されています。


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早い遅いはあっても、春は必ず訪れ、足早に去っていく。 静寂の境内で、京都の刹那の春に酔う知恩寺です。

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当番組の今年の桜シリーズ第一弾ということで、どこを取り上げようかあれこれ悩んでいました。というのも、関東地方の桜の開花が例年になく早いという情報が流れ、実際に どんどん花が咲き始めて、この調子なら京都も相当早く桜の撮影をしなくてはならなかろうと、数々ある桜の名所をあれこれ調査していましたが……しかし!! 京都の気候は一筋縄ではいかない!! 東京より西にあるといって、桜前線が京都を通過するのが先になるということはなく、事実東京の開花より送れることがはっきりすると、その後はどんどん遅れて行き、「まだまだ咲かない、まだ蕾」という答えばかりが返ってくるようになりました。
ならば…と考えたのが、桜の名所であることはもちろんですが、桜以外にも見所が多く、尚且つ4月に催しがある神社仏閣をえらび、万が一桜が咲かなくても十分に見所のあるということを視聴者の方々にお届けしようというやりかた!! それが百万遍知恩寺だったのです。桜も美しく、大念珠を大勢でまわす法要も4月にあり、しかも便利な土地にありながら驚くほど人気(ひとけ)がなく静寂に包まれているこのお寺は、撮影中にも全く慌しい気分にならない落ち着いた雰囲気・風格にあふれ、素晴らしい選択だったのではと安心納得してしまいました。とにかく飾り気のない、静かないいお寺です。行列をして眺める桜もまた楽しいものですが、自分だけの時間をゆっくりと楽しむためにこんな隠れた名刹を訪れるのも、本当に楽しいものではないでしょうか。 ちなみに早い早いといわれていた桜の開花も、結局例年並ということで、なんだか少し肩透かし気味ではありました。


「 PIE JESU 」
作曲者:ANNE DUDLEY
演奏者:ANNE DUDLEY